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チャイと金木犀

最近、生きるのがしんどい。

これは今までずっと言わないようにしていた。実家暮らしで毎日ご飯作ってもらって洋服も洗ってもらって何不自由なく暮らしている私より、辛い生活を送っている人なんてたくさんいるだろうと思っていたから。「一週間もう終わり?」って思うくらいやることが多い私はきっと幸せな方なんだって思っていたから。「ありがたい」って思わないといけないと思っていたから。

でももう、言うことにした。だってしんどいから。そもそも、いつから辛さまで人と比べるようになったのか。辛い時はもう辛いじゃん。「ありがたい」って無理やり感じようとするものじゃないし。意味わからん、そんなの。

最近、毎日夢を見る。起きる直前に、多分3話から6話くらい。でも目が覚めた瞬間に内容はほとんど忘れちゃって、ただ辛い夢だったなってことだけを覚えている。夢は、好きな人が出てきても、友達や家族が出てきても、いつも悲しい。それで、起きると肩と首辺りに灰色の雨雲がずしんと乗っかっている状態。みぞおちに石が詰まってるみたいな感覚の時も多くて、しばらくベッドから抜け出せない。やっと起き上がれたと思っても、体力があまりないから身支度だけでかなり消耗してしまって、学校につく頃にはもう一日の体力の70%くらいなくなっている。古くなったスマホのバッテリーみたい。

信じられないくらい燃費の悪い状態でもやらなきゃいけないことっていうのはいつも変わらずあって、大学4年生としてちゃんと生きていくにはそれらを燃費が悪かろうが何だろうが毎日こなさなければいけない。バッテリー節約モードみたいな状態で就活の書類書いたり卒論の構想練ったり今日はどこで何を食べるか考えたりLineの文面考えたりしていると、夜の20時か21時くらいには身体が二倍くらいの重さで、このままベッドに倒れこんだらマットレス破壊するんじゃないかなってくらいになっている。

それでベッドにもぐりこんでさあ、寝るぞって思ってすぐに寝られたら、少しは楽なのかなと思う。寝られない。それは「寝付けない」というよりは、「まだ寝るのは早い」って思っている感じ。一日中「生活」をして、心を枯渇させたままの状態では寝られない。泣きたい。泣かなければならない。今の私にとって一番泣けるテーマって言ったら恋愛。叶う可能性が大して感じられない片思いを、昨年の秋からしていて、ドキドキとかきゅんとかそういう領域ではもはやなくて、焼き肉屋のテーブルの真ん中にあるあっつあつの網を心臓に押し当てられてるみたいな、ただただ苦しいタイプの恋。それはたぶん、彼は私よりもずっと深い世界を見ているような気がして、そしていつか今の生活に飽きて、ふらっとどこか遠くに行ってしまいそうな気がしているからだと思う。でも結局そのあやふやさとか、何にも縛られてない感じがすごく羨ましくて憧れている。その人とどのくらい仲が良いのかっていうと、全然大したことなくて、話すときも唐揚げっておいしいよねくらいのレベルの浅―い会話しかできなくて、でもそういう浅―い会話からたまに、チャイ好き?私も好きだよ、とか、好きな花とそれが好きな理由とか、街を行く人を見て思ったこととか、浅いと深いの狭間みたいな、不思議な領域に話を持っていけることがある。彼と話すことでしか行けない空間。月に一回会えるか会えないかくらいの感じだと全然満たされなくて、学校でもどこでも気が付いたら彼を探してしまっている自分が本当に情けないんだけどもうどうしようもない。どうしようもない。やりきれない。泣きたい夜の鉄板テーマ。

思うんだよね、バッテリー0%じゃなかったんかい、って。好きな人のことを考える余裕がまだどこかにあって、いくらやらなければならないことがたくさんあったとしても、その分のエネルギーだけは夜まで私の中にしっかりと残してある。電源ボタン押しても何も立ち上がらないくせに「充電してください」のマークは出す余裕のあるiPhoneみたいだなとか思いながら、毎日大事に取っておいている少しの電池は何のために使っているんだろう、何のためにこんなに一人の人間を愛しているんだろうって思いながら掛け布団に顔を埋めて無音で泣いていると気づくと深い眠りに落ちている。翌朝、起きる直前に見た夢に狂わされながら起きて、また生活をする、それの繰り返し。

先週あたりから、歯を磨くとかLineに返信するとかそういう、人生の細々した部分のことができなくなっていて、ゆっくり大きく動くナマケモノみたいな感じになっている。そういう人生の「雑用」みたいなものにいちいちストレスを抱えている自分が嫌いだったからこれはもしかしたら進歩なのかもしれないけれどさっきも言ったように私最近ナマケモノ人間になりましたー!って言ったってやらなきゃいけないことはずっと変わらずあるから非常に苦しい。どうにかしたい。そしてこれから夏が始まって、夏が終わったら秋が来て、またいちいちいろんなこと思い出すんだろうなって思う。そろそろ幸せな恋ができてもよくないですか?って秋の空に向かって聞いているかもしれないじゃん、私。

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