日本経済最前線

日本経済の長期的な経済成長率はどのくらいか?

◇ 長期的にはゼロ成長になる可能性が高い
 日本の長期的な経済成長率を評価してみよう。
 まず実績を見ると、2012年から2018年における実質GDPの年平均増加率は、1.16%だ。
 OECDの長期予測は、この程度の成長率が今後も続くとしている。しかし、それが実現できるかどうかは、大いに疑問だ。

 日本経済は、今後、労働力の減少に直面する。
 仮に年齢別の労働力率が不変であるとすると、2020年において63,734千人である労働力人口は、2040年には53,531 千人となり、さらに2060年には43,026千人となる。
 これは年率でいうと、マイナス0.9%程度の減少だ。

 経済成長率は、労働力のほか、資本ストックとTFP(Total Factor Productivity:全要素生産性)によって影響される。
 これらについての予測は難しいが、資本ストックについては、投資が更新投資だけに留まり資本ストックは不変であるとしよう。すると、経済成長に対する寄与はゼロだ。

 したがって、TFPの成長率が1%でも、実質ゼロ成長ということになる。

◇ 政府の長期見通しは、楽観的
 中長期の経済財政に関する試算(財政収支試算では、つぎの2つのケースを想定している。

(1)「成長実現ケース」では、2023年頃から実質2%程度の経済成長が続く。消費者物価上昇率は2%程度だ。
 ここでは、TFP上昇率が、1.2%程度まで上昇するとされている。

 財政面では、PB(プライマリー・バランス)は、2025 年度に対 GDP 比で 0.4%の赤字となり、2026 年度に概ね収支均衡する。公債等残高対GDP比は、期間内において、安定的な低下が見込まれる。

(2)「ベースラインケース」では、2023年頃から実質1%成長の経済成長が続く。消費者物価上昇率は1%未満だ。
 ここでは、TFP上昇率が 0.8%程度 で推移とされている。

 財政面では、PB赤字対GDP比は、2025 年度に 1.2%となり、期間内の PB 改善は緩やかなものにとどまる。公債等残高対GDP比は 2020 年代半ば以降、下げ止まる。

◇ 労働力の見通

 重要なのは、労働力の見通しである。
 財政収支試算のどちらのケースも、「平成 30 年度雇用政策研究会の報告書」(2019 年1月 15 日)を踏まえている。

(1)「成長実現ケース」は、「経済成長と労働参加が進むケース」の労働力需給推計を用いている。ここでは、つぎのように想定されている。
 ・25-44 歳女性の労働参加率は、2018 年度の 79%程度から 2028 年度の 88%程度まで上昇。
 ・65-69 歳男性の労働参加率は、2018 年度の 59%程度から 2028 年度の 66%程度まで上昇。
 ・65-69 歳女性の労働参加率は、2018 年度の 38%程度から 2028 年度の 47%程度まで上昇。

 2040年における労働力人口は、6195万人となる。

(2)「ベースラインケースでは、「経済成長と労働参加が一定程度進むケース」の労働力需給推計を用いている。ここでは、つぎのように想定されている。
 ・25-44 歳女性の労働参加率が、2028 年度の 87%程度まで上昇。
 ・65-69 歳男性の労働参加率は、 2028 年度の 61%程度まで上昇。
 ・65-69 歳女性の労働参加率は、2028 年度の 43%程度まで徐々に上昇。

 2040年における労働力人口は、5846万人となる。

(3)なお、「経済成長と労働参加が進まないケース」では、 2040年における労働力人口は、5460万人だ。
 これは、上で述べた「年齢別の労働力率が不変である場合」とほぼ同じだ。

(4)特定技能の在留資格に係る外国人労働者の受入れが 2019 年度~2023 年度の5年間で 34.5 万人程度拡大するとされている。

 なお、https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2019/209.htmlも参照。



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