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詩 #17

窓をなぞった指が
少し湿る
床を踏み締めた足が
小さく震える

日が昇った
夜が終わった
昼になる前には
朝を食べよう

コーヒーに泡を浮かべた
それをミルクで洗い落とす
トーストに蜂蜜をのっけて
向こうに垂らしながら頬張る

ニュース番組では
つまらない雑学を披露している
調べればわかるような
調べたいとも思わないような

最近ギターを弾いてない
伸びた爪を見て気がつく
ピックを失くして
そのままだ

カラオケに誘われて
流行りの曲を歌う
本当に歌いたい曲は
カラオケでは歌えない

スマホを触る左手は
少しずつ感覚を忘れ
やがて俺のものではなくなる
冬が来たことにようやく気がつく

電車がホームに入ってくる
誰かと目が合ったような気がした
だから足元を見つめる
靴のサイズは三年間変わらない

歩き続けて
たどり着いた
その向こうには
また道があって

死ぬまでの暇つぶし
そう思って
歩くのも面倒だ
だから

俺は

窓をなぞった指が
俺のものでなくなる
床を踏み締めた足が
俺のものでなくなる

日が昇った
夜が終わった
昼になる前には
朝を食べよう


2021.12.22



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