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#070 天草の水産加工業者さんからの学び - コロナ後の経営のヒント

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先日、NHK の朝の番組を見ていたら、コロナ禍でも頑張っている中小企業の特集の中で、天草(熊本県)の水産業者さんが紹介されていました。

興味深い内容だったので、番組を見た後でいろいろ調べてみました。
参考になったところが多かったので紹介させて頂こうと思います。

(番組で見た内容を Web で調べた知識のみ書いている部分もありますので、細かいところが違っているかもしれません。大筋には影響しないと思いますのでご容赦下さい。)

「株式会社クリエーション」という天草の水産業者さん

テレビで取り上げられていたのは、「株式会社クリエーション」というかっこいいお名前の水産業者さん。
Webサイトもかっこいいです。
<https://cwp-jp.com/>

クリエーション1

それもそのはず、この会社さんは、車エビの養殖や食品加工などの1次産業・2次産業だけでなく、広告やブランディング、ネットショップでの自社商品の販売などの3次産業も手がけられています。
<https://cwp-jp.com/%e4%ba%8b%e6%a5%ad%e5%86%85%e5%ae%b9/>

クリエーション2

「6次産業」とは

この会社さんがやられているように、農林漁業の1次産業に従事する方(農家や漁師など)が、その生産物を自分たちで加工(2次産業)したり、販売(3次産業)することを、「農林漁業の6次産業化」と呼びます。

農林漁業の6次産業化:農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/6jika.html

それぞれの産業を掛け合わせる、1 x 2 x 3 = 6、で6次産業、ということらしいです。

とはいえ、これをやるのは実際にはなかなか難しい。
普通の農家さんや漁師さんには、
・2次産業に必要な、商品開発や生産管理に関するノウハウ
・3次産業に必要な、ブランディングやプロモーション、販路確保に関するノウハウ

が無いからです。

コロナ禍での「守りの経営」 - 人手不足をどうやって解消したか

こちらの会社の場合、今回のコロナ影響で最初に直面した問題は「人手不足」だったとのこと。
従業員さんのほとんどが休校中のこどもの世話などで出社できなくなってしまったそうです。

車エビの加工場には、水揚げされた車エビがどんどんやってきます。
次々に加工して冷凍・出荷していかないと、せっかく入ってきた車エビを、最終的には捨ててしまわなくてはいけません。

どうしようかと困ってたところ、たまたま地元の経営者の会合で、同じ地域の観光ホテルの経営者の方と会話をされたそうです。
すると、そのホテルでは、逆にお客さんが来ないためスタッフが余って困っていたとのこと。

この会話がきっかけとなり、手が空いていたホテルのスタッフを、水産加工場の手伝いに派遣することでお互い Win-Win な結果となったそうです。

コロナ禍での「攻めの経営」 - 商品開発力をどうやって手に入れたか

次にこの会社が直面した問題は、関東や海外などに卸していた魚の需要が激減し、出荷が止まってしまった事だそうです。
緊急事態宣言で飲食店が営業できなくなり、その影響で食材の魚の需要が無くなってしまいました。

この会社さんがすごいのは、一度つながったホテルさんとのご縁を、この状況でも最大限に活用しているところ。
水産加工場にお手伝いに来ていたホテルのシェフの方がこの話を聞き、「自分なら新しいお弁当のレシピを作れるかもしれない」と思いつき、日持ちのする、通販でも販売できる「冷凍弁当」の開発をスタートしたそうです。
そして、この商品が大ヒットとなり、新たな商品と販路の開拓に成功したとのこと。
まさに「6次産業」を実現されています。

ちなみに、この「冷凍弁当」、楽天の以下のショップで販売されています。
だいぶ先まで売り切れのようで、まだまだ人気は続きそうです。

AMAKUSA産直便

この一連のお話の中から、私は、以下の3つの学びを得ることができました。

学びその1: 同じ地域の中でのつながりの重要性

コロナ後は、大規模な人の移動はどうしても制限されてしまいます。遠隔会議でも大きな支障なく仕事ができるという共通理解が広まったため、離れた場所へ出張する機会も自然と減っていくでしょう。
また、これまでより住む場所の自由度が増し、自分の気に入った場所で暮らしたいという欲求が強くなってくるはずです。結果、同じ地域のコミュニティに対するエンゲージメントが高まってくると予想されます。

ということで、今後は、同じ地域内での経済活動がより活発に、重要になっていくと思われます。
今回も、地域の経営者の集まりにおける何気ない会話が、水産業者さんと観光ホテルさんを結びつけました。地元の商店街や、商工会などの人のつながりが見直されるようになるのではないかと思います。

学びその2: 異業種間でのつながりの重要性

今回の「冷凍弁当」の開発、ホテルからお手伝いにきていたシェフの方のノウハウが非常に重要であったことは間違いないと思われます。メニュー立案に必要な知識、調理や大量生産の技術、どれも普通の水産業者さんでは持ち得ないノウハウのはずです。

コロナを経験して、人の価値観や生活様式が大きく変化しています。自宅で手軽に健康的で美味しい食事をとりたい、というのもその1つ。
こうした新しい価値観を満たすような新しい商品・サービスを生み出すためには、異業種間の知恵を持ち寄ることが重要なのでは無いかと思います。

同じ地域 x 異業種、のコラボレーションが、勝ちパターンの1つになっていくように思います。

学びその3: とにかく明るく、前向きに!

最後にもう一つ。
テレビ番組をみていて一番感じたのが、経営者の方の前向きな姿勢でした。

Webで検索したらプロフィールの書かれているページが見つかりました。こちらの方です。

【524号】すてきびと – 水産加工・販売会社 代表 深川 沙央里さん
https://spice.kumanichi.com/human-culture/suteki-bito/90677/

もちろん、実際には辛いことも多かったと思いますが、番組出演中もずっと笑顔で、後ろ向きな発言は一切無し。
こうした前向きな姿勢が、周りの人を巻き込んでいくには重要なのでは無いかと思いました。

まとめ。

(1) コロナ影響で人手不足や需要減少に悩まされていた天草の水産業者さん。地元の観光ホテルと上手に連携することで、人手不足を解消できただけで無く、「冷凍弁当」という新たな商品開発を成し遂げることができました。

(2) コロナ後の価値観や生活様式の変化の中で、「同じ地域」x「異業種」という考え方が、経営のヒントの1つになるのではないかと思います。

(3) 経営者の方の前向きな姿勢というのは、こういう苦しいときにこそ重要になってくるように思います。明るく前を向いて頑張ることで、自然を周りの人を巻き込んでいくことができるのではないでしょうか。

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(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)

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