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「勝点84・得点84」という目標について考えてみた

短いオフ期間が終わり、トップチームは1月16日より始動。
新型コロナ陽性者が出るアクシデントはありつつも、1次キャンプ、2次キャンプを無事に消化して鹿児島へ。開幕までの1か月弱を鹿児島で過ごしチームを成熟させていくことになる。

さて、今回は新体制発表会で柴田監督から宣言された「勝点84&得点84」という数字について考えてみようと思う。

正直発表された際に驚いた方も多かったのではないだろうか。他でもない僕自身も「J2優勝」や「自動昇格」といった形ではなく具体的な数字での目標を宣言したことに驚きを覚えた一人だ。そして、Twitter上では無謀な目標だという声もちらほら見受けられた。そんな目標について過去のデータも用いながら、自分なりに考察してみたい。

結論から言うと、個人的には「勝点84という目標は妥当、得点84という目標は挑戦的」だと思っている。その理由について、数字的な根拠も交えながら書いていく。
いずれにせよ、読んでくださった方が今季の松本に期待を持ってもらえたら嬉しい限りだ。

1.過去の松本の成績と比較してみる

急に目標を提示されたとしても実感が沸かない方も多いのではないかと思う。まずは自分自身と比較ということで、過去の松本の成績を見てみる。

過去に松本がJ2で記録した成績は以下の通り。
2020年:13位 勝点54(13勝15分14敗) 44得点 52失点
2018年:優勝 勝点77(21勝14分7敗) 54得点 34失点
2017年:8位 勝点66(19勝9分14敗) 61得点 45失点
2016年:3位 勝点84(24勝12分6敗) 62得点 32失点
2014年:2位 勝点83(24勝11分7敗) 65得点 35失点
2013年:7位 勝点66(19勝9分14敗) 65得点 54失点
2012年:12位 勝点59(15勝14分13敗) 46得点 43失点

実は2016年に一度勝点84を記録し、初昇格を果たした2014年にも勝点83を稼いでいる。2016年は札幌(勝点85)、清水(勝点84)、セレッソ(勝点78)と激しい昇格争いを繰り広げ、惜しくも得失点差で昇格プレーオフに回ることになった年。雨中のアルウィンで涙をのんだ記憶はまだ新しい。2014年は勝点101を荒稼ぎして優勝した湘南とリーグを席巻した。

ちなみに、このデータを整理しているときに気が付いたのだが、過去に松本が昇格もしくは昇格争いをしたシーズンには特徴的な共通点がある。それは失点数。いずれのシーズンも失点が30台、つまり1試合平均失点が1を下回っているということだ。このデータからも堅守をベースにして昇格を勝ち取ってきたチームということが分かる。

2.「勝点84」の妥当性について考える

「勝点84」についてという数字は、過去に松本が記録している成績であるために全く不可能ということはないだろう。そして、僕としてはむしろ昇格を狙うならば達成しなければいけない数字だとも考えている。

まず、今季のレギュレーションが前提条件にある。2021シーズンも昨季と変わらず、コロナの影響で昇格プレーオフが開催されない。J1への切符は自動昇格の2チームに限られる。この条件により昇格のハードルはかなり上がっていると思う。6位までに入ればチャンスがあった従来とは大きな違いだ。

そして、過去のJ2の成績を見ていくと勝点84という数字があながち間違いではないことが分かる。
直近5年のJ2における1位~3位の成績を列挙してみる。

2020年
徳島 勝点84、福岡 勝点84、長崎 勝点80
2019年
柏 勝点84、横浜FC 勝点79、大宮 勝点75
2018年
松本 勝点77、大分 勝点76、横浜FC 勝点76
2017年
湘南 勝点83、長崎 勝点80、名古屋 勝点75
2016年
札幌 勝点85、清水 勝点84、松本 勝点84

