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松本山雅サポーターミーティングを見ての感想文

2022年12月11日に行われたサポーターミーティング。YouTubeに録画がアップされていたので、その映像を見ながら気になったところを抜粋して感想を書いていこうと思う。
流れで見ながら書いているので基本的に時系列になるのと、神田社長・下條SDのプレゼンテーションに対する感想が多めなのはご了承いただければと。


神田社長プレゼン

松本山雅の立ち位置

冒頭で神田社長より、中期経営計画の前提となるクラブ基準が共有された。
「J2リーグにおいてJ1参入プレーオフ圏内を常に争うポジションを維持すること」が目指すべき立ち位置として示された。クラブの経営規模(詳しくは後述)を考えれば妥当かなと。夢を見すぎていない地に足がついた現状認識だと思う。

山雅らしさの定義(原点)

「ハードワーク」「球際」「規律」「勝利への執念」と言語化されていた。これらは反町監督が率いたJ参入初期に形作らられたものであり、今後もクラブ全体で共有し、継続していくべきものとして語られている。ピッチ上だけに限らない基盤となる考え方なので、選手獲得・監督選考・クラブビジョンなど様々な部分で耳にすることが増えるのだろう。

数値的な目標

総収入を早期に20億円、5年以内に30億円。
具体的に目指す数値としてこれらが共有された。どれくらいの基準なのか?がピンと来ないので、過去と比較してみる。
松本山雅の総収入が初めて20億円の大台に乗ったのは2015年でJ1初昇格を果たした年だった。その後は安定して20億円を超え、過去最高収入を叩き出したのは2019年で27億円。つまり、簡単に言えば5年以内に過去最高収入を目指すというのが今回の目標だ。

しかし現実は甘くない。スポンサー収入以外だと入場料収入とグッズ収入が柱になっていたクラブにとって、コロナ禍は大打撃となった。2020年以降は成績が低迷したことも相まって、クラブの収入は激減し、今季は15億円を下回ると発表されていた。

30億円の大台を目指すにあたって、入場料収入を従来の水準に戻すことは大前提として、スポンサー収入を現在より25%アップさせること、カテゴリーをJ1へ上げることによりJリーグ配分金を増加させることが必要になってくる。Jリーグは配分金の傾斜を大きくして、J1とJ2の格差は広がっていくと見られているので、J2復帰では目標には届かないという見立てだろう。

トップチーム人件費

早期に10億円を実現し、5年以内に18億円の人件費確保を目指すとのこと。
これも経営規模と同じでイメージがつかないので、他のクラブと比較してみる。
2021年度Jリーグクラブ決算資料を参考に見ていく。

これによると、5年以内に目標に掲げた18億円という人件費はJ2平均をゆうに上回る。それどころか2021年度のJ2で18億円に達したチームはいない。J1全体で見ても中位に入れるくらいの規模感。具体的なクラブ名を挙げるならサンフレッチェ広島と同等くらいになる(J1平均は上のクラブが引っ張っているのであまり参考にならない)。もちろん松本山雅の歴史上18億円という人件費を確保できた例はなく、相当高い目標を掲げていることになる。

また、クラブが最低限の基準として語った10億円という規模感も、2021年度のJ2で上位25%に入る。3年前から半減しているという事実は重いが、今季も6億円というJ2平均規模の人件費を確保できている。もちろんJ3ではトップクラスの予算規模。裏を返せば、ここ数年はチーム人件費とピッチ内の成績がリンク出来ていないとも言える。


下條SDプレゼン

チーム強化のKPI

・試合数×2の勝点
・1試合平均得点1.5以上
・1試合平均失点1.0以下
・反則ポイント一桁

試合数×2の勝点を稼ぐことが昇格に向けた目指すべきラインというのは妥当。というか例年どのカテゴリーでも昇格や優勝を目指すクラブはこの基準で目標とする勝点を計算している気がするし。

気になるのは得点と失点のバランス。このKPIの数字を純粋に受け取れば、1-0や2-0、2-1といったスコアで勝利することが多くなるという想定。ただ、就任した霜田監督は攻撃を好むタイプで、失点してもそれ以上に得点を奪えばOKというスタイルである。得点数増加は期待できるだろうが、平均失点1.0位かというのは正直現実的ではない気がする。元々守備に重きをおいてきたクラブの歴史があり、個人的な感覚としてサポーターも含めて点が取れないことより失点が多いことにストレスを感じる節があると思っている。得点数を増加させるために霜田監督を招聘したことは間違いないのだが、あまり失点数を減らすことに引っ張られ過ぎると良さが消えてしまう可能性はある。

夏の補強について

7名の選手にオファーを出し、オファーまでは至らなかったが3名の選手に声をかけていたとのこと。ただ合意に至ったのは中山陸だけだった。
思っていた以上に積極的に動いていたことがわかって少しホッとした反面、現実は厳しいなと。

カテゴリーがJ3であること、目指すサッカースタイルが一貫していない/やや個人頼みであること、スカッドが分厚すぎて競争が激しいこと、資金面が潤沢ではないこと。
色々と理由は考えられるが、今の松本山雅はオファーを出しても来てもらえないクラブであるという客観的な現実は認識しておく必要があるだろう。

こういった事情は今オフの移籍にも響いてくるはず。選手を引き抜かれることはあっても補強がままならない、もしくはメインターゲットだった選手は獲得できないといったことは容易に想像できる。これまでの霜田監督のスタイルは、核となる選手の質が非常に大事になってくる印象があるので、どれくらいサポートできるかは新設されたトップチーム強化本部の腕の見せ所になる。

