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わずか49日、リズトラス前首相とは?


リズトラス首相とは?

2022年 ボリスジョンソン首相が辞任し、後任として首相に就任したのが
当時の外相であるトラス首相です。

イギリスで3人目の女性首相は、ジョンソン政権の継承とともに
経済回復を期待されるものの、後述の政府の行動により、
市場に著しい悪影響を与え辞任しました。

その期間はわずか49日です。

イギリスのリズ・トラス首相が20日、辞任を表明した。首相就任から45日しかたっておらず、実質的な在任期間は史上最短となる見通し。与党・保守党は今月28日に党首選を終える予定。一部報道によると、ボリス・ジョンソン前首相が党首選に出馬する可能性があるという。

出典:BBC 2022/10/20 トラス英首相、辞任を表明 就任から45日で在任期間は最短

そのトラス首相の後任が現在のスナク首相でして、
イギリス史上初のインド系イギリス人の首相が誕生しました。

今回はトラス首相の生い立ちとともに解説いたします。

幼少期〜

1975年7月26日、オックスフォードにてトラス氏は誕生します。

父はリーズ大学の数学教授、母は看護師といった家庭で育つトラス氏ですが、
実はトラス氏の両親は彼女が現在所属する保守党ではなく、
労働党の左派であったのです。

イギリスは主に保守の保守党とリベラルの労働党、
2つの二大政党制ですが、長らく政権を握っているのは
どちらかといえば保守党でもあります。

だから日本の自民党とイギリスの保守党って
結構似ていて面白いんですよね!

同じ島国ですし、どちらも美しい文化や自然、伝統を持った
国々でもありますから。

幼少期はポーランドのワルシャワやスコットランドのペイズリーを
はじめとして、イギリス国内外を転々とする生活を送り、
マートン大学に進学します。

在学中は哲学、政治、経済を読み、1996年に卒業。

大学在学中はイギリスの自由民主党で活動し、
オックスフォード改革クラブのメンバーでもありました。

自由民主党青少年学生の全国執行委員会のメンバーとなり、
自由民主党員として、トラスは君主制の廃止大麻の合法化を支持し、
1994年の刑事司法および治安維持法に反対する運動を行いました。

なおこの学生時代に団体の党首のパディ・アッシュダウン氏は"a good debater and is utterly fearless"(「優れた討論者であり、まったく恐れを知らない」)と評価している。

その後、1995年のことです。

トラス氏は保守党の政策や理念が正論を言っていることに気づき、
自民党批判し、イギリス保守党に入党します。

保守党としてのキャリア

1996-2000年、ロイヤル・ダッチ・シェルに就職したトラス氏は
公認管理会計士の資格を取得しました。

そして2000年に彼女はケーブル・アンド・ワイヤレス社に転職し、
経済部長の地位に昇進し、2005年に退社するなど、民間での
キャリアでも大きなステップを弾ませます。

個人的には政治家が民間企業で働くことは
現場を知る上で本当に大事だと思います!

アルバイトでもパートでもいいので、
1000円頂くための苦しみを知る機会って
やっぱり現場しかないと思いますから、ぜひやってほしいですね!

ただ政界でのキャリアには躓いていました。

イギリス首相になっているのに、躓いた?と思うかもしれませんが、
グリニッジ・ロンドン自治区議会選挙に2度立候補し、1998年にはヴァンブラ区、2002年にはブラックヒース・ウェストコム区
立候補しいずれも落選しています。

日本人にはイメージしづらい部分があるかと思いますので、
大雑把に訳してイメージすると、文京区議会議員選挙
2回落選されているイメージです。

首都の区議会で2度の落選を経験したトラス氏ですが、
その後結婚し2006年の選挙ではエルサムサウスの議員で選挙に勝利し、
見事3回目で地方議員の切符を手にしました。

