「超」整理手帳(第801回):コロナウィルスは、社会制度の基本に問いを投げかけている
◇ 社会制度の基本が問われている
コロナウイルスは、いつかは終息する。
しかし、何も長期的な影響残さずに、そのまま忘れられてしまうものではありえない。
これによって、不段は取り立てて議論されることはなく放置されてきたものごとの本質に対して、あからさまな問題が投げかけられたのだ。基本的問題を覆い隠し続けることはできなくなった。
第1は、言うまでもなく中国の国家体制だ。
3月になってから、ヨーロッパやアメリカで感染の爆発的拡大が生じた。
他方で、中国での感染状況は次第に収まり、4月初めに武漢市の封鎖が解除された。封鎖が行なわれていたその他の地域でも、解除が進められた。生産活動も徐々に再開された。
さらには、ヨーロッパにも援助の手を差し伸べようとしている。
疫病をコントロールできるのは、強権・管理国家だった。
これは、われわれの基本的な価値観を覆すものだ。
コロナウィルスは、これまで意識することの少なかった国家の基本体制という問題に、われわれの目を、否応なしに向けさせた。
◇ 悪夢のような欧米の状況
ヨーロッパ、とくイタリアやスペインが、どうしてこのような状況になってしまったのか?
イタリアでは、医療体制が崩壊した。
スペイン では、死体の火葬が追いつかなくなり、スケート場を臨時の遺体安置所にしているそうだ。
カミュの小説『ペスト』に、死者の埋葬を機械的に片付けていく場面がある。まさにこれと同じような状況になってしまった。
スティーブン・キングの小説に『ザ・スタンド』という作品がある。
これは、軍の研究所から致死性の高いインフルエンザウィルスが流出してしまい、世界中のほとんどの人が死亡してしまうというホラー小説だ。
こんなことは現実にはありえないと、いままで思っていた。しかし、イタリアやスペインの状況を見ていると、それが現実に起こっていることを認めざるをえない。
悪夢を見ているような気持ちだ。
◇ 医療制度の基本が問われている
いままでうやむやに放置していた様々な問題が、浮かび上がっている。
一つは、医療制度の問題であり、医療保険の問題だ。
アメリカには、公的な医療保険がなく、民間の医療保険しかない。保険料が高いので、医療保険でカバーされていない人が低所得者には多い。
オバマ前大統領はこれを改善するため、「オバマケア」という保険制度を導入した。しかし、トランプ大統領がこれを廃止してしまった。
今回のコロナウィルスについても、検査を受けると多額の費用を請求されるので、検査が受けられないというような事情もあると言われる。
この問題は、アメリカ大統領選挙において、重要なイシューとして議論せざるを得ないだろう。
ところが、イタリアの場合には逆に無料で病院に診療できることが院内感染を広めたという報道もあった。
◇ EUは何も出来なかった
こうした中で、EUはイタリアやスペインを助けられなかった。
EUがやったことといえば、さまざまな規制で各国政府が迅速な対応をとるのを遅らせたくらいだ。これまでEUは、強い財政ルールで参加国の経済政策に制約を加えてきた。
3月中旬に、やっと財政規制を緩和した。各国政府は、これで財政措置などを取れるようになった。
コロナウィルス問題が過ぎ去ったあと、EUがこれまでの形で存続しうるとは思えない。
WHOも、いまの体制のままでは存続できないだろう。1月末の段階で、緊急事態宣言は必要ないとし、かつ「不必要に人やモノの移動を制限する理由はない」とした。あの時点で中国からの旅行客を制限できていたとすれば、事態はまったく違うものになっていただろう。
◇ 日本人はまだ深刻さに気付いていない?
日本では、これまで何とか爆発的な拡大を抑制できている。しかし、これを今後も継続できるのかどうか、まだ保証がない。
検査が十分でなく、症状を発していない感染者が多いだけではないかという指摘がある。
そして本当にオーバーシュートが起きてしまうと、病床数が不足してしまうとされている。そうした状況に陥らないことを心から願うしかない。
そうした状態にあるのに、「格闘技イベント「K―1」が3月22日、さいたま市で開かれた。
タイでは、格闘技「ムエタイ」の競技場で、コロナの集団感染が発生した。感染者は128人と、タイ全体の約2割に上ったと報道されている。同じことが、日本でも起こらないとは言えない。
日本の感染増加の状況が欧米に比べれば緩やかであることから、油断が広がっているのではないだろうか?
3連休には、花見客が公園に押し寄せた。
コロナの恐ろしいところは、感染しても発症しない人が多いため、平気で出歩いて感染を広げていることだ。先日の3連休の結果はまだ明らかになっていない。
◇ 日本の株価対策は宇宙人向けのものか?
こうした状態にあるのに、1時落ち込んだ株価は、再び反発している。
アメリカの#コロナ感染者数 が世界1になったのに、ダウ平均 は続伸した(その後、大きく反落)。日本でも、感染第二波 が到来するというのに、日経平均は上昇した。株式投資をする人は、不死身の宇宙人なのかと思ってしまう。
日本で株価が上昇するのは、日銀がETF購入で株価を支えているからだ。
しかし、人々は、いま資産の構成を、リスク資産から安全資産へと大きく変化させようとしている。そして、その行動には必然性がある。
この行動を止めようと努力しても、まったく無意味なことだ。
日銀がいま全力をあげるべきは、流動性の供給なのだ。
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