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月の砂



私の声が震えた
あなたの背が揺らいだ
二人で同じ場所に触れた
互いに届かないまま

どこか
喉かどこか
微か

水槽の中を二人泳いだ
あなたの背が揺らいだ
空気は十八度を少し越えた
月の映るあなたを見てた

どこか
外かどこか
空は

あなたの背が揺らいだ
私はそれをなぞった
ほどけた愛を探った
互いに伸ばした指が

ふれた
どこか

暗闇に伸ばした指が
今も何かに触った
あなたは分かるだろうか
愛は興味のまま確かだ

かんだ
どこか
仄か

薫る花の匂いが
季節を巻き戻した
指は動くだろうか
瞼は見せてくれるだろうか

あなたは夜に踊った
月が雲を誘った
波は砂を攫った
記憶が頬を拭った

どこか
ここか
どこか

呼んだ
声が
白んだ


指は今も動くだろうか
錆びた音は届くだろうか
割れたピックは思い出だろうか
あなたはそれを笑った

私は覚えているだろうか
あなたの声が響いた
夜が音を立てた
あなたの背が揺らいだ

私の声が震えた
あなたはそれを笑った
どこか
遠く



月の砂
雪屋双喜

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