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『プア・ジャパン 気がつけば「貧困大国」』 全文公開:第1章の1

『プア・ジャパン 気がつけば「貧困大国」』 (朝日新書)が9月13日に刊行されました。
これは、第1章の1全文公開です。

第1章 気がつけば、「プア・ジャパン」

1 オーケストラもiPhoneも高くて手が出ない

外国オーケストラの公演には、もう行けない
 外国オーケストラの来日コストが上昇している※。
 大編成のオーケストラの場合、100人以上の人と楽器が移動する。円安が進み、航空運賃などが高騰しているため、経費が1億円以上増えているという。
 このため、あるコンサートでは、入場料を、当初2万8000〜1万2000円と発表していたが、チケット発売日の直前に、3万2000〜1万5000円に値上げした。
「一流オケの来日ツアーが、今後、激減するのではないか」と言われる。日本人の文化環境は著しく低下するだろう。
 これまでも、外国のオーケストラやバレエの日本公演のチケット代は高かった。ただ、「贅沢」とは思っても、チケットの価格よりは、座席を取れるかどうか、どの位置に取れるかの方が重要事項だった。しかし、一人3万円以上となれば、考え込んでしまう。
 新型コロナの感染拡大で、外国オーケストラやバレエ、ミュージカルなどの公演からは、この数年、足が遠のいていた。コロナが終わればもとのように行けると思っていたのだが、そうしたことはもうできないのかもしれない。そう考えると、なんとも情けない気持ちになる。
 私たちの世代の学生時代、外国のオーケストラやバレエを実際に聞いたり見たりすることなど、夢のまた夢だった。その後、日本が経済成長して豊かになり、外国のオーケストラやバレエを、日本で鑑賞できるようになった。また、現地まで出かけていってミュージカルを楽しむこともできるようになった。
 しかし、それも、つかの間のことだった。我々は、いま、日本が貧しかった時代に舞い戻ってしまった。円の 購買力が固定為替時代の水準に戻ってしまったから当然のことなのだが、それにしても、なんとにっくき円安だろう!
※「日本経済新聞」(2022年9月22日)、「朝日新聞」(2022年11月12日)  

iPhoneはもはや 高嶺の花
 高くて手が出なくなったのは、劇場のチケットだけではない。
 2022年9月、 アップルは iPhone14シリーズを発表した。日本での価格は、最も安いタイプが11万9800円、ProMaxは16万4800円だ。
 2021年9月にリリースされた iPhone13シリーズでは、最も安いタイプが9万9800円だったため、20%の値上げとなる。これは、9月1日に円が急落したことの影響だ。
 これに先立つ7月1日、 アップルは、日本での販売価格を引き上げていた。 iPhone13が11万7800円から12万6800円に、 iPhone13Proが14万4800円から16万6800円に値上げされた。これも円安の影響だ。
 一方、厚生労働省が発表した令和2年「賃金構造基本統計調査」によると、大学卒業者の賃金は、男女計で月22・6万円だ。
  iPhone14を、なんとか買うことはできる。しかし、ProMaxを買ってしまえば、食費も残らない。iPhoneは、普通の日本人にとっては、もはや高嶺の花だ。




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