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詩 #22

今書く文章が、言葉が、世界で一番輝いている。

そう純粋に信じられなくなったのは、
むかし自分が描いたものに、いま触れてしまったから。

振り返れば必死に歩いてきた道がある。
前を向けば暗く果ての知れない、海か大地かもわからない、何かが広がる。
ただこの先にある、白い思い出を、光り輝く一文を、知りたい。

思っていた。そのことだけを他人事みたいに覚えている。
思い出せない。どうして、なぜ、書き始めたのか。

いま、ここで書く一文字ずつが、世界のどこかで誰かを殺していて、
そのことに、慣れようとする僕がいて、忘れようとする僕がいて。

だから、わからなくなってしまった。

馬鹿にするのも、褒めるのも、僕がやっていいことじゃない。

ただ書くことだけを、無知のように、書くことだけを。



ひと、人、ひとり

私は時計を愛していた
そうすれば時間に愛されると思っていたから
ただ奴らは薄情で
受けた愛情すらも返しはしない

私は太陽を愛していた
そうすれば命に愛されると思っていたから
ただ奴らは臆病で
遠くからただ眺めるだけ

私は大地を愛していた
そうすれば生活に困らないと思っていたから
ただ奴らは怠惰であって
私が誰かも確かめやしない

私は人を愛していた
そうすれば寂しくはないと思っていたから
ただ奴らは悲しくて
悲しみの意味すら知らないのだ

私は私を愛していた
そうすれば愛されると思っていたから
ただ私は傲慢で
私さえも馬鹿にした

私は何も愛さない
そうそれは
ただ私が愚かで
私であるから

2022.1.9

長くなったけど読んでくれた貴方は有難う。

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