【声劇フリー台本】わだかまったもの
ほんの少しの毒と共に嘆く一人用台本です
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【利用規則】
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【台本】
最高のコンディションだ。
手先は凍えるように冷たいし、眼球が抉れるように頭が痛い。
天気のせいなのか、耳には不快な音がやけに大きく響く。
全く、絶好調としか言いようがない。
夢見も悪かったし、最高に胸糞の悪いものまで見てしまった。
だからだろうな、こんな思考が止まらないのは。
かつて僕のことを友と呼んだ者がいた。
だが今にして思えば、僕は最後までその者の友人にはなれなかった。
もしこの先も関係が続いていたとしても、それは変わりようのない事実だっただろう。
あの者は気付いていただろうか。
自分の好きなものを僕に紹介することはあれど、その逆はなかったということ。
好意を口にしながらも、さして僕に興味が無いという事実に僕が気付いているということ。
かつてその者と道を違えた者と、似たような言動が散見されたということ。
僕はあの者の友人になりたかった。
だからこそ、友人になれなかったのだろう。
自分の感情を共有する相手。
自分の感情に共感してもらえる相手。
自分を否定せず肯定してくれる相手。
僕に求められた役割はそれだった。
それ以外のものは望まれていなかった。
あの者は最後まで僕という個人を見ることは無く、自分の望む役割としてしか見ていなかった。
本当に残念なことだけれど、僕はそういう関係性を『友人』とは呼ばない。
呼べない。呼びたくもない。
それを『友人』と呼んでしまうのは、僕の友人でいてくれる者たちへの冒涜に値する。
あえてその関係を言語化するのであれば、それは『自分を愛する為の道具』だろう。
共有して、共感されて、肯定されることで自分が愛されていると自覚できる。
その為の『道具』であって、それ以上でもそれ以下でもない。
僕は見て見ぬふりを続けてしまった。
大袈裟な感情を抱くことで、振り払おうとしてしまった。
だから最後には狂ってしまったのだ。
過去の幻影に重ねる行為がどれだけ侮蔑的か、あの者はきっと知らない。
そうされたとき、どれだけの痛みを伴うかなど知る由もない。
そうだろう。
あの者は自分の痛みにしか目を向けなかった。
自分の傷と痛みを庇えさえすれば、他者がどうなろうと気にも留めなかった。
他人だって痛いのだと気付かなかった。
過去の幻影と目の前にいる人間は全くの別物だと気付いてほしかったと思うのは傲慢だろうか。
過去の幻影と僕は別物であると、もはや意地になって証明しようとしていたのは下らない行為だったのだろうか。
そんなことを問いかけたところで、答えなど返ってこない
ああ、嫌だな。
答えのない、意味のない問答に思考と言語を費やしたくはないというのに。
絶好調で在るが故に、こんなことばかり脳裏を過ってしまう。
せめて、これを悲劇と捉えて酔いしれたくないものだ。
それが何よりもの粗末な行為であると、あの者から学んでしまったのだから。
友になれなかった。
対等な関係を築けなかった。
無意識のうちに見下され続けていた。
これは僕とあの者の間に起こった話であって、他者は全くもって関係ない。
それを強く頭に刻んで、痛みと共生していくしかないのだ。
見て見ぬふりが得意であるが故に、直視してしまえば現実などこんなものだ。
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