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摂食障害だったあなたへ。①     ~小学校時代のあなたへ。~

 これは過去16年間ほど摂食障害を患っていた私へ、現在の私がお手紙を書いてみるという試みです。

今はまったく摂食障害の症状が出なくなった私が、過去の私にお手紙を書いてみたら治った理由がわかるのではないか?

自分が過去の自分にお手紙を出すことによって、忘れていた出来事を思い出すことができ、そこを見つめることで私に更なる変化があるのではないか?もしくは何にも起こらないのか?

などの検証です。

詳しくはこちらをどうぞ。↓↓

今日は今の私が、まだ摂食障害の症状が出ていない小学校時代の私にお手紙を綴ります。

ここに何か要素はあるのかな。

では始めましょう。

よかったらお付き合いください。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

小学生の幸江ちゃんへ。

元気?

きっとこれはあなたには聞かない方がいい質問だね。

だってほんとは元気がないでしょう?

いつも元気そうにはしているけれど、心の中ではたくさんのことを抱えていたこと知ってるもの。

楽しいことだってそりゃああったけれど、いつだって淋しくて不安で悲しかったよね。

お父さんは厳しいところはあったけれども、とても家族想いで子供をすごく可愛がる優しくて面白いお父さんだよね。

お母さんだって子どもが大好きで、お父さんを大事にしていて、いつもいつも自分を後回しにして私たち姉兄妹(きょうだい)のことを一番に考えて動いてくれていたよね。

優しくて明るくて大好きなお母さんだよね。

10歳年の離れたお姉ちゃんだっていつも可愛がってくれていたし、7歳年の離れたお兄ちゃんにはからかわれてばかりいたけれど大好きなの知ってるよ。

一緒に遊ぶ友達だって何人もいたし、3年生から6年生のころまでは仲の良い男子もたくさんいて、いつも家に集まってはファミコンをしたりちょっとエッチな話しをしたりして盛り上がってたよね。

私がぶくぶくと太り始めたからっていじめる友達はいなかったように記憶しているよ。(「デブー!」とからかわれることは少しはあったけどね。)

あなたはいつだって笑っていたし、友達を笑わせようとしていたね。

お父さんとお母さんが疲れているように見えたらふざけて笑わせようとしていたことも知ってるよ。いい子だね。

仲の良い家族、優しい両親、ふざけあえるお友達がたくさん。

どこに悲しむところがあるの?って思っちゃうよね。

でも、あなたの心の中はいつだって悲しみと不安が溢れていたんだ。

説明ができない苦しさ。

言いようのない孤独感。

それを小学校の頃から感じていたんだよね。

これはなんだろうね。

まだ小さかったあなたがわからないのは当然だよ。

そうそう。

さっき思い出して胸をかきむしりたくなったんだけど、あれは辛かったよね。

あれは小学2年生の時だったね。

もともと少しぽっちゃり気味ではあったあなたに、保険の先生が言った言葉でかなり傷ついたんだよね。

身体測定の日、みんながずらりと並んで測定を待っている時。

あなたの体重の計測結果をみんなに聞こえるような大きな声で記録係の上級生に告げた後、保険の先生はずらりと並んでいるみんなに向かってこう言ったんだよね。

「甘いものの食べすぎやご飯の食べすぎは身体に悪いですからね!みなさんも気を付けきゃだめですよ!この体重は多すぎです!幸江さんみたいにならないように気を付けて!幸江さんも食べすぎに気を付けて。」

ずらりと並んでいるみんなはクスクスと笑い、そしてコソコソと何かを話していたんだ。

あなたは恥ずかしくて悲しくて涙を浮かべたまま、何も言えずに立ち尽くしていたよね。

でもあなたは身体測定が終わった後、何事もなかったかのようにお友達と笑っていたんだ。

ほんとうはとてもとても恥ずかしくて悲しかったのにね。

次の年、あなたは身体測定の前日に小さな胸を痛めながら、緊張しながら、保険の先生宛に手紙をしたためたよね。

なんて書こうか一生懸命考えて。

私が覚えている文面はこうだったんだけど合ってるかな?


先生におねがいがあります。
体重を大きな声でいうのはとてもはずかしいので小さな声でいってもらえませんか?
みんなに笑われるのがいやです。
どうかおねがいします。
どうかどうかおねがいします。


朝なるべく早く学校に行って保健室に向かう時のドキドキは今も思い出せるよ。

保険の先生を見つけて走り寄り、「あの…これ…おねがいします!」と一生懸命渡したよね。

先生は「え?」と言いながら受け取ってくれて、あなたは渡した後すぐに走り出したんだ。

お願いだから大きな声で体重を言わないで!お願いだから!と祈る様な思いで身体測定に臨んだね。

あの時あなたはまだ9歳か。

小さかったね。

1年前と同じようにみんなでずらりと並んで順番を待っていたあなた。

みんなはキャイキャイはしゃいでいたけれど、あなたは心配で心配で胸が押し潰されそうだったね。

体重測定の順番が回ってきたとき、保険の先生があなたの方をチラッと見ながら近くに寄ってきて、少しだけ笑顔を浮かべながら小さな声でこう言ったでしょ?


「だいじょうぶ。そんなに気にしなくてだいじょうぶよ。」


それから淡々と体重を測り、小さな声で記録係の人に伝えてくれたよね。

きっと保険の先生も「しまった!」って思ってくれたんじゃないのかな?

