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2020Jリーグマイベストイレブン 選考レビュー

2020年も残すところあとわずか。
コロナにより前代未聞のシーズンとなった今季、まずは無事にリーグ戦全試合を終了するにあたり尽力された皆様に感謝したいと思います。
Jリーグを守っていただき本当にありがとうございました。

さて、今回はWindtoshさんにお声がけいただき、2020シーズンのマイベストイレブンを決めようという企画に参加させていただきました。ありがとうございます。

他の方のベストイレブンはこちらから。

ここでは、今回の選考基準や各選手の選考理由を簡単に(※)書いていこうと思います。

※書いているうちに止まらなくなってきてしまい7000字を超える分量になってしまいました。全然簡単にじゃないですね。どうぞ最後までお付き合いください。

ではいきます。

選考基準

・定量的に明確な選考基準はなし。笑
・あくまで過去の実績ではなく2020シーズンを見ての印象
・なるべく現地で見た選手、複数試合見て印象に残った選手を優先

GK部門

東口順昭/ガンバ大阪

今季のGKは間違いなく東口。たしかDAZNの週間スーパーセーブにも17回くらい選出されていて、ガンバは東口で一体いくつ勝ち点を獲得したのだろう。

特に際立ったのは近距離からのシュートへの反応。ゴール前で混戦になって打たれたシュートや、抜け出してきたFWとの1対1に滅法強いイメージがある。反射神経がずば抜けているだけでなく、これだけ止められるのは予測能力が優れているからではないかと思っている。僕はGKをやったことがないので詳しい技術的な部分は分からないが、打つ側の立場で嫌だったのはシュートコースが空いているように見せかけて実は打つように誘い込まれているパターン。豊富な経験に加えて、的確にコースを限定することで反応速度を上げているのかもしれない。

個人的に印象的なセーブは、この2つ。

アラーノが完全に抜け出しての1対1。バックステップを踏みながらなので準備は十分にできなかったと思われる中で、完璧なセーブ。打つ前にアラーノが東口を見てニアを選択しているので、駆け引きに勝った感じか。スコアレスで拮抗していた中での超絶決定機で、見ていてかなりガックリ来たのを覚えている。

もうひとつはこちら。
2つ選出されている中の2つ目。

神戸が1点を追う展開でイニエスタのスルーパスに、松田陸との駆け引きに勝った古橋が抜け出しての決定機。イニエスタから古橋という神戸の誇るホットラインで完全に崩されているし、決めていれば一気に反撃ムードが漂うはずだった。第三者目線で観ていても「こんなん止められたら無理やん」って思うようなビッグセーブで、神戸の選手たちに与えた絶望感は大きかったと思う。個人的には裏を取られた松田がヤベェみたいな一瞬諦めの表情を見せるも、東口のセーブ後に引き締めるところが好き。頭上がらないっすね。

DF部門

犬飼智也/鹿島アントラーズ

2013年に松本へレンタルでやってきた当時の犬飼は、練習場でも試合中でも反町監督にしょっちゅう怒鳴られていた。多分期待の裏返しだったのだと思う。足元も苦にせず、スピードもそこそこあって空中戦も強い。なんでもそつなくこなすセンターバックという印象だったが、時折見せる軽率なミスが目立ち(しばしば決定機を招いてしまっていた気がする)評価の難しい選手だった。

ところが今季、犬飼は間違いなく一皮むけた。
最終ラインに怪我人が続出し、シーズン途中にGKがひと回り近く若返るという落ち着かない最終ラインを統率し、リーダシップを発揮。さらにザーゴのサッカーにもフィットし、高精度のロングパスを供給し続けた。特にドリブルで数メートルボールを持ち運べる能力は現在の鹿島において非常に貴重で、相手のプレスを剥がす過程で重宝された。来季以降も主力を張ることは確実で、まだ27歳という年齢を考えても日本代表も夢ではない。鹿島の最終ラインでスタメン=日本代表という伝統を引き継いでもらいたいものである。

最近練習している無回転FKも期待してる。

登里享平/川崎フロンターレ

DF部門2人目には、川崎のサッカーに欠かせないピースだった登里を選出。味方を活かし、自分も活きる絶妙なポジショニングで地味ながら川崎のサッカーを支え続けた。ピッチ内でも、ピッチ外でもサポートが上手い選手。個人的には、今季ブレイクした三苫の活躍も登里の陰ながらのアシストがあってこそだと思う。

