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『ChatGPT「超」勉強法』 全文公開: 第4章の1

『ChatGPT「超」勉強法』(プレジデント社)が3月15日に刊行されました。
これは、第4章の1全文公開です。

第4章 外国語の勉強が根底から変わる

1 外国語の教師はもう必要ない?

競争相手は、自分たちよりはるかに優秀
 ChatGPTの出現は、外国語の教師にとって重大な脅威だ。ChatGPTは、どんな人間の教師よりもはるかに優れた語学の教師だからだ。
 まず、どんな外国語に関しても、人間の教師が知っているより多くの言葉や表現を、ChatGPTは知っている。そして、個々の学生の個別の質問に答えてくれる。しかも、いつでもどこでも使え、納得がいくまで尋ねることができる。それに、教えてもらうためのコストは、基本的にはゼロだ。
 これでは、人間の外国語教師にはとても勝ち目はない。だから、いますぐ外国語の教育がすべてChatGPTに置き換えられてしまっても、少しも不思議はない。
 このような大きな変化は、外国語教育の歴史上、初めてのことだろう。ChatGPTの勉強への利用を考える場合、外国語の勉強への利用が最大の焦点だ。
 そもそも、外国語の勉強に対するChatGPTの影響は、勉強の中で最大であるだけでなく、企業での利用などを含めたあらゆる分野の中で、最も大きなものの一つだ。ChatGPTが職業別にどのような影響を与えるかの研究調査がいくつも行なわれているが、それらの多くが、外国語教師が最も大きな影響を受けるとしている。
 なお、外国語の中でも英語の重要性は圧倒的に高い。そこで、本章では、英語を念頭に議論を進める。ただし、同じことが他の言語についてもいえる。本書では、「外国語」と「英語」という言葉を厳密に区別せずに用いている。

大規模言語モデルは、本質的にマルチリンガル
 ChatGPTは言語を使うための仕組みだ。したがって、言語を扱う仕事にきわめて大きな影響を与えるのは当然だ。
 ChatGPTの基礎になっているのは、「大規模言語モデル(LLM)」と呼ばれるAIのモデルだ。これは言語を操ることを目的とするAIである。そして、AIにとっては、日本語も英語も区別はない。本質的にバイリンガル(正確にはマルチリンガル)だ。外国語への翻訳や外国語からの翻訳に関して、大規模言語モデルは、もともときわめて強力なのである。だから、外国語の教育においてChatGPTが人間の教師よりはるかに能力が高くなるのは、当然のことだ。
 多くの場合において、翻訳者や外国文学の専門家など、外国語の高度な専門家の能力と比べても遜色がない。こうした強力な競争相手の出現に、外国語教師はどのように対応することができるだろうか?

いますぐにでも外国語教育をChatGPTに切り替えられる
 他の分野でChatGPTを使おうとすると、何らかの問題が発生する。とくに大きいのが、第2章で述べたハルシネーション現象によって、誤った答えが出力される場合があることだ。だから、ChatGPTの出力をそのまま使えないことが多い。外国語に関する利用においても、ハルシネーションがまったくないとはいえない。しかし、翻訳や要約などに関しては、ほとんどない。少なくとも、私が使った限りでは、これまでなかった。
 第2の問題は、役に立つ出力が得られるかどうかだ。「ChatGPTをアイディア出しに使う」ということがよくいわれる。第2章の5で述べたように、これはハルシネーションにあまり影響されないという意味で、安全な使い方だ。しかし、本当に役に立つアイディアが得られるかどうかは疑問だ。それに対して、外国語の場合の出力は、明らかに役に立つ。
 第3の問題は、通常は、ChatGPTの導入にあたって何らかの準備が必要になることだ。例えば、企業がマーケティングにChatGPTを使う場合には、企業のデータシステムをそれに合わせて構築し直す必要がある。
 ところが、外国語教育にChatGPTを使うには、ほとんど準備が要らない。必要な機器があれば、すぐにでも外国語教育をChatGPTに切り替えることができる。

外国語の専門家には深刻な影響
 外国語の勉強に関する条件は、ChatGPTの登場によってまったく変わった。このことは、外国語の専門家に対して深刻な影響を与えるだろう。
 第1に、翻訳家の仕事が減少する。文学作品などの翻訳は残るだろうが、事務的な文書の翻訳の必要性は激減するだろう。
 第2に、外国語を専門的に勉強する学生の数が減ると考えられるので、とくに私立大学の経営に大きな影響を与えるだろう。そして外国語の教師に対する需要が減る。
 外国語の教師にとっては、二重の意味で深刻な事態だ。一方では、外国語の勉強をChatGPTが手助けする。他方では、外国語を勉強する必要性が減る。この2つの理由で、外国語の教師に対する需要は減少することになるだろう。本章の6で述べるように、外国語の勉強は依然として必要だが、人間の教師は不要になるのだ。

シンボル・グラウンディングで外国語の勉強を進めていく
 これまでの自動翻訳は、与えられた文章を訳すだけだったので、勉強に用いるのは難しかった。ところが、ChatGPTは会話をすることができるので、それを通じて外国語を勉強し、能力を高めていくことができる。
 対話を続けることによって勉強するのは、言葉を学ぶ最も自然なプロセスだ。人間は誰もが、生まれた直後から、周りの人たちとの言語コミュニケーションを通じて自国語を勉強していく。これは、第2章の4で述べた「シンボル・グラウンディング」だ。それに似たプロセスを実現できる。言葉を学ぶ仕組みにおいて、これまでなかった新しいプロセスが誕生したのだ。まさに革命的な変化だ。
 具体的な対話のやり方としては、様々なものがある。最も効果的な方法は、3つだ。
 第1は、丸暗記法に使う文章を、ChatGPTに教えてもらうことだ。これについて、本章の2で説明する。
 第2の方法は、ChatGPTに英文の翻訳や要約をしてもらい、それによって意味を捉えてから、英文を丸暗記することだ。その具体的な方法を、本章の3で説明する。
 第3は、自分の専門分野について英語で文章を書き、それをChatGPTに直してもらい、より適切な表現を教えてもらうことだ。そして、その文章を丸暗記する。その具体的な方法を、本章の4で説明する。




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