これを見るとおおむね自動昇格権を手にする2位以内に入るには勝点80がボーダーラインだといえる。長くなるため記載しなかったが、昇格プレーオフが始まった2013年~2015年の間も2位の勝点は83(神戸)→83(松本)→82(磐田)と推移しており、勝点80は自動昇格のひとつの目安となりそうだ。

昇格枠が2枠しかなく、過去のデータに照らし合わせると勝点84を獲得できれば昇格はもちろん優勝すら視野に入ってくる。データに裏付けされた現実的な目標であることが分かる。つまり、はっきりとは言っていないが勝点84=昇格・優勝と言い換えられるし、あえて抽象的な目標ではなく数字で表しているところに本気度がうかがえる。

勝点84が現実的な目標だと分かったところで、もう少し因数分解してみる。年間42試合を消化できた場合、1試合勝点2を稼ぎ出すペース。勝敗で表してみるとこんな感じである。

〇勝点84の場合
2020年徳島・福岡 25勝9分8敗
2019年柏 25勝9分8敗
2016年清水 25勝9分8敗
2016年松本 24勝12分6敗

〇勝点85の場合
2016年札幌 25勝10分7敗

〇勝点87の場合
2013年G大阪 25勝12分5敗

〇勝点101の場合
2014年湘南 31勝8分3敗

勝点101という規格外の数字である湘南は置いておいて、こうして勝点84以上をクリアしたクラブを並べてみると共通しているのは年間24勝以上しているということ。引き分けの数に若干の違いはあるものの、24勝という数字がより具体的な目標になりそう。

昨季が13勝15分14敗という数字だったので、あと11個勝ち星を増やせばいいということですね!簡単な話だ!(白目)

少し松本サポが期待できそうなデータを出しておくと、昨季の松本は14敗してるうちの8試合が1点差。さらに言うと2点差で敗れた試合が4試合。52失点もしていてヤバい!って感じになりそうだけど、大敗した試合はそんなに多くない。(琉球だけで8点も献上してるw)

実際に前半戦こそ4勝7分10敗だったものの、柴田さんに代わってからは(もちろん中断期間があったこと、布さんが築いた基礎があった上での成績であることは加味すべきだが)9勝8分4敗と数字上では「負けない」チームに変貌している。過去の昇格チームのデータからも「負けない」ことの重要性は高く、次のステップとして「勝ち切る」につながってくる。ハイプレスが機能した昨季終盤から4-4-2へシステム変更を行う今季も守備が安定するとは言い難いが、現状維持は退化。さらに上を目指す意味での変化だろう。
そして、その変化の目的こそが得点の増加、そう「得点84」というもうひとつの目標を達成するための変化なのだと信じたい。

3.「得点84」を過去のデータと比較してみる

既に書いたように、松本というクラブは堅守をもってJ2を戦い抜いてきた歴史がある。歴史をたどれば、自陣でガチガチに守備ブロックを固めて相手が疲弊してきた75分以降にカウンター一発で仕留めるか、辛うじて手にしたセットプレーから貴重な得点をもぎ取るというサッカーをしていた時代もあった。余りにもボールが空中にあるため、ある監督には「サッカーとは別の競技をしている」と揶揄されたことは語り草である。

そんなチームはここ数年変わろうとしている。思えば初めてJ2降格を味わったあたりからだろうか。J2では枠を外れていたシュートがJ1の舞台では決まるようになり、ゴール前に守備ブロックを敷いても個の力で殴り負けるという現象を目の当たりにして、攻撃の時間を作り出す必要性を感じたサポは多かったはずだ。反町監督の下挑戦してきたが、無残にも2度目のJ2降格という結末で幕を閉じた。

しかし。J1に定着するために守備の強度は維持したうえで攻撃面をブラッシュアップする必要性は変わっていない。その方向性を明確化したのが「得点84」という壮大な数字だ。
勝点84とは違い、得点84を実現したチームは過去にも例が少ない。

