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詩 #8

朝日を見て、まぶしいとつぶやいて、寝返りをうつ。時計は9時を少し回ったところで、外はずっと寒そうだ。鳥のさえずりも、走りぬける車のエンジンも聞こえないふりをして、何も食べずに、何もせずに、少しも生きずに、ただただ存在するだけ。そんな心地を笑いながらかみしめている。何かを思い出したような気がして、あおむけになる。低い天井が、それでも僕を見下ろしている。

「短い物語」 2020.12.30


冬のいつかの最初の日、空を見上げた。雲一つない空には、低いところを飛んでいる大きな翼と、白く輝く暗い影が見える。夏のいつかの十五日、山を登った。遠くまで見えると思って登った山頂は白くかすんで、隣の峰すら見えなかった。春のある日、道ばたに座った。風が強く優しく吹いて、何かを思い出させた。遠い昔のいつかの日、まだその命が名前をもらうずっと前、私は太陽を秋を、飲み込んだ。

「長いあいさつ」 2021.1.1

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