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詩 #21

父が母に送ったバラは一本であったと聞いた
だから 一本のバラを誠実に送ることができるような
そんな人になりたいと素直に思った

東京に雪が降った あの頃と同じ純白が舞った
寒さを楽しむ少年が 母に雪を持たせながら走り回っている
大通りをゆっくりと転ばないようにと歩いて行った

父と母が大学時代の先輩後輩であると聞いた
いつから交際したのか どちらが想いを告げたのか
それはまだ教えてはくれない

冬休みがもう直ぐ終わり 学生たちは街から学校へ
大人たちは家から どこかへと 電車に揺られ
そんな中を雪が降ったのだ

目蓋がその温度を眼へと伝え
雪をつかんだその掌は次第に動かなくなり
羽織るコートが白く染まる

冬が今 そこにいた
私は小さく自分を守る


2022.1.6

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