詩 揺らぎ


六月が好き と言うと
 なんで と必ず驚く

まあ 言ったことはないけれど


漱石が好き と言うと
 鼻で笑って ふんとかうんとかすんとか

まあ 知ったことでもないけれど



揺らぎ

雨の丸みに頬を滑らす
夜明けの風が窓を開ける

今日の花が白いことを夢の中でだけ気が付く
ほどけた氷を結び直して指先で熱を奪って

私は本を開いていた
烏は夜を待たずに眠る

心の奥には水面があって
そこに雫だとか

蛍だとかがまだ棲んでいて
飛び込んで潜ると

水銀よりも重くを探り
不意に私は光を探す

知らない何かに途端怯え
居ないふりをしてしまう

心の中で自分を失くし
私は今日も生きている


揺らぎ 雪屋双喜ゆきやそうき
2023.6.18

漱石そうせき先生と比べれば、背のびするしかない者ですが。


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