2019年 柏レイソル 85得点
2017年 名古屋グランパス 85得点
2016年 清水エスパルス 85得点
2014年 湘南ベルマーレ 86得点
2013年 ガンバ大阪 99得点

ざっと並べるとこんなところだ。
ここにチームのトップスコアラー3人の数字を重ねてみる。

2019年 柏レイソル 85得点
★オルンガ27点、クリスティアーノ19点、江坂11点

2017年 名古屋グランパス 85得点
シモビッチ18点、青木11点、田口8点

2016年 清水エスパルス 85得点
★鄭大世26点、大前18点、北川9点

2014年 湘南ベルマーレ 86得点
ウェリントン20点、岡田14点、武富9点

2013年 ガンバ大阪 99得点
宇佐美19点、レアンドロ13点、ロチャ9点

★は得点王

こう並べてみると、いずれも印象的なチームだ。2013年のロチャとか懐かしすぎる。笑顔がすごい可愛かった。

共通して言えるのは、シーズン20点近いゴールを叩きだすエースストライカーがいたということだ。チーム総得点の1/4近くを稼ぎ出す計算になる。ちなみに2017年の名古屋は、ランキングには出てきていないが出場16試合で7得点14アシストを記録したガブリエル・シャビエルが後半戦無双していたことには言及しておきたい。

4.「得点84」を実現するために必要なことは?

ここまでのデータで得点84という目標を実現するには、シーズン20点近くを叩きだすエースが必要だと分かった。ただ、実は過去の松本にも同等のエースは存在した。

例えば、2017年の高崎(19得点)や2014年の船山(19得点)がそれにあたる。しかしそれぞれの総得点は、2017年が61得点で2014年が65得点と目標からはほど遠い(ちなみに2014年の65得点が松本の歴代最多得点)。
エースがいたのに得点が目標に届かなかったのはなぜだろうか。僕が考える主要な要因は2つ。

1つ目は、エースに次ぐ存在の不在。前に挙げた84得点以上稼ぎ出したチームにはトップスコアラーに次ぐ選手が2桁得点を上げており、場合によっては3桁得点が3人いることすらある。しかし、松本は2017年が工藤、2014年は岩上がチーム2番目の得点を決めているがいずれも8得点にとどまっている。2桁得点を記録する選手が複数人出てくることが必須条件といえるだろう。

もう一つの要因は、得点パターンの偏りだ。2017年は52.4%にあたる32得点、2014年は53.9%にあたる35得点をセットプレー(PK含む)に依存している。前述した5チームのセットプレー割合は25%~35%程度。長年松本が苦しんでいる問題ではあるが、流れの中からの得点をどれだけ増やせるかもポイントになりそうだ。

以上を踏まえたうえで今季の松本はどうか。個人的には2つの要因をいずれも解決するような補強を行っていると思う。FW陣には阪野・ルカオ・山口と二桁得点を期待できる選手を複数人揃え、成長著しい鈴木やサイドハーフ起用の想定される河合や田中パウロもハマれば得点量産の可能性もある。
また、前述した河合や表原、外山はドリブルで局面を打開できる力を持っている選手で、引いた相手に攻めあぐねていた昨季の松本に欠けていたピースだ。さらには、右サイドバックに入るであろう浜崎はキックの名手で、高さ・強さで勝負できる選手が多い今季の松本FW陣に質の高いクロスを供給できれば殴り勝てる可能性は高いはず。

たしかに「得点84」という数字はストレッチの利いた高い目標だが、補強した選手が順調にフィットし、柴田監督の戦術整備が進めば達成できない数字ではない。

目標に掲げた「勝点84&得点84」を達成し、クラブの歴史に残る1年になることを心から願っている。

読んでいただきありがとうございました!
今季の開幕に向けて、少しでも楽しみが増えれば幸いです。
かなり遅くなりましたが、今年も1年間よろしくお願いします。

俺達は常に挑戦者
One Sou1

※データ引用元※
Football LAB
Jリーグ Date Site

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