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「発想力トレーニング」番外編:日曜大工

『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書、2019年9月)では、「発想力トレーニング」というものを提案しています。

 発想のためには、つねに発想を続ける「現役」であることが必要ですが、その実行は容易なことではありません。
 そこで、「毎日できる簡単なトレーニングをしよう」というのが、「発想力トレーニング」の提案です。
 運動選手が、毎日トレーニングするのと同じことです。
 その具体的な内容は、『AI時代の「超」発想法』の各章の最後に提案してありますので、ご覧ください。

 ここで述べるのは、「発想力トレーニング」の番外編です
 発想力トレーニングとしては、本書に紹介したもの以外に、いくつかのものがあります。

 その第1は、日曜大工や庭仕事です。 
 園芸というと、「種をまいて水をやり、花を育てる」というイメージが強いのですが、実際にやっている作業は、工事や工作が多いのです。
 様々な構造物や仕掛けを作る必要があるのですが、「それを手持ちの材料でできるか?」を考えなければなりません。

 このために、さまざまな工夫が必要になります。
 つまり、自動的に発想のトレーニングを強いられていることになります。

 しばしば必要になるのは、柱などを固定する作業です。
 塀や建物などの固定した構造物に、紐や針金で括り付けるのが普通のやり方でしょう。私もそうしていました。
 しかし、ある時、固定している構造物と構造物の間に木片などを挟んで固定するほうが確実であることに気がつきました。
 つまり、「引っ張る」ことで固定するよりは、「押して」固定するほうがよいということです。
 「引いてだめなら、押して見よ」と言うとおりです。

 気がついてみれば、これは昔から行われてきた方法です。
 アーチ式構造物がそれです。
 ローマ時代の壮大な水道橋も、教会のドームもアーチ式構造物です。
 現在では、アーチ式のダムがそうです。

 ケンブリッジ大学には、ニュートンが作ったと言われる「くぎを一本も使わずに作った橋」(数学橋)というものがあります。

 橋の場合には、両岸で支えることができるわけですから、その間にアーチ式構造のものを作って「押せば」よいわけです。

 こうしたことは昔から知っていたのですが、それを日常的な日曜大工に応用できることに気づきませんでした。

 固定観念からの脱却が重要だと感じる時もあります。
 私は庭に自動水やり装置をセットしてあるのですが、水やりタイマーが故障してしまいました。買い替えなければと思いつつ、時間がなくて放置していたのですが、ある時、「タイマーを使わずに直接水道に接続しておいて、必要な時に水道栓をひねればよいのだ」と気づきました。やってみると、これは大した手間ではありません。
 自動水やり装置で実際に重要なのは、タイマーではなくて、途中の配管が詰まらないようにすることなのです。

 自動水やり装置はタイマーとセットで販売されていることが多いので、「タイマーを使わなければならない」という固定観念に取り憑かれていたわけです。
 「発想のためには固定観念から脱却せよ」と言いつつ、自分自身が固定観念に落ち込んでいました。

 道具や部品等の保管も、難しい問題です。
 作業台の上に置き放しにしていると、これらで一杯になってしまって、作業するスペースがなくなってしまいます。
 これを解決する最も簡単な方法は、作業台の横に「トレリス」(あるいは「ラティス」:格子状に板が張られたフェンス)を置き、そこに道具などを差し込んでおくという方法です。
 フックを使って格子にかけるのが確実ですが、そうせずにただ差し込むだけで十分です。
 この方法に転換してから、作業能力が上がりました。




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