これが仕事です

「お腹痛い」
「変なものでも食った?」
「昨日の現場で」
「ゲテモノ?」
 そう。ゲテモノかもしれない。仕事場に降り立つといつもと全く違う空気で戸惑った。キャッチーな音楽と、その中心で声援と幾筋ものライトに照らされて笑顔を振りまいているのはこの夢の主だ。
 普段なら異形から逃げ惑う夢や、真っ暗な廃墟で途方に暮れているような夢ばかりなのでこの光景は異様だった。
「私の夢を。悪い夢を食べてください」
 思いつめてそう言った少女の顔を思い出す。私には希望あふれる夢に見えるが、彼女にとって悪い夢なのだ。
「慣れないものは食べるもんじゃないね。胃腸薬もらってこよ」
 依頼があればゲテモノでも食らう。私は夢喰い。

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