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詩 #31



はら、り。

屋根の上の優先席にこっそりと座るように
一片の思い出が心を溶かすように


はら、はら、り。

柱時計を淡くするように
山彦をそっと断ち切るように


はら、り。

輝く瞳を悲しげに見つめるように
軟らかさをふりはらうように


はら、はら、り。

前を見ても後ろを見ても
すべて止んでも きっとまだ

はら、り。

冬が、今、散りゆく。




2022.2.8  雪

次は「月」です。

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