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【文献紹介 第16段:せん妄のサブタイプと認知機能障害との関係性】

【はじめに】

 CAM-ICUやICDSCを使用して日常的にせん妄評価を実施している施設も増えてきていると思いますが、さらに、せん妄のサブタイプ、いわゆる低活動型・過活動型・混合型も含めて評価を行っている施設はどの程度いらっしゃるでしょうか?!
CAMーICUを使用している施設の方は、RASSと合わせて評価することによって、せん妄のサブタイプも評価することができるので、意識的に評価を行っている方もいらっしゃると思います。

今回は、この「せん妄のサブタイプ」に着目してみたいと思います。

 以前からせん妄をサブタイプに分類した場合、過活動型せん妄に比べて、低活動型せん妄は見逃されやすく、適切な介入がなされていないことが指摘されています。
その理由には、過活動型は不穏症状などが生じるため患者の安全を守るため介入を行い必要があります。それに比べて、低活動型せん妄は、いわゆる不動やApathyが主訴となるため、不穏症状などに比べて介入の必要性がないことが挙げられます。
一見、問題となりにくい低活動型せん妄ですが、知っておられる方も多いと思いますが、本当は低活動型せん妄の発症頻度は過活動型せん妄の方が高いことが知られています。さらに、せん妄を発症した場合、認知機能障害などのPICSの発生頻度も増加する危険性があります。

では、サブタイプで分類した場合、せん妄のサブタイプは認知機能障害とどのように関連しているのでしょうか。今回は、せん妄のサブタイプ別に退院後の認知機能障害の発生頻度について評価した研究をご紹介します。

紹介する文献:

Association of Hypoactive and Hyperactive Delirium With Cognitive Function After Critical Illness
Critical Care Medicine, 48(6), e480–e488. 2020
Hayhurst, C. J., Marra, A., Han, J. H., Care, M. P. C
URL:http://doi.org/10.1097/CCM.0000000000004313

【目的】

せん妄にはサブタイプがあり、サブタイプによって予後が異なる可能性がある。
本研究では、せん妄のサブタイプと長期的な認知機能障害との関連を明らかにする。

【方法】

・研究デザイン:多施設コホート研究デザイン
・対象患者:呼吸不全またはショックでICUに入室した成人患者

=測定=

●せん妄・せん妄のサブタイプの評価方法
・Confusion Assessment Method-ICU(CAM-ICU)
・Richmond Agitation Sedation Scale(RASS)
  を用いてせん妄と意識レベルを毎日評価した。
●せん妄のサブタイプ定義
 ・過活動型せん妄
  ー CAM-ICUが陽性でRASSが0以上
 ・低活動型せん妄
  ー CAM-ICUが陽性でRASSが0以下
 ・昏睡
  ー RASS=-4または-5の場合
●アウトカムの評価(退院、3・12ヶ月後に評価している)
・認知機能評価:Repeatable Battery for Assessment of Neurologic Status(RBANS)
・実行機能評価:Trail Making Test Part B(Trials B)

【結果】

●対象者:
582名が研究対象となり、561名が3ヶ月後のフォローアップの対象となり、
そのうち、464名が12ヶ月後のフォローアップの対象となった。
●せん妄の発症頻度
 ・過活動型せん妄:17%
 ・低活動型せん妄:71%
 ・混合型せん妄:8%
 ・発症なし:4%
●せん妄のサブタイプと持続日数(中央値)
 ・過活動型せん妄1日(1-2日)
 ・低活動型せん妄:3日(1-7日)
●認知機能障害の程度(RBANS)
▷低活動型せん妄
 3ヶ月後、12ヶ月後と低下する傾向であった。初回測定時と比べて3ヶ月後(p=0.03)に有意な認知機能の低下が見られていたが、12ヶ月後(p=0.08)では有意差は見られていない。

認知機能低下の例(低活動型が5日持続した患者の状態)
3か月後 (-5.13 [-8.75~-1.51])
12か月後 12時(-5.76 [-9.99~-1.53];)

▷過活動型せん妄
 低活動型せん妄と同様に低下する傾向にあったが、有意差は見られていない。
●実行機能評価
 ▷低活動型せん妄
  3ヶ月後(p=0.03)、12ヶ月後(0.004)と低下する傾向であった。

実行機能機能低下の例(低活動型が5日持続した患者の状態)
3ヶ月後 (–3.61 [–7.48 to 0.26])
12ヶ月後(–6.22 [–10.12 to –2.33])

【結論】

低活動型せん妄の持続時間の長さは、長期的な認知機能障害の独立因子であることがあきらかになった。

【私見】

・先行研究と同様に過活動型せん妄と低活動型せん妄の発症頻度を比較すると、本研究でも「低活動型せん妄」の方がより多く発症していることがわかる。
ということは、もし、せん妄のサブタイプを気にせず対応している場合、多くのせん妄患者を見逃している可能性がある。なので、きちんとサブタイプも含めて評価していく方がよいよう思う。

・本研究の結果、退院後の認知機能障害を悪化される独立因子として「低活動型せん妄の持続時間」が挙げられていた。独立因子とは。簡単に言うと認知機能障害の悪化に「低活動型せん妄の持続時間」が直接的に関与している可能性があることを示している。なので、まずは、低活動型せん妄が破掌しているかどうか、認識することが大切になる。そして、低活動型せん妄の持続期間を可能な限り短くできるように介入を図っていくことが大切だと言うことになる。


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