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ナイチンゲールとは戦友⁈慢性疲労症候群ME/CFSとともに生きながら患者会を頑張る理由。

私は慢性疲労症候群の患者当事者で、今は北海道で患者会活動をしています。

2018年にできた新しい患者会 北海道ME/CFS幸せたんぽぽの会。
発起人は旭川美少女図鑑に所属している代表のセイラさん、私は副代表でサポートさせてもらっています。

慢性疲労症候群の診療環境と私の望み

北海道には慢性疲労症候群ME/CFSの診療を標榜している病院はまだなくて、北海道の患者は本当に困っています。体調が悪化して「これは何か病気に違いない、気のせいや疲れなんかじゃない」と気づいてからでは、慢性疲労症候群を診ますよと標榜している病院に行ける状態ではなくなっています。

そんな中で私達の主治医をはじめ診てくださる医師には本当に感謝しています。疾患自体知っている医師に出会えることは本当にないんです。
北海道で「慢性疲労症候群をみますよ」といってくれているところが現状です。なので慢性疲労症候群を疑って受診したいと思っても、調べても病院が見つからず、困っている患者さんはみてくれる医師を探していろいろな病院、色々な診療科を放浪することになります。

道外でもみてくださる医師は限られていて、半年待ち、一年待ちもあるほど。今までみてくれていた病院も診てくださる医師が移動や退職すると、その後対応できませんとなってしまう病院は少なくなく、それがずっと繰り返されています。

どこに受診していいのかわからない、症状が辛くて困っていても相談先がない、というのは私が発症した20年前と変わりません。20年も経っているのに。

発症して20年、悪化して人の手を借りないと日常生活が送れなくなって10年目。
患者会が発足する前にもTwitter知り合った同病者の方々とポスターでそれぞれの地元の病院や社会福祉協議会、保健所などに働きかけを行っていましたが、状況が全然変わらない。「もっと効果的に医療機関や行政、医師に働きかけなければ変わらないと思うけど、どうしたらいいだろうか」と考えていたときに、「患者会やります」という代表の鶴の一声で発足した北海道ME/CFS幸せたんぽぽの会に参加させてもらっています。
今は旭川だけではなく道北、道東、道央の方々も会員として参加してくださっています。

20年前から変わらないこの状況を少しでも改善したい!
それが私の望みです。

診断に10年かかって、診断された時にはもう一人で生きていくことができなくなったような同じ道を歩かなければいけない人は一人でも少ないほうがいい。

それが私が患者会の活動をする理由です。

この疾患は耐えられない疲労感と回復しない消耗感を抱える疾患なので、働けたりまだ動ける方は自分の生活でいっぱいいっぱい。啓発活動なんて参加できないという側面があり、重症化して働けなくなった患者さんが中心的に動いているという側面があります。
私も周りに目を向けている余裕なんてほんとありませんでしたし、自分が慢性疲労症候群ME/CFSだと気がつかずにどんどん悪化していったので、啓発活動とかこの疾患についても全く知りませんでした。

ナイチンゲールと慢性疲労症候群

慢性疲労症候群ME/CFSがどんな病気なのか説明してみます。

慢性疲労症候群は別名(ほかの国で使われている病名)筋痛性脳脊髄炎ME/CFSといわれている病気です。ナイチンゲールも闘病していたといわれていて、ナイチンゲールの誕生日5月12日が世界啓発デーに設定されました。
「看護の日」として日本では有名かなと思います。

慢性疲労症候群の啓発カラーはブルー青💙です。

この日は類縁疾患である他の2つの疾患も一緒に啓発されています。
線維筋痛症FMの啓発カラーはパープル紫💜
化学物質過敏症MCSの啓発カラーはグリーン緑💚

この疾患は診断の客観的なマーカーが確立していないこともあって、理解を得るのが難しい状況です。体調不良を客観的に説明できる指標がないのです。

医師をはじめとした医療関係者にも広く認知されているわけではなく、診断マーカーがないため、症状があっても血液や画像検査で異常が見られないため、「気の持ちよう」「気にしすぎ」「神経質」などと言われることもあります。

慢性疲労症候群と同様に線維筋痛症、化学物質過敏症は診てくださる医師があまりいないことも共通していて、診てくださる医師が少なければ知見の集積も少なくなくなかなか研究も進みません。

