言葉の堕胎
表の世界には表の言葉しか通用しなくて、裏の言葉は裏の世界でしか発してはいけないらしい。外側には外側の言葉、内側の言葉は異質すぎて外の世界を脅かしかねない、だから育ちすぎて産まれてきてしまいそうになったら、外の世界の住人たちに見つからないように、堕胎してきちんと穴に埋めなければならない。
ずっとお腹のなかにいたから、きみが膜を通り抜けてぼくの中に入ってくるまで、外の世界があることに気づいてなかった。内と外とを繋ぐことのできるものは、言葉ではなくて肉体のほうなのかもしれない。
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