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経済最前線

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2019年8月の記事一覧

ネガティブな印象で在職老齢年金の見直しを阻止

在職老齢年金制度について、政府は廃止の検討を「骨太の方針」に盛り込んでいる。 廃止した場合の影響について、2019年財政検証は、「オプション試算B②」で試算している。 それによると、制度を完全に廃止すると、将来世代の給付水準が0.3~0.4ポイント低下する。 この試算には、おかしな点が2つある。 第1は、廃止の財源の調達方法だ。 財政検証では、年金全体の給付水準を切り下げることで調達するとしているのだが、廃止の財源をこのような方法で調達することが決まっているわけではない。

年金財政が維持できないため、70歳支給開始が不可避になる

公的年金の財政検証が発表された。 多くの人は、所得代替率が今後低下していくことを問題視している。確かにそれは大問題だ。ただし、「保険料を引き上げず、所得代替率を引き下げることにより年金財政を維持する」という基本方針は、既に15年前に決めたことだ。 本当の問題は、その決めたことをさえ実現できないことである。 財政検証は、現実にはありえないほどの楽観的な経済前提に基づいている。現実的な前提をおけば、このとおりにはならない。 とくに問題なのは、 (1)物価上昇率が想定ほど高くはな

通商法301条が復活したのは、アメリカの新しい危機感によるのか?

 8月23日にトランプ大統領が中国の報復関税に対して追加関税を発表したことで、米中貿易戦争が拡大し、世界経済の混迷が深まっている。  円レートは、8月26日に、一時1ドル=104円台半ばまで上昇した、日経平均は一時500円超安となった。  そもそも今回の事態には、よくよく考えて見ると理解しにくい面がある。  もっとも理解しにくいのは、大国アメリカのトップとはいえ、1人の大統領の発言だけで、しかもTwitterなどでのおよそ無責任な発言だけで、全世界の市場がかくも簡単に大混

米中貿易戦争の行方:トランプの真意はどこにあるのか?

 米中貿易戦争が、歯止めを失って拡大し始めた。  8月23日、中国が報復措置をとり、トランプ米大統領が中国に対する追加関税措置を強化した。  NY市場ではダウ平均株価が大きく下落。また、為替市場では、円高が進んだ。  これまでの追加関税は、元安によってかなりの程度打ち消されている。  今回の措置によっても元安が進行するだろうが、そうなると、中国からの資本逃避が増加する危険がある。  元レートをいかなる水準にすべきかについて、中国政策当局は難しい選択を迫られている。  トラ

年金支給開始年齢の70歳引き上げは不可避

 公表の遅れていた「2019年財政検証」が来週公表される予定と報道された。  問題は、「100年安心年金」(100年間にわたって年金財政を維持する)が実現可能かどうかだ。  2014年財政検証によれば、被用者年金の被保険者数は、2015年から2040年の間に20.8%減少する。これは、年率で言えば、0.93%の減少になる。  他方で、老 齢 厚 生 年 金受給者(老齢相当)は、2015年の1760万人から2040年の1990万人まで、13%増加する。これは、年率で言えば、0

貿易戦争を読み解くには、各国の構造の差を知ることが不可欠

 米中貿易戦争がエスカレートし、世界経済に大きな影響を与えている。今後どのように推移するかを判断するには、各国の経済構造の基本を正確に理解する必要がある。 ◇輸出依存度が高い中国は高関税に弱い  第1に輸出依存度を見ると、中国がずば抜けて高い。中国経済は輸出によって成長したわけだし、何らかの理由で輸出が減ると、大きな打撃を受ける。  そのことは、2008年のリーマンショックで実際に起こった。  その後、中国経済は「新常態」(new normal)と呼ばれる構造に移行し、輸出

日本経済活性化のため、フリーランシングや副業を進めるべきだ

◇アンケート調査結果 本サイトで行なった「定年後の働き方に関するアンケート調査」に対して、今朝までに53件の回答をいただきました。ご協力ありがとうございます。 結果は下記のとおりです。多くの方が、フリーランシング、副業、兼業などに興味を持っていることが分かります。 ◇フリーランシングや副業に関するアンケート調査 この他にも、フリーランシングや副業に関するアンケート調査がいくつか行なわれています。 ・アデコ https://prtimes.jp/main/html/rd/p

米中貿易戦争は、今後も収まらない

 8月1日にトランプ大統領が対中追加関税第4弾を発表して、世界的に株価が下落した。  その後、株式市場は一時的に安定を取り戻したかに見えたのだが、8月14日に再びダウ株価が800ドル安と大暴落した これは、今年最大の下げ幅だ。日経平均株価も、15日には一時400円超の下落を記録した。  これは、13日に第4弾の実施を9月1日から12月まで延期するとした直後のことだ。マーケットは、「これだけでは米中貿易戦争の状況が改善したとはいえない」と判断していることになる。  景気後退

就職支援が必要なのは「氷河期世代」だけでない

 政府が「就職氷河期」世代の就職支援を始めると、報道された(日本経済新聞、8月15日)。  正規雇用で半年定着したら、研修業者に成功報酬型の助成金を出す。支援対象は100万人規模。8月中に支援策をとりまとめる。 ◇氷河期世代だけの問題でない  現在40歳前後の年齢の人々が学校を卒業したときは、「就職氷河期」にあたり、希望したような就職が出来なかった人が多いと言われる。  これは、事実だ。  それがいまも、非正規雇用者が多いことなどに尾を引いているといわれる。  そのため、こ