この中では、線維筋痛症は診断ガイドラインがあるのですが線維筋痛症もまだ市民権を得ていない状況にあります。
ただ、2020年の医師国家試験の中で線維筋痛症が初めて問題に取り上げられたりなどもありましたので、今後目を向けてくださる医師や医学生が増えてくれるのではないかとも期待しています。

さて、話を慢性疲労症候群に戻します。

慢性疲労症候群は病名から「疲れの病気?」なんて思われることがあるようですが、この疾患はそんな生ぬるいものではありません。

ナイチンゲールは「晩年50年余り闘病していた」といわれているように、休んだから回復するというものではありません。
ナイチンゲールはクリミア戦争から帰った後病気になり、自室で執筆などをして過ごしました。看護師としては2年ほどの活躍だったそうです。
ナイチンゲールは名のある家の出身で幼少期から家庭教師の指導を受けるような環境な人でした。一般人ではありませんので身の回りの世話をしてくれた人はいただろうと思います。

現に私も日常生活、身の回りのことですら手伝ってもらわないとできなくなりました。
ただの疲れなら忙しかった仕事を辞めて(実際にはやめざるを得なかったのですが)ゆっくりやすめば回復するはずですが、全く回復しませんでした。それどころか発症から見ていくと、負荷の少ない仕事に切り替えていったのにどんどん悪化しました。

ナイチンゲールの晩年50年闘病て何事?と思いませんか?
亡くなるまでその病気に悩まされていたというでしょうし、記録に残るほど明らかに病的だったわけです。

これが「気の持ちよう」や「ただの蓄積した疲れ」ならどんなに良かったことか。
そしていまだにこの病は未解明の病で、ナイチンゲールと同じように闘病している人がいるわけです、私も含めて。
ナイチンゲールと病友、戦友ですね。

ナイチンゲールについてもっと知りたいという方はナイチンゲール看護研究所を見てみてください。その業績について知ることができます。(統計の父など歴史に名を刻む偉人たちが家庭教師をしていたそうです、どうりで…)

慢性疲労症候群てどんな感じなの?

慢性疲労症候群ME/CFSの倦怠感は私の体感から言うと「疲憊(ひはい)」が近いなと感じます。

疲憊(ひはい)という言葉はあまり聞きなれない言葉だと思いますが、看護を含め医療関係の教科書に出てくる言葉です。疲労や消耗が回復せず心身ともに衰弱して死に至るとても深刻な状況です。
死にいたらなくてもその状態がずっと続くのが慢性疲労症候群の状態。身の置き所がなく、寝てもいられない座ってもいられない感覚なのだけれど体を起こしていることもできない針のムシロ状態。

イギリスの統計では慢性疲労症候群ME/CFS患者の自殺率は通常と比べると7倍高かったという調査結果があります。
できていたことが出来なくなり、学校にもいけなくなり、仕事もできなくなり社会からも孤立して孤独になる。友達と遊ぶことも本を読むことも音楽を聞くこともできなくなる、光や音すら耐えられなくなる。身の置きどころもなくつらい。
仕事や収入、交友関係、趣味、将来、未来、すべてを一度に失う、そんな状況で耐えがたい苦痛がずっと続きます、今も続いています……

それなのに家族など身近な人に理解してもらうことが難しい。説明も証明もできない。
耐え難く自殺を選ぶ人がいても頷ける状態です。孤独は精神を蝕むことにも繋がりますから、鬱を併発することもあります。鬱の併発は慢性疲労症候群の症状や身を置く状況など強いストレスから発症するのか、慢性疲労症候群は脳の炎症があるともいわれているので、その炎症からくるものかは個々で違うと思います。

本人の体感でしか症状がわからず、他の人からは目に見えないし理解もできない、それが長期的に続けば「本当に具合が悪いのか」と疑いの目を向けられることも少なくないのです。
患者本人ができなくなったことを替わりにするのは身近な人・家族です。家族の負担や不満、目に見えないから信じられなくなる不信感は簡単に人間関係を壊してしまいます。
孤立するには十分すぎる理由でしょう。

