超整理日記

超整理日記(第973号):資本主義は死んだのか?(その2)、及びコロナウィルスに見る中国の特殊性

◇中国の国家資本主義をどう評価するか
 利益を生み出す資本の性質が変わってきており、これまでのように機械・建物・土地のような物物的な資産が重要なのではなく、データや知識などが価値を生み出す新しい資産なり資本なりとして重要性を持ってきつつあります。これは、「データ資本主義:知識やデータが新しい経済価値を生み出す」で述べたとおりです。
 これが現代の資本主義に関して起こっている重要な変化の第1です。
 
 もう一つの変化は、中国の台頭です。
 中国は「改革開放」政策によって計画経済から市場経済に移行したことによって成功しました。
 ただし、国が強い力を持ち、また補助金などを通じて企業活動に影響与えています。
 これは「国家資本主義」と言われることがあります。
 
 この問題が、現代の資本主義に関して起こっている重要な変化の第2です。

 AIの進歩のためにはビックデータが必要であり、ビックデータを集めることに対して西側諸国では制約が強まりつつあります。
 ところが中国ではこうした制約が働かないために、ビックデータを集めやすいと指摘されます。そのため、AIの開発において有利な立場にある可能性があります。

 このようにして、AI時代においては、中国型の経済体制の方が自由主義経済よりも経済効率が良いのではないかという考え方が台頭しつつあります。

◇ 長期的に重要なのは自由な社会
 ただし長期的な経済成長にとって重要なのは、優秀な人材を確保でき、それらの人々が能力を発揮できるような環境を準備できることです。

 そのためには、人々が自由に能力を発揮できるような社会を作る必要があります。
 アメリカは、これまで世界の人々に対して、そのような機会を提供してきました。
 「それは白人に限ってのことではないか?」という意見があるかもしれません。
 しかし、そんなことはありません。
 「シリコンバレーのIT革命は、ICによって実現された」と言われます。ここでICとは、Integrated Circuitのことではなく、Indian and Chineseのことです。

 最近のIC大企業を見てもそうです。
 GoogleのCEOサンダー・ピチャイは、インド生まれでインド工科大学の出身者。マイクロソフトのCEOサティア・ナデラは、インド生まれで、マンガロール大学の出身者。4月にIBMのCEOに就任予定のアービンド・クリシュナもインド生まれです。

 中国のように個人の権利制約が加えられる社会が、優秀な人材を集めることができるかどうかには、大きな疑問があります。

◇ 武漢封鎖にみる中国の特殊性
 最近のコロナウィルス関連のニュースを見ていても、中国社会の特殊性が痛感されます。
 1月23日に、武漢は公共交通機関を閉鎖し、武漢を事実上閉鎖都市としました。
 1000万を超す人口の都市を封鎖するというのは、人類史上例のないことで、中国政府がきわめて強い権限をもっているから可能になったことです。これによって、ウィルスが他地域に拡散することを防止できると考えられます。
 これは、中国政府の持つ強い力の結果であったと考えることができます。

 しかし、他方において、情報提供の遅れが批判されています。中央政府の許可がない限り情報公開ができないという中国の特殊性によるものです。
 これは、中国の特殊性のマイナスの側面を示しています。

 コロナウィルスの感染者が増加していたにもかかわらず、大量の旅行客を日本をはじめとする世界に送り出し、その直後に1000万都市を封鎖するというのでは、落差が大きすぎます。
 欧米諸国や日本であれば、もっと早い段階で、より緩やかな措置が取られたことでしょう。

 WHOは、緊急事態宣言において、第1の側面のみを強調し、第2の側面にまったく触れていません。あまりにバランスを失した評価といえるでしょう。

 
◇ 井の頭公園に梅が咲き始めました

梅



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