日本代表に呼ばれても文句ない活躍を見せているが、30歳とベテランに差し掛かっている点と、168cmという身長が国際舞台だと若干ハンデになりそうな点がネックだろうか。この獅子奮迅の活躍があと数年早ければ...と考えてしまうことはあるが、そこは運命。鬼木監督の下だからこそこれほどまでの活躍を見せられているのだと思うし。

彼の個人的ハイライトは、優勝を決めたガンバ大阪戦でのアシスト。レアンドロダミアンのラインブレイクもさすがだが、そこへピンポイントで合わせる高速クロスは何回見ても美しい。上からの目線で見ているとDFとGKの間にスペースがあるのは分かるが、ピッチレベルで僅かなスペースを見つけること自体困難だと思うし、そこへ完璧なタイミング・軌道・スピードのクロスを供給するとかエグすぎる。これを瞬時の判断で行うんだから、やっぱりプロ選手は凄い(語彙力)

キムヨングォン/ガンバ大阪

今季のガンバの3バックは強烈で、昌子と迷ったがキムを選出。(若干個人的な感情が入っているのは許して)

Football Labのデータを見ると、特筆して何かの項目が抜けているということはないが、代表級のセンターバックとして2位フィニッシュしたチームにおいて存在感は絶大だった。空中戦にも強いイメージがあったが、数字上はそれほどでもなかったらしい。三浦・昌子・キムと並ぶ最終ラインに対して空中戦で勝ちに行くという方が考えづらいので、そもそも空中戦の機会がそれほど多くなかったのかもしれない。ちゃんと調べていないけど。

結局今年鹿島はガンバに勝てなかった(A0-2、H1-1)が、特にホームで引き分けたゲームで、ことごとくクロスを跳ね返された印象が強い。内田篤人のラストゲームということもあり、積極的な攻撃参加からクロスを上げ続けたがガンバ最終ラインの牙城を崩せず。真ん中の昌子が強いのは分かるが、その脇を固めるのが日本代表と韓国代表って意味わからない。

また、調べていて分かったことだが、今季28試合に出場してもらったイエローカードは3枚のみという点も評価したいポイント。あくまでクリーンに相手を止め続けた証拠であり、昌子や三浦が離脱する中でも東口とともに堅い守備を支え続けた。
ちなみに分かりやするために比較すると、キムヨングォンが1枚警告を受ける間に、柏のヒシャルジソンは4.3枚のイエローカードを収集していることになる。

MF部門

中村憲剛/川崎フロンターレ

今季最も印象的な選手と言われたら間違いなく中村憲剛の名前を挙げる。大怪我からの復帰戦で怪我した足でゴール、40歳のバースデーにゴール、直後に引退発表、等々力でシャーレを掲げて優勝、ホーム最終戦で小林悠のゴールをスーパーアシスト。パっと思いついただけでもこれだけ印象的なシーンが出てくる。「役者」という言葉がこれほどまでに似合う選手は出てこないかもしれない。

フロンターレというクラブの色が中村憲剛を染めたのか、中村憲剛という存在がクラブを変えたのかわからないが、エンターテインメント性に富んだ川崎フロンターレというクラブを色々な意味で象徴する選手だと思う。シルバーコレクターを呼ばれながらも等々力を埋めるサポーターが集まる理由は決してピッチ内の魅力的なサッカーだけではないはず。地域密着を掲げながら地道な活動を積み上げてきたことの成果だろう。引退セレモニーで普通出てこないような地域の方々が参加していたのは、本当に感動した。

語りたいことはたくさんあるけれど、個人的に大好きで何度見ても泣いてしまう動画で終わりにします。本当にお疲れ様でした。
(ブラジルW杯メンバー落選直後の試合のウォーミングアップ。)

ちょっと長々と書きすぎですね。少しペース上げます。

岩尾憲/徳島ヴォルティス

ダブルボランチの一角には中村憲剛優勝した徳島の心臓をチョイス。垣田が出ていたこともありちょこちょこ試合は見ていたけれど、一番印象的だったのは優勝を決めた愛媛戦でのパフォーマンス。

優勝に大手を掛けてから1分1敗と足踏みし、福岡と長崎に差を詰められているという状況での一戦。ホームでの優勝を期待する周囲の熱量とは裏腹に、徳島の選手の動きには全体的に硬さが見られ、プレッシャーを感じていることは画面越しでも伝わってきた。水戸・千葉相手に無得点に終わっている点もあったのだろう、凄まじい緊張感だったと思う。
そんな中でも、岩尾だけは常に冷静で、ピッチのあちこちに顔を出しながらテンポよくボールを捌いていく。大宮の選手に寄せられても慌てるそぶりを一切見せず、いつも通りパスを繋ぎこぼれ球を回収する姿は、大一番で圧倒的な存在感を発揮する小笠原満男と被る部分があった。

