ニューロダイバーシティ:フルインクルーシブ教育
本日は、フルインクルーシブ教育について、Noteにまとめたいと思います。
日本の支援教育
日本では、障害のある子どもに対する教育的な支援は以下の3つあります。
特別支援学校:障害に応じた指導に特化した専門の学校
特別支援学級:普通校にある支援学級であり、少人数で障害に応じた指導がされる
通級による指導:普通校の通常学級に在籍しつつ、一定時間、障害に応じた指導を別の場所でうける
いずれの支援を受けるかは、あくまで本人や保護者の意見が尊重されるように設計されています(*1)。このため、選択肢があるという点においてはメリットに感じることもあると思います。そして、保護者からみたときの特別支援学級や通級指導のメリットとしては、手厚いサポートではないでしょうか。計算上は教師1名に対する生徒数は13名という結果です(*2)。そして、近年の発達障害と認定される子供たちが増加傾向にあるためか、これらの通級には人気が高まっているようです。(*3, *4)
*1 「文部科学省 障害のある子供の就学先決定について」
*2 「公立小中学校等の 学級編制及び教職員定数の仕組みのP.7」)
*3 「発達障害の子の学び 過去最多18万人超 「通級」とは」
*4 「発達障害の子の学び 本当は「通級」を続けたいのに…」
国連の提唱
ところが、国連の諸具合者権利委員会からはこれらの日本の取り組みについては、2022年9月に「障害児を分離した特別支援教育の中止」を求められました。
日本の子どもたちへの障害者支援は、「分離教育」という形で行われており、そのため、結果的に社会に出てからも分離されることが当たり前になっている社会であることを強く懸念し、是正が求められている状況です。
私のNote「なぜ日本でADHDが増えているのか」においても触れましたが、国連子どもの権利状況の報告においても、同様のことがふれられております。
イタリアのインクルーシブ教育
書籍「イタリアで見つけた共生社会のヒント フル・インクルーシブ教育に基づく人々の暮らし」によると、イタリアでは1970年代からフルインクルーシブ教育を実践してきており、障害の有無に関係なく、全ての生徒が通常学級で学ぶことができる法体系になっているようです。もちろん、法律もこの間に何度か改訂され、最初は「義務教育において、障害の有無に関係なく通常学級で学ぶべき」という法律であったものが、最近では大学などの高等教育においても「統合」が規定され、対象は障害の程度によらない全ての障害者となっているようです。
この書籍は2019年に日本からの派遣団が見たイタリアのフルインクルーシブ教育の実態が書かれており、当事者やその保護者の本音が記載されています。そこには、確かにフルインクルーシブ教育のすばらしさを語る方が多いです。しかし、このフルインクルーシブも完全ではなく、全ての教員があらゆる障害者の対応にあたる必要があり、十分な指導を受けていない等、体制面での課題も多くあるという実態が記載されております。
そして、この書籍の中でも触れられていますが、イタリアでは「障害有無に関係なく、全ての人が同じ権利を得ることができる」という概念が根底にあることがこのようなインクルーシブ教育につながっているとのことです。
考察
現在の日本の学校制度はそもそも全員一律のカリキュラムで同時に同じ空間をともにして同じスピードでついていくことを生徒に求めています。その学校制度に、ついていくことが「できるか」「できないか」で分離し、できない場合には支援制度を使って、教育を受けていく仕組みです。
しかし、障害は社会が作りだしている面も少なからずあり、現在の教育制度が障害を生み出してしまっている可能性も否定できない状況であると感じています。少なくとも、私の中にも無意識に分離することが出来上がっていたように思いますし、そこが本質的な問題なのだと思います。
ただ、現状の3つの支援制度は、日本の中では様々な改訂を経ながら、作り上げてきたものであり、全てを否定するものではありません。実際にこの支援制度により、救われたお子さんが数多くいることも間違えありません。全ての人に同じ権利が与えられ、「できる」「できない」で区別するのではなく、国連の指摘が新たな分離と統合を見直すきっかけになり、私たちらしいインクルーシブ教育を作る動きになれば良いと思っています。
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