これは大人だけでなく子供でも一緒です。
発症は30~40歳の女性に多いという統計はありますが、小学生から年齢の高い方まで、幅広い年齢層で発症します。

年齢、ライフステージによって配慮や支援が必要な内容は変わってきます。

そこもまた難しいところだと思います。
子供なら学びの場をどうするか、ひとり暮らしなら、家族がいたら、家族の生計を担っていたら…個々に対応が必要です。統一した支援を決められないのも支援が届かない理由の一端だと思います。


本当に困る…

ナイチンゲールの生きていた時代と同じように皆症状に耐えながら折り合いをつけながら何とか生きているというのが今の時代でも同じです。

症状に折り合いをつけてといってもそれもつらい。
症状が悪化すると本当にびっくりするくらい何にもできないのです。歯磨き1つ、洗顔一回すら毎日はできない。

それどころか日常も音や光すら刺激が強すぎて耐えられないという状況になり、真っ暗で無音の部屋で過ごさなければいけなくなるんです、実際にそんな生活を3年していました。
真っ暗な部屋で電気ポットの光にマスキングをして、空調の音や雨音に悩まされて、ノイズキャンセラーをしながらその上に大きなM3のイヤーマフ。
お布団のすぐ横にテーブル置き、持ってきてもらったご飯を食べる。体調が良ければ座れるけれど悪ければうつ伏せや横向きで、寝たままご飯を食べる。お布団から離れるのはお手洗いの時の数分。お風呂は1が月に1回は入れるはどうか。そんな生活は明らかに病的で、自分が望むはずもない状況。
やりたいことはたくさんあるのに何もできないもどかしさとそれを上回る具合の悪さ。
少し良くなった今でも、光や音があふれるテレビは見られないし、日中もカーテンは開けられす、お手洗いの時にしかお布団を離れられない生活は変わっていません。お布団から5~10歩の世界で生きています、仕事ができる状況でなくなった10年前から私の生活はあまり変わっていません。
これが怠けてるとかただの疲れなんて言われたらもう、ね。

同じように経験をする人は少ないほうがいい、そう思います。

そのためには、まずは医療のプロに知ってもらうこと、次に行政に現状を認識していただき、状態にあわせて必要な支援を受けられるようにすること。
これ以外にありません。病気を知らず、無理をして無理をして、無理をしている自覚もないまま悪化していくことは『病気を知ること』で対応が変わってくると思いませんか?そのためには病気の専門家からのアドバイスが必要です。だからこそ多くの医師にこの病気のことを広く知ってほしい。そんな病気は存在しないというのはアドバイスにはなりません。病状を抱えた患者に必要なのは、その苦しい症状との付き合い方、改善方法、悪化しない方法です。

【悪化する前に】療養と対処療法をみんなが受けられることを願っています。

ひどく悪化する前までなら、回復する方もいます。
寝たきりに近く悪化する患者さんは発症者の3割。
この疾患は発症者数は多くはないです。

一般の方には早く気づいて相談できるように、相談に乗ってくれる医師が増えるように、行政には学校に行きたくてもいけなくなった子や、仕事に行きたくても出来なくなってしまった患者さんの社会福祉の活用を全国同じくらいの水準で、万が一にもこの疾患では支援を受けられないと突っぱねることが無くなるよう願って、患者会の活動をしています。これからもそういう気持ちで活動していきます。身体や体力が持てば、資金が調達し続けたら、という制約はついて回りますが、なんとか続けて状況改善に繋げていきたいです。

患者会では #みんなでポスター啓発 と名付けてポスターで啓発活動を行っています。コンビニのネットプリントでも印刷できるようにしていますので誰もが参加可能です。全国どなたでも印刷できますので、患者さんなら身近な方や病院の先生、支援が必要な状況なのに理解してもらえずお困りの方なら地元の行政機関にご持参いただいて構いません。慢性疲労御症候群を知ってもらって生きにくさが少しでも軽くなる方がいたらいいなと願ってやみません。


研究への期待

この10年、表面上は何ら変わっているようには思えませんが、着実に研究は進んでいます。2021年4月27日にプレリリースされた研究班の発表は今後治療法の開発につながっていくことと思います。
生きているうちにこの面倒な症状から解放されたらいいなぁと期待しています。「この病気が治る時代が来たよ!」と早くナイチンゲールに伝えたいものです。


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