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「運び屋」があまりに良かったもので

クリント・イーストウッド監督「運び屋」、見ましたか?僕はもう、びっくりするくらい泣きました。よくてよくて、溢れる想いを残しておこうと書いている次第です。映画評とかコラムなんて言える代物ではありません。感情のままに書きますのでネタバレ等が気になる方はご注意ください。
しっかり映画のことを知りたい方は「街角のクリエイティブ」の記事を読んでみてください。2人のライターが書いた2つの記事。どちらもそれ自体が素晴らしいです。

デイリリーで家族3人が繋がる瞬間

僕が一番泣いたのは、アールが逮捕された時にブラッドリー・クーパー演じるベイツ捜査官と車で会話するシーンなんですが、最も印象に残ったのは?となると違っていて。アールと娘のアイリスがベランダで会話し、和解するシーンです。2人の前にはアールが作り出した品種のデイリリーが植えられていましたね。妻メアリーが植えて手入れをしていたのでしょう。アールが家族より優先し、外に対して自分の権威を誇示する手段でもあった花、デイリリー。メアリーが病床でアールに対して「最も愛して、最も苦しめられた相手」と言っていましたが、そのアンビバレントな感情の象徴でもあるデイリリーを自ら家に植えていたし手入れをしていた。2人にとっては妻・母メアリーの象徴として映っていたはずです。だから、あのベランダでは実際会話していたのは2人でしたが、家族3人での会話だったように感じたのです。
イーストウッドお得意の語りきらずに見せる妙があって、もうグサグサ刺さりました。

数十年に拡張された2時間

上で紹介した記事ふくめ、さんざん語られていますが「運び屋」はクリント・イーストウッドの人生や生き方を感じさせます。人生の総決算、そんな風にもうつります。アールをイーストウッド自身が演じることで、2時間という映画の時間の制約を飛び越えた数十年の流れや重みがもたらされました。2時間で描ききるのは難しい。なんていわれる映画も多いですが、こんな時間の拡張の仕方もあるんだなと驚嘆しました。もちろん、どんな作品、誰でもできるというわけでもありませんが。
そして忘れてはいけない、ブラッドリー・クーパー。「アリー/スター誕生」で散々書きましたが、イーストウッドとクーパーは師弟関係と言われいます。罪を犯す者とそれを追う者という立場でありながら「家族より仕事を優先する」という共通点がある2人の関係にぐっと深みを持たせました。逮捕の瞬間、あのコーヒーショップにいた老人だと分かった瞬間の「あんたか…」と、それに応えるアールの表情。そこからの流れにもう涙腺崩壊でした。

ブラッドリー・クーパーは監督と俳優、どちらメインでいくんでしょうかねえ。個人的には監督・主演で名作を生んでほしいなあと切に願います。

最後にいい顔される映画に弱い

刑務所で憑き物が落ちたようにすがすがしく笑うアール。非常に印象的なラストシーンでした。ひとりの老人にとっての人生の総決算映画として「運び屋」と共通点を持つのが「LUCKY」。

この映画のラストも、ハリー・ディーン・ストーンの悟ったような受け入れたような非常に印象的な笑みで終わります。とてもグッときます。運び屋以上に地味ですが、おススメ。
最後の表情でずっと残っているが韓国映画「殺人の追憶」。実際の事件をベースにした映画なんですが、ラストシーンのソン・ガンホの表情がなんともいえません。

2時間かけて作り上げた物語のピリオドとなる役者の表情。これが強い映画は良い映画だったなあと思うし、そんな映画が好きだと実感しました。

というわけで、

ただ思いついたままに書きました。少しでも楽しんでもらえたり、共感してもらえたら何よりです。映画評の記事は、こんな僕でもそれなりに考えて書いているので、こうやってつらつら書くのも悪くないですね。

また何か、想いが溢れる映画に出会えたら書きます。

ともかく「運び屋」です。本当にいい作品でした。最後のアールの表情を見る限り、イーストウッド監督はまだまだ撮るつもりでしょう。楽しみにしたいと思います。

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