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『プア・ジャパン 気がつけば「貧困大国」』 全文公開:第1章の2

『プア・ジャパン 気がつけば「貧困大国」』 (朝日新書)が9月13日に刊行されました。
これは、第1章の2全文公開です。

2 ビッグマックもラーメンも、外国では高い

アメリカのビッグマックの値段は、日本の2倍
 外国製のものの価格が高くなっているとは、暫く前から言われていたことだ。
 最もよく知られているのは、英誌『エコノミスト』が発表する「 ビッグマック指数」だろう。これは、「ビッグマック価格がアメリカと等しくなる為替レート」に比べて、現実の為替レートがどれだけ安くなっているかを示すものだ(数字が低いほど、 購買力が低い)。
しかし、これは分かりにくい概念だ。この指数よりも、「ある国のビッグマック価格を日本円に直すといくらか」を見るほうが、直感的に分かりやすい。
 2022年7月時点での各国のビッグマックの価格を日本円に換算して見ると、図表1-1のようになる(1ドル=143・3円で換算)。


 日本では390円だが、1位のスイスは949円であり、「法外な値段だ」と感じる。アメリカは738・1円で、日本の1・9倍になる。イギリスやドイツも、日本よりだいぶ高い。
 中国が483円で、日本より2割程度高い。
21年6月には日本より安かったのだが、ついに中国のほうが日本より高くなってしまった。韓国の463円も、日本より高い。

ニューヨークのラーメンは、一杯3000円!
 最近では、外国でのラーメンの価格が高いと話題になっている。
 2023年2月3日の朝日新聞によると、ニューヨークでは1番安くて一杯18ドル(約2300円)。さらに、アメリカではラーメンでもチップが必要で、それを加算しなくてはならない。チップの習慣に慣れていない日本人には高さが余計身に染みる。チップや税金を含めると約3000円になる。
 こうした記事が、ウェブに数多く掲載されている。ロサンゼルスでは、一杯2000円。それでも、長い行列ができるという。
 それに対して、日本では700円程度、原材料の高騰で30 円から40円程度値上がりしたが、いくら高くてもアメリカの価格にはならない。

窓がないと、世界の状況が分からない
 以上で述べたのは、これまでも静かに進行していた現象だ。長年にわたって、日本人は自国の内部に閉じこもり、世界の変化に目を向けなかった。その結果、世界との差がどんどん広がってしまった。気づいたときには、あまりに大きな変化が起きていたことが分かり、愕然とした。これが、私たちが今直面している問題の核心だ。
 この状況は、下降するエレベータに乗っているようなものだ。自分のいる高さは本当は下がっているのだが、エレベータに同乗している人たちとの相対的な位置関係は変わらない。だから、下がっているのが分からない。
 エレベータに乗っているとき自分がどこにいるのか分からないのは、外の世界との比較がないからだ。エレベータに乗っている人たちは、自分たちだけの世界に住んでいるように感じる。
 エレベータには窓がないから、こうしたことになるのだ。自分の位置を正しく知るには、エレベータに「窓を作る」必要がある。日本はいま、外の世界が見える窓を開けることが必要だ。


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