しかし2010年は再選を目指さず、2009年10月、彼女は党員によって
南西ノーフォーク選挙区に選出されたことによって、
国政に挑みます。

国政に挑戦

南西ノーフォーク選挙区に挑戦するトラス氏ですが、
当然生まれも育ちもノーフォークではなく、地盤がなく
一部騒動になったこともあります。

2010年の総選挙で勝利したトラス氏はついに国会議員となります。

当時は保守党は下院で単独過半数を持っていなかったため、自民党と連立を組み、
キャメロン政権が生まれます。

国会議員に当選後、トラスは自身の選挙区内にあるマーハム空軍基地の
トルネードGR4空軍基地の維持、古い航空機を約150機の新型F-35攻撃機
置き換えるなど、選挙区に関連する問題を訴えて選挙運動を行った

2011年は30 人以上のサッチャライト保守党議員で構成される
フリー エンタープライズ グループ (FEG) を共同設立します。

日本でいう保守議連であり、この前年に『After the Coalition』という
最高税率の1ポンド当たり40ペンスへの引き下げや、
汚染を減らすための炭素税の導入など、多くの政策を提唱している本を
出版しています。

"the British are among the worst idlers in the world. We work among the lowest hours, we retire early and our productivity is poor" 「イギリス人は世界で最も怠け者の一人である。私たちは最低時間で働き、早期退職し、生産性は低い」

出典:ブリタニア-繋がりざるもの

別の本でこのような言葉を発言され、一時問題となりました。

特に政界での初期のトラス氏の功績は、
数学の授業のレベルを上げたことです。

日本ではOECD上位の数学力がありますが、イギリスは
26位と決して高くないレベル
です。

そのために数学の義務教育を18歳までに上げ、厳格化することで
数学のレベルを高めていく狙いこそ功績でしょう。

2013年教育担当政務次官、いわゆる文科副大臣の役職に任命され、
保育コストの費用削減のため、職員1人あたりの子供対応数を
3→4人に増やすべきではないか?との言及もありました。

こちらもまた物議を与えた発言ですね。

その後、この言及内容が労働組合や保育士からの否定的な反応を受けて、
トラス氏はニック・クレッグ副首相と面会し、クレッグ副首相は
「一部は問題ない」が、保育士の最大増員は
「行き過ぎ」であると告げ、規定を見直すようアドバイスされ今日に至ります。

2014年7月、環境・食糧・農村問題担当の国務長官(日本でいう内閣府匿名担当大臣の農林水産省、環境大臣級)に任命されたトラス氏はミツバチの個体数減少に対抗するための対策や農地上の太陽光パネルの補助金を削減した。

2016年以降は法務長官、財務長官、国際貿易担当国務長官および貿易委員会委員長に順調にキャリアを歩み、
トラス氏は初めての米国訪問で米国人のロバート・ライトハイザー氏(トランプ政権閣僚)と会談し、コール氏とヒール氏が「扇動的」と表現する
米英貿易協定の可能性についての演説を行った。

なおロバート・ライトハイザー氏は日本も苦戦する交渉相手として、
安倍晋三回顧録でも登場されている方ですので、
要注目です。

2021年、外相に就任したトラス氏は世界各国の外相たちと交流し、
名前が広まります。

日本でもこの時に名前を知った方は多いのではないのでしょうか?

外相中はウクライナ問題や北アイルランドとの交渉に取り組まれ、
成果を上げてジョンソン首相が辞任された後、トラス氏は
保守党の党首選挙に立候補します。

わずか49日の辞任

結局、辞任の理由はミニバジェットが現在のロシアウクライナ問題で
起きたインフレ市場に合わなかった政策であったことです。

イングランド、ウェールズ、北アイルランドにおける最高税率(45%)の所得税を廃止

2023年4月から法人税を19%から25%に引き上げる計画を撤回

この2つがおもにミニバジェットで盛り込まれた施策ですが、
当然この部分の税収は減り、この当時に政府からの借金で財源を賄うのは
非常にリスキーであったことから、市場は
株価安、通貨安、債券安のトリプル安を与え混乱してしまいました。

この結果が辞任だったのです。

もしもう少し平時の時代であったりとか、ミニバジェットを持続的な政策として
長期的な視点で行えれば良かったかもしれませんが、
いずれにせよイギリスにとって衝撃的な出来事でした。


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