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『「超」創造法 』生成AIで知的活動はどう変わる?

『「超」創造法』 生成AIで知的活動はどう変わる?(幻冬舎新書)が9月27日に刊行されました。
これは、第12章の4全文公開です。

4 新しい仕事が生まれる

新たな就業機会が生まれる

 「AIによって代替されない仕事がある」と述べました。実は、可能性はこれにとどまりません。新しい仕事が生まれ、新しい就業機会が現れる可能性があるのです。
 IT革命の場合もそうでした。ITの進歩が、さまざまな仕事を消滅させたことは事実です。町の書店はアマゾンによって客を失いました。また、新聞社や出版社は構造不況に陥りました。文章の執筆者もそうです。
 しかし、他方で多くの新しい仕事が生み出されました。とくに重要なのは、デジタル技術の専門家に対する需要が増加したことです。日本はいまだにこの問題に対処できないでいます。
 AIの導入についても、同じ問題が起きるでしょう。さまざまな分野にAIを導入するには、そのための専門家が必要です。日本の場合、専門家の不足がネックになって導入が進まない危険があります。

労働力のミスマッチに対処する

 日本は経済全体として労働力が不足するので、以上で述べたことは人手不足緩和というポジティブな結果をもたらすでしょう。とくに介護分野においては、高齢化に伴って要介護人口も増えるので、人手不足はきわめて深刻なものになります。これに対処するために、前記のような技術の導入は、大きな役割を果たすでしょう。
 ただし、全体としてうまくいく保障はありません。部門間の労働力のミスマッチがあるため、それを解消するには、労働力が組織間を自由に移動できるような条件が整備されていなければなりません。

仕事は残っても、人間のやることが変わる

 前節で述べたように、仕事そのものが残っても、人間が行なうべき仕事の内容は変わるでしょう。つまり、どの分野においても、必要とされるスキルが変わるのです。これにどう対処するかが重要です。
 必要とされるスキルは、デジタル機器を扱えることだけではありません。AIにはできず、人間でしかできないことが、これまでより強く人間に求められるのです。このことが最もはっきり現れるのが、「先生」という職業でしょう。第10章で述べたように、知識を教えるだけでなく、生徒や学生とうまくコミュニケーションをとり、彼らの気持ちをよく理解できることが重要になります。
 同じことが、弁護士や医師についても言えるでしょう。したがって、「若い人なら対応できるが、高齢者にはできない」ということではありません。むしろ、逆の場合のほうが多いかもしれません。

人間でなければできない仕事の価値は上がる

 右に述べたように、人間でなければできない仕事が残ります。そして、AIが遂行できる分野で効率が上がれば、人間にしかできない仕事の中で、これまでよりも価値の高まるものが必ずあるはずです。
 文章執筆の仕事が、AIによって奪われるという見方があります。文章執筆者にとってAIは敵だという考えです。しかしAIが敵になるか味方になるかは、文章の内容や水準によって大きく違います。
 AIが書けるような文章を書いている人々にとって、AIは明らかに脅威になります。しかし、他の人が書けない文章や新しい発想、新しい見方、新しい考え方を提供できる人にとっては、AIは決して競合者にはならず、むしろよい協力者であり、強力な味方になります。結局、AIが敵になるか味方になるかは、どのような文章を書いているかによるのです。
 「どこに人間の仕事の価値を見出していくか?」を問い続けることが必要です。そうした仕事を見出し、それに特化する個人や企業が、これからの社会において成長するでしょう。
 このようなプロセスを通じて、質の低い文章が淘汰され、全体としての文章の質は向上していくことが期待されます。そうしたことを実現するために望まれるのは、読者が質の高い文章を求めることです。これについては、6で述べます。


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