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『ChatGPT「超」勉強法』 全文公開: 第4章の2

『ChatGPT「超」勉強法』(プレジデント社)が3月15日に刊行されました。
これは、第4章の2全文公開です。

第4章の2 ChatGPT+丸暗記は、魔法の玉手箱:丸暗記法の(1)

英語の勉強には、「分解法」でなく「丸暗記法」を取れ

『超「超」勉強法』において、「日本人が英語ができないのは、分解法で勉強しているからだ」と述べた(*注)。
「分解法」とは私の造語だが、「個々の単語の意味を辞書で調べ、文法を用いてそれらを文章に組み立てていく」という方法である。つまり、単語という「部分」から、文章という「全体」を理解しようとする方法だ。
 この方法がうまく機能しないのは、日本語と英語がまったく異なる体系の言語だからだ。英語とドイツ語のように似た構造の言語間であれば、辞書を引いて単語の意味を調べ、それを機械的に当てはめて文章の意味を知るという方法も機能するだろう。しかし、日本語と英語はまったく構造が違うので、このような機械的な当てはめでは、うまくいかないのだ。
 では、どうしたらよいか? 『超「超」勉強法』では、「丸暗記法」を取るべきだと主張した。これは、「単語の意味を、個々の単語ごとに記憶しようとするのではなく、一つの文章の中で捉えよ」というものだ。そのために、文章を丸暗記する。
 ChatGPTの時代に、この方法は依然として正しいか? それとも修正が必要か?
 結論をいえば、この方法が正しいことは、ChatGPTの時代になっても少しも変わらない。それだけではない。つぎの2点で、ChatGPTが丸暗記法の有効性を高めるのだ。
 第1に、丸暗記のための教材を得るのが簡単になる。これについて、次項で述べる。第2に、分解法からの完全な脱却が可能になる。これについて、本章の3で述べる。

*注 『超「超」勉強法』第3章の3。

暗記する教材を探し出すのは、簡単ではなかった

 丸暗記法で何を覚えるか? 学生であれば、まず教科書を覚えることが考えられる。学校の試験のために、これは最も強力な方法だ。ほぼ満点が取れるだろう。欠点は、教科書は面白くないことだ。また、社会人が英語を勉強する場合には、特定の教科書はない。
 そこで、丸暗記法の対象を探す必要がある。第1に、文学作品が考えられる。興味があるものなら、何でもよい。シェイクスピアの英語は古臭いが、暗記する価値は十分にある。第2に、政治家の演説もよい。分かりやすい言葉で、しかもはっきりと発音しているので、音源が見つかれば、英語を聞く練習になる。そして第3に、社会人であれば、自分の専門分野の文献を丸暗記するのがよい。
 ところで、丸暗記する対象が決まったとして、そのテキストをどうすれば入手できるか?
 かつて、英語のテキストを入手するのは容易なことではなかった。基本的には、洋書を購入するしか方法がなかったが、これは、きわめて高価だった。
 ところが、インターネットの普及によって、英語のテキストを入手することが著しく容易になった。しかし、必ずしも望むテキストがすぐに手に入るわけではない。
 例えば、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の名場面の台詞を覚えたいとしよう。
インターネットを検索しても、英文のテキストがどこで手に入るかは、簡単には分からない。
「ロミオとジュリエット、台詞、英語」と検索すればなんとか辿り着けるかもしれないが、確実ではない。
 また、テキストが得られたとしても、目的の箇所(例えば、「バルコニーの場」)がどこにあるかを見出すのは、容易なことではない。

ChatGPTに聞けば、すぐに分かる

 ChatGPTがこの問題を解決してくれる。
 まず、「シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の英文のテキストが入手できるウェブサイトを教えてください」と聞く。
 そして、「バルコニーでのジュリエットの有名な独白があるのは、第何幕の第何場ですか?」と聞く。ChatGPTは、これらの質問にすぐに答えてくれる(*注)。
 英文のテキストだけでなく、日本語訳がほしい場合もあるだろう。また、朗読を聞きたい場合もあるだろう。これらは、いったんテキストを手に入れれば、ChatGPTが簡単にやってくれる。ただし、元のサイトでこれらが得られればもっと簡単だ。政治家の演説は、録音があることが多いので、それを聞きたい。こうした場合、いろいろと条件をつけて、「これらの条件を満たすサイトを教えてください」と聞くこともできる。
 私は、丸暗記法の教材のありかを示すウェブサイトのリンク集を作っていたのだが、ChatGPTの出現で、このリンク集は不要になってしまった。
 丸暗記法の教材を得るもう一つの方法は、丸暗記する文章を自分で作ることだ。この方法は英語を書く訓練にもなる。これについては、本章の4で述べる。

*注 プラグインなしでも、ある程度の情報は得られるのだが、Link Readerというプラグインを用いると、もっと詳細な情報が得られる。なお、プラグインについては、第2章の8参照。

名演説がある映画を教えてもらう

 ChatGPTに映画の名場面を教えてもらうこともできる。
 例えば、シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』。ここに、アントニーによるシーザー追悼演説という有名な場面がある。ChatGPTに頼めば、直ちにYouTubeにある動画を教えてくれる(注1)。
 いちいちYouTubeのアプリを開く必要もなく、ChatGPTが教えてくれたURLをクリックするだけだ。英語のスクリプトも、日本語訳も付いている。
 あるいは、エリザベスⅠ世の有名なティルベリー演説。来襲するスペイン無敵艦隊を目前に、白馬にまたがって将兵を鼓舞する悲痛な演説だ。「この場面がある映画を」という要求に応えて、ChatGPTは、ケイト・ブランシェット主演の映画「エリザベス」を教えてくれる。
 映像付きのケネディ大統領の演説もある。例えば、1963年6月、アメリカン大学における「平和演説(注2)」。イギリスの詩人ジョン・メイスフィールドの詩を引用しつつ、知を探究する大学キャンパスの美しさを讃えることから始まる演説で、私が最も好きな演説の一つだ。
 こうしたものは、検索エンジンを用いても見出せないわけではない。しかし、かなり面倒だ。それに、目的のサイトが必ず見つかるわけではない。ChatGPTは、要求を出すだけで、すぐに目的のものを示してくれる。まるで、魔法の玉手箱を手に入れたような気持ちになる。
 こうした道具を用いれば、楽しく勉強を進めていくことができる。

注1 マーク・アントニーの演説(1/2)。Mark Antony Addresses Roman Citizenry on the Death of Julius Caesar(First Half)-YouTube

注2 Full Transcript: President Kennedy's Peace Speech at American University(June 10, 1963)‒The Singju Post


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