来季悲願のJ1でどんな姿を見せてくれるのか本当に楽しみにしている。

家長昭博/川崎フロンターレ

川崎に移籍してからの家長を見るたびに、型にはめて選手を判断してはいけないな思わされる。大宮時代は王様として君臨し、僕はきっと彼を中心としてチーム作りをしないと活きない存在なのだと思っていた。だが、川崎に来てから見違えるように守備に奔走し、奪われた直後にダッシュで戻る姿を見ると、選手は変わるのだと痛感させられる。

もともと体幹の強さと魅了するテクニックは折り紙付きだったが、献身性と得点感覚を身に着けたことでスケールアップ。筋肉質で大きなお尻を駆使したボールキープは敵とすれば厄介で、味方にすればこれ以上なく心強い。預ければボールロストしないだろうという選手がいると、周囲の選手もリスクを負って攻撃参加ができるようになる。右サイドバックの山根の攻撃性能を引き出したのは家長の存在が大きいと思う。

現在34歳とベテランの域に入るが、まだまだ衰えを見せず今季はキャリアハイの11得点。このまま川崎に骨をうずめるのだろうか。

三苫薫/川崎フロンターレ

個人的な今季MVP。出場30試合先発11試合・出場時間1,603分という点が物足りなさを感じる部分もあるが、13ゴール12アシストという数字は怪物級。そもそもルーキーイヤーでリーグ優勝チームでの数字というエクスキューズを考慮すれば、十分すぎる活躍だろう。

また、ガンバに3アシスト、セレッソに2ゴール、横浜FMに3ゴール1アシストと強豪相手に多く結果を残している点、途中出場から8ゴール6アシストとジョーカーとしても機能していた点も評価したい。緩急とキレで勝負するタイプの三苫を途中から投入して流れを引き寄せる試合は何度も見られたし、過密日程で守備陣への負担も大きかった今季だからこそ効果は絶大だった。

しっかりと川崎でスタメンを張り、フルシーズン戦ってから欧州へ挑戦すべきという声も聞いたが、自分としては今オフにも渡欧してよいのではないかと思う。Jで無双していたドリブラーが海外で時間とスペースを与えてもらえずに苦戦するパターンを見ているので、早いところ国際基準に慣れるべき。理由は何にせよ早く欧州へ行ってほしい(切実)

高橋大悟/ギラヴァンツ北九州

今季は一時首位に立つなど躍進した北九州で41試合に出場して9ゴール6アシストと大車輪の活躍。清水にルーキーで入った時代から左足はスペシャルなものを持っているのは知っていたが、現地で見て一目惚れしてしまった。

ほぼ左足一本で勝負するスタイルなので、DFも分かっているはずなのに止まらない。正確にはJ2ではファウルでしか止める術がないというべきだろうか。安易に飛び込めば交わされ、ズルズル下がると右からカットインする得意の形に持ち込まれて強烈なミドルを許してしまう。それならばとラインを上げてバイタルエリアを狭めようとすれば、常にラインブレイクを狙っているディサロへのスルーパスが飛び出す。一昔前の表現かもしれないが、ファンタジスタという言葉が似合う選手だ。ボールを持てば何かしてくれそうなワクワク感を掻き立ててくれる、そんなお金を払ってでも見たい選手だと率直に思う。

まだまだプレーにムラがあり、決定機の数からするとゴール数は物足りない。右足をあまり使わない点もJ1クラスのDFには通用しないかもしれない。それでも、ボールを持ったらまず仕掛ける姿勢と小林監督の下で鍛えられている守備の献身性、何より左足から繰り出されるパスやシュートを見ると将来に期待せずにはいられない。
鹿島に同じようなスペシャルな左足を持った遠藤康という格好の先輩がいるのだが、うちに来てみる気はないだろうか。

個人的な今季ベストゴールはこちら(動画1:52~)。ターンの際の体の使い方、おそらく感覚で打っていると思われるシュート、大好き。

FW部門

エヴェラウド/鹿島アントラーズ

今季の鹿島を語るうえで外せない選手。高くて強い助っ人ストライカーなんて久しぶりに鹿島が引き当てた気がする。ビルドアップに苦しんでも、とりあえずエヴェラウドに蹴っ飛ばしとけばいいやって感じが非常にありがたかった。

