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所得税減税で家計は助かる?報道と政治のアンバランスを紐解く



来月から実施される所得税と住民税の定額減税について、政府は国民にその効果を実感してもらうために、給与明細に減税額を明記するよう企業に義務づけています。この政策は、1人当たり年間で所得税が3万円、住民税が1万円減税されることになっており、扶養家族の分も含めて給与やボーナスに反映されます。

【所得税減税】
所得税:3万円分減税
住民税:1万円分減税
合計:4万円分の減税

5人家族の場合
所得税:15万円分減税
住民税:5万円分減税
合計:20万円分の減税


政府の狙いと減税の実施方法

政府の狙いは、減税額を明確に示すことで国民が手取りの増加を実感し、
デフレマインドの払拭を図ることです。

今、日経平均はバブル以降の最高値を更新し、
政府はこの勢いを継続的な賃上げと
適切な物価の上昇に繋げたいのです。

鈴木財務大臣は
「賃金の上昇が現れる時期に合わせて減税を行うことで、経済の新たな局面への動きを支えていく」と述べ、
林官房長官も
「デフレマインドからの脱却につなげていくには、国民が施策の効果を実感できるようにすることが重要」と強調しています。

減税の実施方法として、給与明細に減税額を明記することが義務づけられており、企業はその対応を急ぐ必要があります。

住民税については、6月分は一律0円となり、
7月以降の11か月で減税が反映された納税額が徴収されることになります。

しかし住民税が年間14万円の場合は、
減税分がなければ月11,666円ですが、
減税されると6月分はなく、7月分では
月11,944円となります。

【所得税減税・住民税の場合】
減税なし
年間14万円
月11,666円
減税あり
年間13万円
1-5月:月11,666円
6月:なし
7-12月:月11,944円

一応、6月の住民税はないですが、
果たして国民は減税分の実感を得られるのか?

そしてせっかく減税された分を
どの消費に回すか?

注目です。

税を扱う側は不満も

一方で、企業や地方自治体には大きな負担がかかります

市役所では住民税の通知書発送作業に追われ、
定額減税のためのシステム改修が今月まで続いたと報告されています。

産経ニュースだと千葉県の松戸市の自治体の苦悩が綴られています。

県松戸市は、給与所得者向けの減税関連通知に続いて6月以降、自営業者らに通知を発送する準備を急ぐ。減税に伴う税務システムの改修は、政府が具体的な徴収方法などを示した時期が2月に食い込んだこともあり、「短期間での改修業者との調整に苦労した」(市民税課)という。

出典:産経 2024/5/24 迫る定額減税、現金給付もセットで事務負担重く…千葉県内の自治体から恨み節も

さらに、給与明細への減税額明記の義務化は、
多くの企業にとってシステム改修や事務コストの負担を伴うものです。

立憲民主党の桜井周議員は委員会の質問にて
このようなことを明らかにしました。

厚労省は6月の給与から減税を反映しない企業に罰金を科す可能性

このNoteを見ているスタートアップ起業家の皆様、
今のあなたはどんな表情をしていますか?

常日頃に業務に忙殺されている経営者や経理、
税理士の皆様の負担が
ますます増える状況となり、
今回の定額減税に反対の声もあるのではないでしょうか?

私としては手取りが増えるなら嬉しいですが、
でもその裏にこのような生臭い負担があるならば、
果たしてそれは本当に国民のためなのか?

そこは審議し、次回の定額減税の是非を決めるべきでしょう。

減税、給与未反映は罰金の可能性 年末調整のみ対応は違反に

この対応がどれだけ迅速に行われるかが課題となります。

企業側の対応が間に合わない場合、労働基準法に抵触する恐れもあるため、
早急な対応が求められます。

FNNによると前官房副長官で岸田総理側近の木原誠二幹事長代理は次のような発言をなされました。

同時に「定額減税の目的は官民でしっかりと物価高を越えていく、所得を上げていくことだ。仮に物価状況が改善せず、またデフレに戻る可能性があれば、来年も考えなければならない」と述べた。木原氏は岸田文雄首相の側近で、首相の意向をくんだ発言の可能性がある。

出典:FNN 2024/05/27 自民・木原誠二氏「定額減税」継続の可能性に言及

自民党の木原誠二幹事長代理は
「物価の状況が改善せず、またデフレに戻る可能性があれば、来年も考えないといけない」
と発言し、減税が一度きりで終わらない可能性を示唆しました。

 2回目があればこの負担をどう抑えるか?

一度考えてみるべきだ。

誰のための減税?国民のためでしょ

定額減税の政策は国民に対する経済対策として位置づけられていますが、
その実施方法や効果については疑問の声も多く上がっています。

政策が国民に実感されるためには、
ただ減税額を明記するだけではなく、
その背景や効果を丁寧に説明する必要
があります。

なぜ4万円なのか?給付じゃダメなのか?
クーポンじゃダメ?なんで企業に負担を求めるのか?

前段階としてマイナンバー等のデジタルトランスフォーメーションを推進し、
迅速な対応で減税できる環境を本来は整備した上で、
減税できる対応を整備すべきだったはずです。

2023年6月の一回限りの減税にこの労力を使うのは、
いかがなものか?と感じます。もしこの労力を次に
使う機会があれば、ぜひ自治体のDXを前提条件で出したい。

特に中小企業への負担やシステム改修の現実的な問題を無視して
進められる政策は、その効果を発揮する前に多くの反発を招く可能性
があります。

日本の約9割は中小企業であり、大企業やスタートアップではありません

政府としては、減税の効果を最大限に引き出すために、
企業や自治体との連携を強化し、国民に対する説明責任を
徹底することが求められます。

所得税減税は家計を助ける一助となるかもしれませんが、
その実効性を確保するためには、
より広範な視点からの政策の見直しと調整が必要
です。

まとめ

所得税減税は一見すると家計を助けるための有益な施策ですが、
その実施に伴う課題や負担を考慮すると、単純な成功を見込むことは難しいです。

政策の効果を最大限に発揮するためには、
政府が国民や企業に対する説明を徹底し、
迅速かつ柔軟な対応が求められます。

個人的には自治体と政府の業務はそれぞれ状況が異なるため、
霞ヶ関のルールを仙台市に持っていくべきでは
ないと考えております。

政府は今後も政策の見直しと調整を続ける必要があり、
その過程で国民の声を反映させることが重要です。


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