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短編小説、エッセイ、その他自分の描いたもの

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物語が中心です。おもに短編小説。
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#エッセイ

戦場のパーティ

佐藤正午の「月の満ち欠け」を読んだときに、若い頃よく「同じ家に帰る」夢を見ていたことを思い出しました。わたしはなぜか「その昔、わたしが死んだ」ことも夢の中で知っていました。「月の満ち欠け」みたいに、自分の前世の記憶を描いてみたいな、そう思って作ったのがこの短編です。 「戦場のパーティ」 夢の中で、わたしの家はいつもここだ。 大通りから横道に入り、大きな川の堤防へと向かう。アップダウンの激しい人家の少ない畦道だ。堤防にぶつかる。左方向に曲がる。今度は急な上り坂が続く。両側

やっと人間になれたんだよ

# はじめてのインターネット もう、昔すぎて思い出せないくらい昔。下の子が生まれて、義父母がなくなり、想定外の転勤になって、よくわからないくらいにいろんな「繋がり」がなくなって、わたしはふわふわしていた。ワンオペ育児だし友達いないし、義父母の家業の整理もしなきゃいけない。それで誰とも話せない日々で、ママ友もいないんでパソコン買って、インターネット繋いだ。そういう経緯だ。 インターネット? BBSって言ってなかったっけ? ニフティ? 最初は上手に仲間に入れずウロウロしてて記

名前の由来

雪のように肌の白い赤ん坊だった。父親は生まれたてのわたしを見て「ゆき」と名付けた・・・由来を聞かれるたびにそう説明していたが、嘘である。 産院のソファでなかなか生まれないわたしを待っていた父親は、置かれていた女性雑誌を読んでいた。そこに映っていたモデルの名前が「ゆき」だったらしい。そうか、こういう名前もいいな、そうしてわたしの名前になった。 結婚して苗字は変わった。苗字が変わった名前を最初はネットで使っていた。 そのうちにハンドルネームなるものを作った。「野雪」という名