「超」書く技術 : 全文公開 第1章の4
『「超」書く技術 』150字で人生を変える (プレジデント社)が4月20日に刊行されました。
これは、第1章の4の全文公開です。
■04 まず150字の文章をきちんと書く
●文章には3種類のものがある
文章には3種類のものがあります。150字の文章、1500字の文章、そして10万字の文章です。
150字の文章は、ツイートや短いメールです。通常は、3個から4個程度の文章から構成されます。大学入試で文章を書くことが要求される場合がありますが、その長さは、通常この程度のものです。
1500字は、まとまった考えを伝える論述や報告書などです。新聞の社説がこの程度の長さです。また雑誌や週刊誌の1ページが、ほぼこの程度です。大学入試で長文読解が要求されることがありますが、その長さは通常この程度のものです。
仕事上でも、メールの長さ程度の文章ではなく、もっと長い文章が必要になる場合があります。それらについては、メールを書くのとは違った注意が必要です。
10万字は、1冊の書籍です。
なお、150字、1500字、10 万字というのは、目安にすぎません。実際には、かなりの幅があります。「1500字の文章」といった場合、1500字から3000字程度の間でさまざまな長さのものがあります。
なお、本来であれば、句点(。)で区切られた単位と、それらが集まって構成されるものを区別して、別の名で呼ぶべきでしょう。しかし、煩瑣になるので、本書では、いずれも「文章」と呼ぶことにします。
●150字の文章は、あらゆる文章の基礎
150字の文章を正しく分かりやすく書くことは、どんな長さの文章を書く場合にも重要なことです。これが、文章を書く基礎技術になります。
400字程度までの文章であれば、150字の文章をただ並べるだけで作ることができるでしょう。150字の文章をどのように並べるかは、あまり大きな問題ではないのです。
しかし、1500字程度になると、こうはいきません。150字の文章をどのように並べていくかが、大きな問題になるのです。
最初に結論を示すのがよいのか? あるいは、最初に問題提起をし、順に論議を進めたあと、最後に結論を書くのがよいのか? また複雑な論議を進める際に、それをどう説明するか? などが問題となります。
つまり、150字の文章を単に思いつくままに並べても、1500字の文章を作ることはできないのです。それらを、正しい順序で並べていく必要があります。
10万字の文章は1500字の文章から構成されることになりますが、ここでは、1500字の文章をどのように並べて全体の構成を作るかが問題となります。
ただし、本書においては、150字の文章を書く問題に集中し、1500字や10万字の文章をどう書くかという問題は、扱わないことにします。
つまり、「伝えるべき内容をいかに構成するか」という問題については述べません。この問題については、拙著『「超」文章法』(中公新書、2002年)、『書くことについて』(角川新書、2020年)を参照してください。
●44字の文章が人生を変える
「本書では150字の文章を中心に説明する」と言うと、「そんなに短い文章では、重要なことは何も書けない。重要なことを伝えるには、もっと長い文章が必要だ」と考える方がいるでしょう。
私自身、そう考えていたことがあります。ツイッターが利用できるようになった頃、140字の制限ではたいしたことは書けないと思い、しばらくの間、無視していたのです。
しかし本当にそうでしょうか? 新約聖書にある次の文章を見てください(この文章は、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』のエピグラフとして引用されています)。
一粒の麦、もし地に落ちて死なずば、ただ一つにてありなん。もし死なば、多くの実をむすぶべし。
(ヨハネ伝、第12章)
この文章が何字かを数えたことがなかったのですが、いま初めて数えてみて、わずか44字しかないことに驚きました。私は漠然と、数百字の文章だと思っていたのです。
わずか44字であるにもかかわらず、この文章のなんと力強いことでしょう。
この文章は、人生の進路を変えさせるほどの力を持っています。この教えを知ったために人生の重要な局面で異なる決断をした人は、数え切れないほどいるはずです。
ツイッターの文字制限のわずか3分の1弱の文章で、これほど強力なメッセージを送ることができるのです。
・セブンネットから購入できます。
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