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『入門 米中経済戦争 』:全文公開 第6章のまとめ

『入門 米中経済戦争 』(ダイヤモンド社)が11月17日に刊行されました。
これは、第6章のまとめ全文公開です。

第6章のまとめ

・中国では国家によるハイテク企業の規制が強まり、アリババなど巨大IT企業の事業環境が急激に悪化している。これによって資金調達が難しくなって技術開発が遅れるので、中国の経済発展には明らかにマイナスだ。

・中国当局による規制強化の原因として、つぎのようなことが考えられる。
 共産党の支配確立、国民の不満への対処、情報の国外流出への対処、中国企業のアメリカ市場におけるIPOの規制。
 いま起きているのは、第3次天安門事件と言えるほどの大きな変化だ。

・中国共産党は、「共同富裕」を政策目的に据え、企業に寄付を求める方向を打ち出した。格差是正のためには、本来は税制を活用すべきだが、それができないからだ。
 民主主義国家では寄付が十分か否かを判断するのは市場だが、中国では国(共産党)が判断する。したがって、企業をコントロールする手段として使われる。企業や富裕層がこれに怯えるのは、十分理由がある。中国に対する投資は重大な転換点を迎えた。

・アメリカも中国企業の米市場での上場を望んでいない。したがって、米中金融デカップリングが進展する可能性がある。これは、計り知れないほど大きな悪影響を中国経済に与えるだろう。

・他方、中国への資金流入が増加しているので、中国IT企業の外国市場への上場が減っても、影響は少ないとの見方が可能かもしれない。中国共産党は、それに自信を深めて、さらに規制を強化するかもしれない。

・米中両政府とも、巨大IT企業への富の集中が限度を超えたという認識をもっている。しかし、アメリカでは政策の実行までに時間がかかる。それに対して、一党独裁国家の中国では、最高指導者が望む政策を直ちに実行できる。長期的成長のためにどちらがよいのか、いま歴史的実験が始まっている。



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