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大好きな選手の移籍に寄せて

いつかこのときが来たらnoteを書こうと思っていて、でも今こうやって書こうとしてるけどなにを書いていいのかわからない。

何度も下書きを開いて閉じて。合間合間に今までのことを思い返して泣いて。延々と繰り返して一週間が過ぎた。

心を込めて自分なりの素敵な文章を書くんだ、って。タイトルもエモいやつ考えるんだ、って。そう思ってたけど今の腫れぼったい自分にはそんなのひねり出せそうにない。

だけど、新しいチームのユニを着て新しい場所で始動する姿を見たらまた違った感情になる気がするから。素敵にもエモくもできないけど、やっぱり今の思いを今書きたい。


一生会えないわけじゃない。プレーが見られなくなるわけじゃない。まだ近い方でよかった、また観に行けばいい。って頭では納得しても心が従ってくれない。好きなチームで好きな選手を応援できなくなることがただ寂しい。

今季で最後かも、悔いのないようにしようと毎年のように自分に言い聞かせながら応援してきた。いつか来るそのときが来ただけ。心の準備はしていたつもりだけど、しんどいものはしんどい。


サッカーにはまるで興味がなかったけど、2019年のルヴァン杯決勝戦を観てフロンターレを好きになって、同時に、その試合に出ていた彼のファンになった。静かに燃える感じや、目立たないけれど確実に利いている存在感になんとなく惹かれた記憶がある。そこから見続けているうちに、気がついたら「なんとなく」が「ずっと見ていたい」になってた。

技術的なことはさっぱりわからないまま最初から感じていたのは、とてもきれいだなあ、と。背が高くて手足の長いところがそもそもきれいだし、ひとつひとつの動作や蹴ったボールの軌道もきれい。

いくつものポジションができる魅力は言わずもがな。淡々と、きっちり仕事をこなすイメージが強い一方、相手ゴール付近にいるときは貪欲かつしたたかにゴールを狙うFWっぷり。渋い手堅さと華やかさのギャップというか、同居している感じが好きだった。

いつか誰かがSNSで「山村和也はロマン」と書いていて、その人と同じ意味かはわからないけどめちゃくちゃ同意だった。うん、山村和也はロマンだ。


出場機会に恵まれていたとは決して言えず、少しでも長く見ていたい身としてはネガティブモードに陥る時期も多かった。

チームが乗ってる時に出番は来ず、出番が来る時はいつだってチームの緊急時。それでも仕事を全うし、役割を忠実にこなす。

2022年5月22日 スポーツ報知

2022年のある試合の寸評なんだけど、在籍期間通してのこのチームにおける彼の立ち位置そのものだと思う。チームの緊急時にかかる評価や期待の声はすごくうれしく誇らしいけど、ファンとしては緊急時じゃないときもプレーする姿を見たいのよ。

でも、突然出番がめぐってきたときも、難しい局面で出場することになったときも、いつも頼もしいプレーを見せてくれて。そのたびにそれまでのネガティブモードは感動と尊敬に変わった。

日の当たらない努力が少しでも多く報われてほしい。私にとって彼は、熱く応援するというよりは、思いを乗せて祈る対象と言った方が近いのかもしれない。


2023シーズンはチームにとっても彼個人にとっても厳しいシーズンだった。終盤の試合での選手コメントでとても印象に残ったことばがある。

個人としてもピッチに立って試合に勝つことができるのはうれしいこと。
(第30節アビスパ福岡戦 試合後コメント)

選手である以上、ピッチで結果を出したい思いは強い。
(第34節サガン鳥栖戦 試合後コメント)

川崎フロンターレ公式サイトより

ごくシンプルなコメントだけど、何万分の1かでも勝手に一緒に苦しんできたつもりの私には、涙が出るほど重く感じられる。試合のピッチに立つこと、ピッチに立った試合で勝つこと。この2つがどれだけ遠かったか。

苦しい時期が長かった分、出番が増えたシーズン最終盤はわけがわからないくらいに幸せだった。毎試合のように好きな選手を見れる喜び。2つのゴールを始め、彼のプレーの真骨頂もたくさん味わえた。チームも負け知らずで、試合後の笑顔もたくさん見られた。周りのあらゆるものに感謝したかった。

あの2か月半があってほんとによかった、ほんとに幸せだった、ってこれから先私はずっと言い続けると思う。


こんなに趣味に生きたことなんてなかった。子どもが生まれてからは特に。細々と学校のボランティアをしたり、ママ友とランチしたり、たまに下手なハンドメイドをしたり。そんな過ごし方を何年もしていた。

その頃と比べたら、スタジアムに足を運び好きな選手を追う生活はあまりにも眩しく刺激が大きくて。

私より熱量高く愛を注いでいる人なんていくらでもいて、その人たちから見たら、私なんてただ大げさに自分に酔ってるだけなんだろう。だけど、事あるごとにこんなに感情を揺さぶられて、自分に酔いたくもなるよ。

誰かのファンでいるってこんなに幸せでこんなに苦しいんだと思い知らされてる。


山村選手。

「生きざま」をどうこう言えるほど私はあなたのことを知りません。ただ、サッカー選手として人としてのあなたの「あり方」が、私はとても好きでした。

ピッチ内外で見ることのできるすべてが好きで、この場所でもっと見ていたかった。

遠征したりゲーフラ作ったりなんて、消極的な私には考えられなかったことで…「後になって後悔したくない」という一心で、私はずいぶん変われた気がします。

夢中で応援できた日々は私の宝物です。幸せな時間を本当にありがとうございました。


これからは、少し遠いところからご活躍を祈っています。

少し遠いところから、それでもきっと私は、あなたの姿を追わずにはいられないんだと思います。




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