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『ChatGPT「超」勉強法』 全文公開: 第4章の4

『ChatGPT「超」勉強法』(プレジデント社)が3月15日に刊行されました。
これは、第4章の4全文公開です。

4 話す訓練より、書いて聞く訓練を:丸暗記法の(3)

英語を「話す」訓練は必要ない。「聞く」訓練こそが重要

 文部科学省は、2023年7月、中学高校の英語教育において、対話型AIを用いて「日本の生徒が苦手とする英語で話す力の底上げを目指す」という方針を発表した。
 私は、この方針は間違っていると思う。その理由は2つある。
 第1の理由は、実際の場面では、英語を「話す」ことより、「聞く」ことのほうがはるかに重要であることだ。
 例えば、英会話の参考書には、外国の町で道が分からなくなったとき、「駅に行く道を教えてください」などと聞く例文が載っている。しかし、この例文に従って質問をしたとしても、答えが、猛烈な速さの分かりにくい言葉で返ってくる場合がある。それを理解することができなければ、質問できたとしても意味がない。つまり、重要なのは、「正しく聞けること」なのだ。
 答えを正しく聞けるなら、正しい英語の疑問文でなく、“Station? Station?”と叫ぶだけでもいいかもしれない。そうしたほうがずっと役に立つ。留学生の生活を考えてみても、聞くことの重要性は明らかだ。一日のほとんどは、本や論文を読むことに費やされる。残りの時間は、教室で講義を聞いている。そして、自分から話をするような機会は、ほとんどない。

完全に聞ければ、自動的に話せる

 文部科学省の方針が間違っていると考える第2の理由は、「完全に聞くことができれば、自動的に話せるようになる」ことだ。
 そんなことは信じられないという人が多いかもしれない。しかし、これは間違いない。うまく話せないのは、聞いて理解できないからなのだ。「聞いたことを完全に理解できるのに、自分からは話せない」という状況は、まず考えられない。それにもかかわらず、日本人には、英語を聞く練習を忘れて、ただ「英語を流暢に話したい」と考えている人が多い。
 オンラインの英会話個人指導というものがある。フィリピンなどの人たちとオンラインで会話をするものだ。しかし、こうしたことをいくらやっても、英語を話す力はつかないだろう。
 本章の2で述べた方法で音源を探し、それを完全に理解できるようになるまで何度も聞く訓練をするほうが、はるかに効率的だ。以下では、もう一つの効率的な方法を提案する。

ChatGPTの添削も説明も実に的確

 自分がやっている仕事に関して必要な英語の文章をウェブから探してくるのは、簡単ではない。しかし、ChatGPTに手伝ってもらえば、自分で作ることができる。英語の文章の添削を頼んで、直した文章を暗記すればよいのだ。これによって、英語を書く訓練と、話す訓練が同時にできる。しかも、自分にとって必要な表現を学ぶので、興味を失うことがない。
 ChatGPTと会話を進めることによって、これができる。その具体例を以下に示そう。
 最初に私から、「つぎの文の文法や表現について間違いを指摘し、どこが間違っているかを説明し、どう直せばよいかを指摘してください」として、つぎの文を示した(これは、わざと間違えた文だ。私はこんな奇妙な文は書かないので、念のため)。

“Japan economy now is not good. Stock rise but price rise too. Wage not rise.”

 これに対して、ChatGPTから修正提案があり、私がそれに対してさらに修正するということを数回行なった。そして、最終的には、つぎのような文になった。

“The economy in Japan is not good right now. Although stock prices are rising, the cost of living is also increasing. However, wages are not rising.”

theの使い方を直してくれる

 この過程で、ChatGPTの指導は実に的確だった。とくに重要なのは、“the”の使い方について適切にアドバイスしてくれたことだ。
 日本人が英語を書く場合に最も難しいのは、theの使い方だ。日本人が書いた英語を見ると、この誤りがきわめて多い。theの使い方が難しいのは、明確なルールがないからだ。これについては、『超「超」勉強法』第3章の4で詳しく書いた。ネイティブスピーカーに聞くと、間違っているところを指摘してくれるのだが、なぜ間違いなのか、ルールはどうなっているのかを問いただしても、明確な答えが返ってこない。しかし、間違いは間違いなのだ。
 これまで、この問題を解決する方法はないと思っていたのだが、ChatGPTが誤りを修正してくれるようになった。しかもその修正は、正しいと考えられる。これによって日本人が英語で正式な文章を書く際に、ネイティブスピーカーに頼らなくても済むようになった。これは、たいへん大きな変化だ。




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