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映画ほど素敵な世界はない

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映画がなかったら、生活はどんなに味気ないものになるだろう。家にいたまま夢の世界を見せてくれる情報技術に乾杯!
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#黒水仙

「黒水仙」も「静かなる男」も、イエーツも、原点が消滅した

 「リバーダンス」と言っても、ご存じない方が多いかもしれないが、これは、アイルランドの伝統的なダンスをベースにして創作された新しいタイプのダンスショーである。  1994年にダブリンで開かれたユーロヴィジョン・ソング・コンテストで幕間に行なった7分間の初公演が大反響を呼び、その後、独立した1つの作品に成長した。97年にグラミー賞を取り、「リバーダンス現象」を引き起こして、世界中に増殖したのだ。  何度か来日しているので、見に出かけたこともある。  リバーダンスの誕生と成長

アイルランド、イニスフリー湖島、ミリオンダラー・ベイビー

 「黒水仙」で、主人公のシスター・クローダ(デボラ・カー)が、「私はアイルランドのデニスケリーという小さな村の生まれ。恋人は夢を追い、私を置いてアメリカに行ってしまった。だから私は僧院に入った」と告白する場面がある。  この映画は1946年のものだが、有名な「ジャガイモ飢饉」から100年経ったこの頃でも、恋人や家族を残して極貧のアイルランドを脱出するのは、ごく普通のことだったのだ。  全世界でアイルランド移民の子孫は約7000万人いると言われるが、母国の人口はわずか370万

デジタル・リマスター のマジックに乾杯!

 古い映画のデジタル・リマスター版が、最近いくつも作られている。これまでは、名作なのにDVDの画質が非常に悪く、残念に思う場合が多かった。ところが、デジタル・リマスター版によって、これまで諦めていた鮮明な画像を見ることができるようになった。  1950年代は映画の黄金期だった。原版の保存状況が良く、現代でも良質の画像を見られる場合もある。しかし、多くは、フィルムの保存状態が悪いためか、DVDの画質が極めて悪い。  例えば、51年のイギリス映画「黒水仙」。「色彩のマジック」と