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ノースローの日々と戦った奥川くんの1年
初めて生で動く奥川くんを見たのは、今年の1月17日、ちょうど肘の炎症が見つかってノースロー調整が始まった頃の新人合同自主トレでした。
報道が出たのはこの翌日だったのかな。あまり覚えていませんが、とにかく楽しそうにトレーニングする姿に「戸田に天使が舞い降りた!」と衝撃を受けたことを覚えています。
今思えば、ノースローが始まったばかりで、投げられないことにさほどストレスも感じていない頃だったのでしょう。何をしてもニコニコと楽しそうで、見ているこちらも幸せな気持ちになりました。
投げてはいけないので、奥川くんだけは投げる手前でストップ。それでも、他の選手たちの番であっても、できるだけ同じ動きをして早く身体に覚えさせようとする様子も窺えて、その真面目さが印象的でした。
そしてその1週間後、1月24日の奥川くん。今度は完全にみんなと別メニューの時間があり、一人だけ体幹を鍛えるようなトレーニングをしていました。仲間がキャッチボールをしている姿を羨ましそうに、少し辛そうに眺めながらのトレーニング。
外野を使っての短距離走にはこの表情。それでも投げられないストレス発散にはなっていたのか、何本も全力で走っていましたね。
次に奥川くんを見たのは西都での二軍キャンプ。ようやくノースローが解禁となり、徐々にペースを上げて、あと3日でブルペンに入れるというタイミングでした。
コーチに言われたことは、すぐその場で身体を動かして確認して覚えようとする姿勢は相変わらずです。
そして初めて見たキャッチボール。投手陣全員並んで、ウォーミングアップ的な感じで始まったのですが、ど素人の自分が見ても明らかに球の伸び方が違います。
伸びやかでしなやかで、どこにも変な力が入っていないような柔らかいフォームから繰り出されるシュッとした球。受けていた小山田さんが、ワクワクを隠しきれず、終始楽しそう(いつも楽しそうだけれどいつも以上に)でした。
ちょうどこの日から、キャンプ地でもコロナ対策としてファンとの接触が禁止されました。リュックに奥川ユニとサインペンを忍ばせていましたが、あと1日早く行ってたらもらえたかなぁ、と思うととても残念です。
次に投げる奥川くんを見たのは4ヶ月後の6月20日、二軍の開幕試合で1イニングのみではありましたが、開幕投手を務める姿を画面越しに見ていました。たった14球ではあったけれど、自己最速タイの154キロをマーク。画面越しでもその迫力は十分に伝わってきました。
しかし、順調であれば7月末には一軍デビューかと言われていたのが、再度のノースロー調整。今度は肘かどうかは不明で上半身のコンディション不良と報道されていました。
誰もが、今季の一軍昇格は無理なのではないか、それどころか、ヤクルトの新人育成はどうなっているのかと疑念を持つ人も出てきた頃、社会人との練習試合で登板したとの朗報が。
これは、そろそろ二軍での登板があるだろうと、山を張って取った10月14日(水)の日ハム鎌ヶ谷スタジアムでのビジター戦。早めに着いて開門を待っている列がざわつき始めました。「奥川が先発らしいぞ」。
投げられない間、身体作りに励んでいたのがはっきりわかるほど、ひとまわり大きくなった奥川くん。ちょっとふっくらした顔には、いつもの笑顔がありました。
この日は3回を投げて1安打無失点2奪三振。犠打も決めて投打にのびのびと、それでもプロとしての自覚なのか、キリッと引き締まった表情に成長を感じました。
そうして迎えた2020年11月10日(火)。奥川くんの一軍初登板を撮るために、普段なら絶対に行かない広島戦の三塁側(といってもバックネット席すぐそばですが)をゲット。
ドラフト指名から1年以上かかってたどり着いた神宮のマウンドは、ほろ苦デビューと言われるものではあったけれど、そんな中でも笑顔を見せる大器っぷりには脱帽でした。
とは言え、5失点という内容は、本人も大いに不服だったでしょう。ファインダー越しに見る奥川くんの表情は、二軍戦とはまるで違うものでした。うまくいかないことに対して、初めて焦りの表情を見せていました。
それでも、辛いノースローの日々を乗り越えて、今季のうちに一軍の厳しさを体験できたことは幸いです。このオフの課題を見つけられたのですから、きっとまた内に秘めた闘志と賢さで、大きく成長していってくれると信じています。
日刊スポーツの記事にあるように、これから彼の「エース道」が始まることを予感させた今季最終戦。来年は、今年の我慢を花開かせる飛躍の年となりますように。
来年はもっと撮るぞー!
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