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「超」時間管理法(2) 時間の「見える化」が必要


 時間の管理は、難しい課題だ。なぜなら、「時間」は、目に見えないし、手で触ることもできない抽象的なものだからだ。
 
 そこで、多くの人は、時間をなんらかの物理的な対象に置き換え、それを頭の中に図形的なイメージとして思い浮かべることによって、把握している。
 つまり、時間の広がりを「空間の広がり」に置き換えて把握しているのである。「見える化が必要」と言われることが多いが、時間こそは、「見える化」の必要性が最も高い対象だ。

◇ 1日の時間帯は時計のイメージで把握する
 1日の時間帯については、多くの人は、壁掛け時計を見て、あるいはそれを頭の中にイメージとして思い浮かべて、把握している。
 例えば、「朝10時からの会合」というと、時計の10時の方向を思い浮かべる。そして、それとの関係から、家を出る時間を逆算したりする。

 こうすることで、1日のタイムマネジメントを頭の中で行なうことができる。「頭の中だけで操作できる」という点が重要だ。それによって、例えば「面談が長引きすぎたら途中で切り上げる」といった対応ができる。

(このイメージづくりのために用いられるのは、いわゆる「アナログ時計」である。つまり、長針と短針が回転する時計だ。これだと、一瞬のうちに時刻を把握できる。
 「ディジタル時計」だと、時間の把握が難しい。例えば、試験会場で、「終了まであとどのくらいあるか」といったことが、一瞬のうちには捉えられないのだ。引き算の計算をしなければならない。
 「ディジタル時計」があまり普及しなかったのは、こうした問題があるからだろう)
 
◇ 予定が1週間単位で繰り返される場合は、1週間単位の手帳のページを思い浮かべる
 問題は、1日を越える時間帯の把握だ。
 これについても、何らかの物理的な対象を思い浮かべ、空間的な広がりとして把握している人が多い。
 予定が1週間単位で繰り返される人は、1週間単位の手帳のページを思い浮かべているはずだ。

 例えば、毎週決まった曜日の番組を担当するテレビのディレクターであれば、「何曜までに**を完了する」というように、スケジュールを曜日で把握しているはずである。 
 会社での仕事の多くも定例曜日で決まった予定が多いから、曜日でのスケジュール管理が多いだろう。例えば、「定例会議は毎月2週の水曜日だから、資料は第1週の金曜までに作る必要がある」というように。

 仕事が1週間単位で繰り返される人は、これで十分だ。その典型は、学生の生活である。講義は1週間単位で繰り返されているから、例えば「サークル活動は、ページの下のほう(週の後半)に置く」といったイメージで計画ができる。

◇ 7個を超える対象は、一瞬のうちには把握できない
 ところが、現在のわれわれの活動は、1週間単位の計画だけでは、とてもカバーしきれない複雑なスケジュールに従っている。

 例えば、私の場合、毎週締切がある連載原稿が2本ある。これらについては、上のような「週単位のイメージ」で管理できる。「締め切りの前の週の中頃までにテーマを決め、週末にかけて資料収集と執筆」というスケジュールを毎週繰り返せばよい
 ところが、私のやっている仕事は、これだけではない。まず、単発的な原稿の依頼がある。また、講演も不定期で依頼が来る。これらについての準備は、連載原稿のように定期的なスケジュールで処理するわけにはいかない。
 さらに、単行本の仕事がある。資料収集、執筆、ゲラの校正などについて綿密なスケジュールを組んでおかないと、作業に十分な時間をあてることができない。

 これらさまざまに異なる周期(期間)の仕事が同時並行的に進行している。それらの中には、完了させるのに数か月、数年を要する仕事もある。

 このように、現代に生きるわれわれは、1週間を超える時間帯をコントロールしなければならない。しかし、この時間帯について、「頭の中にはっきりしたイメージを描く」のは、決して容易なことではない

 なぜなら、一般に、人間は7個を超える対象を一瞬のうちには把握できないからだ(これは、magical number of seven と呼ばれる心理学の法則である)。
 1月の日数はこれを越えているために、一瞬のうちに把握することができない。だから、スケジューリングに失敗するのである。

 スケジューリングとは、実に難しい作業だ。
 農耕時代には、季節の移り変わりに応じて作業を進めていけばよかった。しかし、現代に生きるわれわれは、それとは比較にならぬほど込みいった複雑なスケジュールを、こなしていかなければならない。
 「これは、人間の能力を超える作業なのではないだろうか?」と思うことがしばしばある。

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