1年前にあなたにしたことを。

嬉しかったよね。

「よかったぁーー!」ってめちゃくちゃ思ったよね。

今思い出しても泣けてくるよ。

あれはお手紙を頑張って書いてよかった出来事だったね。

でもあなたの身体測定の日の恐怖は消えなかったね。

4年生になった時の身体測定前日の出来事も思い出すだけで胸が苦しくなるよ。

明日は身体測定だという夕方。

怖くて怖くて、胸がキューッとなっていたね。

どうしたら明日学校をお休みできるか?ばかりを考えていたよね。

身体測定が嫌だから学校を休みたいとお母さんに言ってしまうとお母さんが悲しむような気がして言えなかったんだよね。

心配してしまうと思ったからね。

そんなあなたは雨が降っていることを喜んだんだ。

今ずっと外にいれば風邪をひけるかもしれない!と思いついたんだったね。

それからあなたは近所のグラウンドに傘を持たずに出かけて行って、しばらくウロウロした後ベンチに座って「もっと濡れろ…。風邪ひけ…。」と言いながら過ごしたよね。

必死だったね。

また笑われるかもしれない。また「太ってる!」と言われてしまうかもしれない。

まるで太っていることがいけないことのように。

私の存在が悪のように。

身体測定の日が怖くて怖くてたまらなかったよね。

次の日、ほんの少しだけ熱が出たんだけどお休みさせてもらえるか微妙な熱で「頭が痛い…。」と嘘をついたんだよね。

お母さんは「そうかぁ…。じゃあお休みしようか?」と優しく言ってくれたんだけど、お姉ちゃんが「幸江風邪?休むの?」とお母さんに聞いた後、こんな風に答えているのを聞いたんだ。

「風邪…っていうか、知恵熱よ。」

あなたは『ちえねつ』という意味がわからなくてずっとどういう意味だろう?って考えていたでしょ。

そのうちわかるよ。その意味が。

お母さんはあなたがお休みしたいと言った理由がわかっていたんだろうね。

きっと心配していたと思うけど、あえてそう言わずにいてくれたんだと思うよ。愛されているんだね。


学校で毎年行われる夏の水泳大会も年々嫌になっていたよね。

泳ぐのが大好きで得意だったのに、水着になるのがとても嫌だったよね。

自分が泳ぐ番になったら嫌でもみんなこっちを見るからね。

どこからか「デブー!」という声が聞こえてきたらキッと睨み返していたけれど、内心はズタズタに傷ついていたし、泣きそうになっていたの、覚えてる。

好きで太ったんじゃないのにね。

でもさ、今いろいろ思い出してみてるんだけど、あなたはまったく「痩せたい」なんて思っていなかったんじゃない?

あなたはまったく「痩せなきゃ」なんて思っていなかったんじゃない?

いろんな大人から「可哀そうに」とか「ちょっと痩せた方がいいんじゃない?」とか「このままでいいの?」とか「太りすぎだよ」とか「みてると辛い」とか言われたから、いつの間にか「痩せなきゃいけないんだ」と思い始めたんじゃない?

少数ではあったけれど、学校の子供たちから「デーブ!」「太りすぎだぞー!」と明らかに悪意ある言い方で言われたからじゃない?

あなたはいつしかこう思い始めたよね。

『太っていることは醜いことなんだ』

『太っているとからかわれるんだ』

『太ってて醜いとお父さんとお母さんが悲しむんだ』

『太っていて醜いと愛されないんだ』


だから痩せなきゃ!!


小学6年生のころにはしっかりとそんなことを思っていたよね。

でもまだまだ小さかったあなたはどうしたらいいかわからなかったんだよね。

「痩せたい…」と呟くと、お母さんは「でもご飯はちゃんと食べなきゃ」と言うし、「そのうち痩せるだろー。今は気にせずしっかり食べろ!」とお父さんは言う。

でもあなたが太っていることについてはなんだか悲しそうに見えたんだよね。

あなたはまだよくわかっていないかもしれないけれど、今の私からあなたに贈る言葉があるんだ。

読んでみてもよくわからないかもしれないけれど、書いておくね。

幸江ちゃん。

あなたは太ってても痩せてても素晴らしくいい子だよ。

そして太ってても痩せててもたくさんの人に愛されているよ。

お父さんとお母さんが悲しそうに見えたのはほんとかもしれないけれど、それと愛されているとかいないとかは全く関係ないことなんだよ。

私は今、あなたと同じくらいの年の娘がいるんだけど(信じられる?あなたは子供を産むんだよ!)とっても可愛くてとってもいい子なの。

あなたに似ているところがたくさんあるんだよ。

名前は空ちゃんっていうんだけどね、空ちゃんがあなたと同じような思いをしていたら…と思うと胸が痛くて涙がポロポロこぼれてくるんだ。

私はあなたをこうやって手紙の中で抱きしめることしかできないけれど、

伝えておくね。

どんなあなたも健気で大好きだよ。

太っていようが痩せていようがね。

そんなことはとてもちっぽけでどうだっていいことだって気付くのにはまだまだ時間がかかるけれど、それでも大丈夫だから。

中学生になったら叔母さんが『魔法の薬』を持って訪ねてくるよ。

それからまたあなたの物語がセンセーショナルに進むんだけど、それも大丈夫だからね。

またお手紙書きます。

可愛くて健気なあなたが愛しいです。

実際にこの手で抱きしめたいほど。

一生懸命生きてくれてありがとね。

まだまだ冒険は始まったばかりだよ。

これだけは覚えておいてね。

大丈夫。

大丈夫だからね。


では、またね。

大好きだよ。












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