目指すフットボールについて

従来の堅守速攻から「賢守即攻」へと舵を切る。少し噛み砕くと、自陣で守備ブロックを敷いて相手の攻撃を受け止め、奪ったら快速FWを走らせてロングカウンターというのが従来の戦い方。そこから、守備ラインを敵陣に設定してプレッシングをかけていき、インターセプトを目的としたクリーンな守備で奪って素早いトランジションからショートカウンターを繰り出したいと。柴田監督や名波監督も志向していたが途中で挫折してしまったスタイルに再び挑戦し、現場だけでなくトップチーム強化本部としてもサポートしていくという覚悟が伺い知れた。

個人的に気になったのはインターセプトを軸としたクリーンな守備。これを実現しようと思うとカギになるのはFW。相手のプレーを限定したり、チームとして狙ったエリアに誘導し追い込んでいくような守備が求められることになる。FWにはより頭を使った守備タスクが課されるはずなので、キャンプからみっちり仕込みが必要になるだろう。

藤枝戦で見られたプレッシングの空回り

また、奪ったら速い攻撃を繰り出せればOKという話ではなく、ボール保持にもこだわっていきたいのだなあと感じた。今季は攻撃に転じた時にボールロストする頻度が高く、逆にカウンター返しを食らってしまうことが多すぎた。横山歩夢やルカオといった速い攻撃で活きるタレントが前線にいたこともあっただろうが、どちらかと言えば遅攻では崩せない意識が強かったので、速攻を繰り出すしか選択肢がなかったように思う。来季はボールを失わないという意味でもボールポゼッションを強めるとのことだったので、霜田監督にはボール保持してからの崩しについても仕込みを期待したい。


質疑応答

補強を円滑に進めるには?

今夏、J1で出場機会を得られていなかった選手にオファーを出したがJ2クラブに移籍してしまったという話があった。該当すると思われる選手をリストアップして見ると以下のような顔ぶれに。

FW
染野、川本、ディサロ、鵜木、永井、石井
MF
成岡、杉本、平川、樺山、高萩、仙波、菊地
DF
佐藤、袴田、岡庭、田邊

全体的に若手が多く、特に補強によって競争の激しくなったチームからの移籍が目立った印象。こういった若手選手を獲得するために、下條SDが挙げていたのは「名刺代わりになるようなサッカースタイル」。
松本山雅ってどんなサッカーしているの?と聞かれた時にパッと答えられるようなものが欲しいと。たしかに選手のインタビューを読んだり、鳥栖や徳島などが有望な若手選手を獲得できている現状を見ると、必ずしも金銭面やチームの成績に依存しないことが分かる。その点、自陣でガチガチに守備を固めて、ロングカウンターとセットプレーというサッカーは魅力に感じてもらいにくい。

「攻撃的なサッカー」「ハイライン・ハイプレス」といったキャッチーなワードを敢えて並べてみたり世界のトレンドを取り入れようとしているのは、有望な若手選手の獲得、ひいてはチーム強化・勝利の確率を上げるアプローチのひとつなのかもしれない。


総括

まあ想定内でしたが、昨年ほどではないにしろ多少荒れましたなー。見ていてしんどくなって来る場面も多かったけど、真摯に対応してくださった登壇者の皆様には感謝しかない。

全体的に地に足がついたプレゼン、質問対応だったと思った。J1優勝!ACL出場!と言い出したら頭を抱えていたが。
例えば、新人獲得においても名が知れている有望株は獲得が難しいので、関東に業務委託ながらスカウトをおいて、比較的無名でポテンシャルのある選手の発掘を行っていくとか。母体となる企業がないクラブだからこそ、ユースを含めて自前で選手を発掘して育成して戦力になってもらったり、移籍金で稼いで投資に回していく必要が出てくるのは仕方ない。むしろ、その現実から目を背けているうちは強くなれないと思うし。

また、改めて下條SDの存在は大きいなと感じた。質問に対してハキハキと回答し、答えられないものについては答えられないと言う姿勢は好き。あとは名古屋や横浜FMで強化部にいたからだと思うけど、こういった大勢を目の前にしてのプレゼンテーションや質疑応答にも慣れているなーと。
下條SDの中で確固たる目指す方向性があるんだと伝わってきたし(ブレることもなさそう)、自分がトップチーム強化の責任者であるという強烈な自負と覚悟をひしひしと感じた。
頼んます!!!

あとは最後にサプライズゲストとして登場した霜田監督。
今までに見たまんま、ゆったりとした口調。過去のインタビューでクラブの歴史を理解した上で指揮を執りたいと語っていたが、「新しいストーリーをを作っていきたい」という言葉にはそんな思いがこもっているように感じた。
松本山雅というクラブは、ステークホルダーが多く、かつそれぞれの影響力が強い。JFAの技術委員長を務められた霜田監督なら、この特殊な環境下でも周りを巻き込んで新しい物語を紡いでくれるのではないかと期待している。よろしくお願いしまっす!!!

ということで、サポミを流しで見ながら思ったことをつらつら書いてみました。
来季に向けてクラブが進み始めているので、まずは温かく見守っていこうと思います。
僕は選手総括とシーズン総括を書き上げてないので来季に進めないけど。笑

ではご唱和ください。
補強はよ!!!!!!!!!


俺たちは常に挑戦者

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