その名前は雲のように

 飛行機の足跡をくぐり、私は傘を広げた。もうすぐ夕立がやってくるだろう。綿のTシャツは夏の暑さと湿気を吸ってへばっているが、この雨が降れば秋が来てしまうので暑さも少々名残惜しい。
 隣を歩く君の瞳はカメラのレンズのように辺りの風景を読み取り、一心不乱にメモリに保存していた。
 ちぎれた記憶の中では君も傘を差している。暖かそうなウールのセーターを着込んで雪を降らせる空を見上げる。羽根が落ちてきているみたいだと笑ったのを見て、感情が浪のように押し寄せた。

 もう朧気にしか感じられないそれは今となっては彩り豊かな夢のようだが、形は変わってもそこにあるものはあの頃と変わらないものだなあと思った。

Twitter300字ss お題:雲(2017.9.2)

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