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詩 #1

 暗闇の中で手を伸ばす。寒さが僕らに意味を持たせる。乾いた唇でそっと舌を挟む。                              

 生活から抜け出したかった。僕らが生まれてくるずっと前に定まってしまった可哀そうな液体の中では、上手く息ができそうになくて。       

 夜の街は空だけを切り取った世界。夢と現実が、互いの領域を侵し合う、混ざり合う。                             

 白と黒だけの世界でさまよう言葉たちが、僕を見つけた。きっとそんな感じ。                                

 喜びを描こうと思った。喜びを知らないことに気がついた。知りたいとは思えなくて、それが変だとも信じられなくて。                       

 暗闇の中で手を伸ばす。ふと指先を刺激する何かを、僕は知りたくない。

2021.10.23

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