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ダブルケアとは?

ダブルケアとは子育てをしているときに親の介護が始まってしまうというように同じ時期に複数人のケアがすることが重なることをダブルケアといいます。
この言葉は横浜国立大学の相馬直子先生と英国ブリストル大学の山下順子先生が共同で研究されたときに2012年にできた言葉です。

ダブルケアは晩婚晩産化、高齢化、少子化が進む現在、ますます増えていく事象になっています。
しかしまだまだ知られていないのが現状です。
もっとたくさんの人にダブルケアを知ってもらい、ダブルケアの視点を持って支援をしてほしいと考えています。

まずはダブルケアとはなにか説明していきます。
ダブルケアには狭義の意味と広義の意味があります。
狭義の意味は「介護と子育て」のダブルケアです。
子育ての範囲は未就学児だけではなく、ケアを必要とする子どもは成人していても子育てと考えます。
例えば親や配偶者の介護をしている中里帰り出産で帰ってきた娘のケアのように、病気、障がい、資金援助などケアが必要な子どもがいた場合、成人していても子育てと考えます。
また介護の範囲も在宅で介護をするだけではなく、施設に入所、買い物援助、資金援助、電話で愚痴を聞くも介護と捉えます。
広義の意味は複数人のケアが重なればダブルケアと考えます。
自分の体調が悪い中(自分のケア)の介護や子育て、身近な人の複数人の介護、障がいを持つ子どもときょうだいの子育て、子育てや介護をしながらペットの介護もダブルケアに含まれます。

ダブルケアの最初の研究では「在宅介護をしていて未就学児を抱える女性」に限定して調査をしていました。
ダブルケアはマスコミなどではほとんどの場合、もっと狭い「親の介護と未就学児の子育て」の狭義の意味で伝えられます。
それはわかりやすく人に伝わり、支援を考えやすくなるからです。
私もダブルケアの支援を考えるときには狭義の範囲で限定して考えて良いと思っています。
ただそれでは複数人のケアを抱えているのに「ダブルケアではない」とはじかれる人が出てきてしまいます。
それは違うのではないかということで、広義の意味が追加されました。

私も「ダブルケアではない」とはじかれる人をなくし、全ての人に自分事として捉えてほしいので、あえて広義の意味でダブルケアを伝えています。
そのことで「私もダブルケアだったことに気付いた」「自分事として捉えられた」「支援の方法が変わった」などの感想をいただいています。

ダブルケアは昔からありました。
ではなぜ今ダブルケアが問題になっているのでしょうか。
ダブルケアが問題になる背景には昔と違ったさまざまな変化があります。
1.晩婚晩産化、2,少子高齢化、3.働き方の変化、4.介護・子育ての長期化、5.縦割りの行政、6.地域・親戚関係が希薄、などがあげられます。

1.晩婚晩産化:第一子の出産年齢が30年間で5歳上昇しています。その分、子どもが小さいうちに親の介護が始まる確率が高くなってきます。
2.少子高齢化:高齢化が進みケアする人が減ってきているため、ひとりで複数人のケアをしなければならない人が増えています。
3.働き方の変化:終身雇用が減り、共働きの世帯が当たり前になっている現状で介護や子育てのかたちも変わってきています。
4.介護・子育ての長期化:医療の発達により介護の長期化が進んでいます。また障がいを持っていたり、引きこもり、また非正規雇用のため自立できないでいる子どもが増えています。
5.縦割りの行政:介護は介護、子育ては子育て、障がいは障がい、といったようにそれぞれの窓口で手続きをしなければならず、手続きが複雑で必要な支援を受けられないケースもあります。
6.地域・親戚関係が希薄:いざというときに頼れる人が身近にいない人が増えています。

このような社会の変化がダブルケアラー(ダブルケア当事者)を孤立させ、しんどい思いをさせているのです。

ここでダブルケアラー(ダブルケア当事者)の悩みを2018年にソニー生命さんが実施したダブルケア実態調査から抜粋していきます。
●ダブルケアの何がしんどいのか?(上位5位まで)
1,精神的にしんどい46%、2,体力的にしんどい43%、3,経済的負担33%、4,子どもの世話が十分にできない30%、5,親・義理親の世話が十分にできない29%
●ダブルケアの3大不安
1,家計経済状況、2,子どもへの影響、3,自身の健康状況

このようにダブルケアラーはしんどさや不安を抱えてダブルケアをしています。
ここで私が知ってほしいのは「精神的なしんどさ」です。
「体力的にしんどい」や「経済的負担」は経験しなくても想像できると思いますが、精神的なしんどさは経験しないとなかなかわかりづらいものです。
周りからわかりづらく、本人も自覚していないこともあることを理解しておいてほしいと思います。

ダブルケアは今後増えていく事象です。
ですがダブルケアの大変さは周りに伝わりにくく、本人も自覚していないことがあります。
なのでダブルケアを自分事と捉えて、理解し、ダブルケアは支援が必要だという視点を持っていただきたいと思っています。

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