181cmと特別大きいというわけではないのだが、空中で当たられても軸がブレないフィジカルと跳躍力(たぶん空中で止まってる時ある)で空中戦ではほぼ無双。左サイドに配置して相手サイドバックを露骨にロングボールで狙い撃ちしてた時もあったけれど、普通にマッチアップさせられてるサイドバックが可哀想に思えるくらい。加えてもともとフットサルをプレーしていたこともあり、ドリブルもそこそこいけるという万能さ。左からゴリブルでカットインして右足振り抜くみたいな形は何度も見ました(点が取れたとは言っていない)。

中国からオファー来ているみたいな噂も出ているけれど、今季のままいくならばファイナルサードはFWの個人能力任せなところが大きいのでいなくなると困る。連続してガチャでSSR当てられるとは思えないし。

ベストゴールはこちら。
空中で静止してクロス待ってるとか意味わからん。

オルンガ/柏レイソル

28ゴールという圧倒的なゴール数はもちろんのこと、得点パターンがエグすぎてこれぞ外国人助っ人って感じ。前述のエヴェラウドはとりあえず蹴っ飛ばしとけば競り勝ってくれる存在だけど、オルンガはとりあえず蹴っとけば点取ってきてくれるヤツ。何それ反則でしょ。裏抜け一本で確実に仕留めてくる決定力はため息ものでした。

雪の降るエディオンスタジアムでこのゴールを目撃したのだけど、本当に衝撃的だった。

目の当たりにして分かるのは純粋なスピードも速いけれど、ストライドが大きいことでより速く感じること。たぶんDFからすると本来届かないはずのボールに足が伸びてきて先に触られる感覚何だろうと思う。僕も真横から見ていて、DFが先にクリアすると気を抜いていた。
記憶が正しければ、この試合柏にとって最初の決定機で、試合展開も広島がボールを握って柏の守備陣を崩しにかかっているところだった。本当に数秒間の出来事だったが、オルンガにボールが渡ってからまるでスタジアムの時間が止まったかのように気づいたらゴール決まってた。おそるべしオルンガ。

また、オルンガの裏への抜け出しを警戒して相手チームが最終ラインを上げられなかったり、1枚多くDFを配置するなど数字に表れないが存在自体が脅威だった。常に喉元にナイフ突きつけられてる感覚。アバウトなクリアボールも処理を間違えれば致命的なピンチになるという緊張感は、見ているだけで精神的に削られたので、実際にピッチに立っている選手はなおさらだと思う。早く欧州へ行ってほしい。

気になったクラブ

ギラヴァンツ北九州

決してJリーグのすべての試合をチェックでいていたわけではないが、今季面白いサッカーをしていたチームのひとつではないだろうか。戦術的にという点ではなく、実際にミクスタで観戦した印象から選ばせていただいた。

一言でいえば、「応援したくなるチーム」だ。
生え抜きの選手は大卒が多く、そこに移籍組のベテラン選手やレンタルで有望株を加えているようなイメージのチーム編成である。スタメンの平均年齢は20代半ばになるのではないだろうか。20代半ばといってもプロ年数はまだまだ若い選手が多いためか、決して洗練されたプレーではなく、むしろ粗削りだが懸命なプレーが多い。そしてとにかくよく走る。J2得点ランキング2位のディサロ燦シルヴァーノも二度追い三度追いは当たり前のように前線からプレスを掛け続ける。

チームのために汗をかくことを厭わない選手たちのプレーは見ている側の胸を熱くさせるし、サッカー専用で熱がダイレクトに伝わりやすいミクスタの一体感は凄かった。特に若いチームだからこそ、一度スイッチが入って波に乗った時には手が付けられなくなる。1つのゴール、1つの決定機、1つのスーパーセーブによってスタジアムが沸き立ち、呼応するようにノッていく選手たちは見ていて気持ちがよかった。

今季の躍進により、主力の引き抜きは避けられないだろう。しかし、来季も素晴らしいスタジアムで小倉の人々を熱くするサッカーを見せてほしい。
ミクスタ最高。

さいごに

思ったことを書いていたら7000字というボリュームになってしまいました。ここまで読んでくださった方ありがとうございます。個人的な感情だだ洩れで読みにくい部分も多々あったかと思います。

今季は個人的な事情もありマッチレビューをフルシーズン書くことができませんでした。そんな中でもお声がけいただいたWindtoshさん本当にありがとうございます。
Twitter・note・対面で関わらせていただいた皆様ありがとうございました。

しっかりと体調を整えながら、来季こそはフルシーズン走り切れるように頑張ろうと思います。
引き続きよろしくお願いします!

俺達は常に挑戦者
One Sou1

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