企業利益はこれからどうなる?
2016年から17年にかけての企業活動は好調だった。その大きな理由は円安が進んだことだ。
「為替レートで振り回される企業利益」で述べたように、日本の企業活動は、為替レートで大きく左右される。
2015年の秋からは円高が進行した。後で見るように、この期間には、企業の売上高も利益もあまり好調でなかった。
ところが、下図に見るように、円ドルレートは16年9月の1ドル 102円をピークとして、その後は円安になった。
とくに、16年11月には、アメリカ大統領選でトランプ氏の勝利が決まり、積極的な財政政策で金利が上昇すると期待されたために、急激なドル高、円安が生じた。
その後は、1ドル110円程度の水準が、いまに至るまで続いている。
円安が進んだために、企業活動が活発化した。
まず、輸出が増えた。14年中ごろから16年中ごろまで停滞していた輸出が、図2に見るように、16年秋ごろから増加した。
図1 実質輸出の推移(単位:10億円)
また、図2に見るように、設備投資がかなり顕著に増えた。
図2 実質民間設備投資の推移(単位:10億円)
図3に見るように、16年秋以降は、企業の売上高も増加した。
図3
そして、図4のように営業利益も増加。
図4
ところで、こうした状況が将来にわたって継続するとは限らない。
「製造業景況感悪化は、原材料高を転嫁できないことでなく、外需の減少による」で述べたように、企業の景況感は、すでに変わりつつある。
将来を見た場合、とくに問題なのは、下記の諸点だ。
1.為替レートがどうなるか?円安が進む過程では物価が上がるので、企業にとっては好都合だが、為替レートが安定してしまうと、その効果がなくなる。さらに、仮にリスクオフの影響で円高になれば、事態は大きく変わる。
2.米中貿易戦争がどうなるか?
トランプ大統領の強硬姿勢は、脅しに過ぎないと考えられていたのだが、意外な展開を見せている。実際に貿易戦争がエスカレートする危険がある。 日本にとっては、自動車に高率関税を課される危険があること、中国に対する部品等の輸出が減少するという問題がある。
3.図5に示すように、消費支出は依然として停滞したままだ。消費主導型の経済成長を実現できるかどうかが、日本経済の最大の課題だ。
図5 実質民間最終消費支出の推移(単位:10億円)
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