【感想文】こんな時だから『ペスト』読もうぜ(その4)

どうもどうも。みんな退屈してる? 俺はそうでもないよ。振り返れば俺の休日は昔からこんなだったからな。とはいえ早く収束して欲しいもんだ。皆んなが俺みたいだったら経済立ち行かないもんな。

さて、ざっとおさらい。まずアルジェリアのオランという『醜い』町で、ネズミの死骸が続々現れるという不気味な現象が発生。程なく医師であるリウーが住むマンションの管理人が発熱とリンパの腫れという症状に見舞われる。後で診療すると約束したリウー先生に、長年担当してる患者の一人であるグランから連絡があり、訪れてみると隣人が首吊り自殺を企てていた、という状況。

グランのおかげで一命をとりとめた隣人コタールは「警察に届ける必要がある」と言われて異常にぐずる。管理人が心配なリウー先生はひとまず戻ることにし、二、三日様子を見るようにグラン氏に依頼する。「お隣さんなんだから当たり前」とあっさり引き受ける善の権化グラン氏。イカスぜ。

このコタールも重要なキャラなんだけど、今は『善と悪』が隣り合って住んでいる、ということを抑えておけば大丈夫だ。何しろ先は長い。急いで診療に戻ったリウー先生。しかし高熱に苦しむ管理人は翌日、搬送される救急車の中で死亡。ついに感染者が発生し物語は次のフェイズに移るんだけど、ここで原作通り、最後の重要人物タルーと、その特殊な記録を紹介しよう。

このタルーという人物こそ、この本を読んだ当時俺が最も「かくありたかい」と思ったキャラで、彼の書く『普通の感覚に欠けた』記録には相当憧れたもんだよ。この記録の骨子となってるのが―これはよく聞くと思うんだけど―『不条理』と『反抗』という概念なんで一応ざっと説明する。

不条理は「人が死ぬ」という事象、反抗は「そこに上位の意志を認めない態度」と、そんな感じだ。ホントにざっとだな、うん。『異邦人』『シーシュポスの神話』をセットで読むとよく分かるんだけど、この二冊が薄っぺらいくせに難しいのよ。

なので「普段過ごしていて(これはおかしいな)と感じたことを、理性的に突き詰める」という態度を徹底するとどんな結果が出るか、という思考実験だと思えばいい。キリーロフの「神は存在しない。ゆえに僕が神だ」がその原点なんじゃないかと思う。例えばタルーはこんなメモを書いてる。

問:時間を無駄にしないためにはどうしたらよいか? 答:過ごす時間全てに自覚的であること。方法:日々を歯科医の待合室にあるような落ち着かない椅子で過ごす。日曜の午後ずっとバルコニーに残る。分からない外国語の講義を聞く。最も長く不便な経路で電車旅行をし、その間中ずっと立っている。映画の券売所に並んでチケットを買わない等々。
“Query: How contrive not to waste one’s time? Answer: By being fully aware of it all the while. Ways in which this can be done: By spending one’s days on an uneasy chair in a dentist’s waiting-room; by remaining on one’s balcony all a Sunday afternoon; by listening to lectures in a language one doesn’t know; by traveling by the longest and least-convenient train routes, and of course standing all the way; by lining up at the box-office of theaters and then not buying a seat; and so forth.”

さあこれで主要なキャラが全員登場した。今まで(どう書いたら相関図が分かりやすいかな)と考えてたんだけど、第一章が終わるまでに彼らの容姿がだいたい分かる仕組みになってるんで、その記述をもとにお絵描きすることにした。主旨が違う? いやいや、真の狙いはステイホームだからさ。まずはリウー先生から。

『三十五歳ぐらい。中背。広い肩幅。ほとんど四角い顔。濃い色の座った目、張り出した顎。大きめの、形の良い鼻。短く刈り込んだ黒髪。厚い唇は大抵ヘの字に結ばれている。日焼けした肌』って……あれ?

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……セガール!?

ちょっと予想外の展開になったんでここまでにしておこう。


名前|役割|権威|属性|厄災の影響で…
ベルナルド・リウー|医師|否|陰|変わらない
ジャン・タルー|政治活動家|否|陽|変わらない
老スペイン人|喘息病み|否|陽|変わらない

ジョゼフ・グラン|事務員|否|善|変わらない
コタール|犯罪者|否|悪|変わる

M・オトン|判事|是|―|変わる
レイモンド・ベルナール|新聞記者|是|―|変わる
パヌルー|神父|是|―|変わる

なんか相関図的なもの作るわ。

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