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大展望の霊山へ

北信五岳(ほくしんごがく)の一座、飯縄山。
この周辺は子供の頃からスキーで親しんできた。
50年近く前からか。変わったものもあれば変わらないものもある。
変わらないものは少数であろう、何せ記憶が変わっているであろうから。

この山は何度となく登り返してきた。
こだわりがあるわけでは無い。ふと行きたくなる山なのだ。
ここ数年はいずれも雪景色のなかを歩いている。
以前、山中で出会った人は毎日の日課として登っているという。
地元の名峰は大概このような人がいる。

葉を落とした木々の間から朝陽がさす

雪の少ない年である。
それでも雪は登山口から続いている。
東から登ってきた陽の光が、群青の空をしだいに薄くしていく。
緩やかな斜面をのんびりと歩いて標高を上げていくと、空が大きく広がっていく。
それと共に快晴の空が濃くなっていく。
雪を纏った斜面は存外急で途中滑り止めをつけた。

青い空の下北アルプスの白い峰々が連なる

今回歩いた南登山道は、途中13体の石仏が点在している。
見落とさないよう、一体一体に手を合わせながら進んでいく。
雪が少ないので13体全てを拝むことができた。
山上には飯縄権現が鎮座する。
しかしこの時期お社は雪に埋もれている。

雪に埋もれながらも存在感ある飯縄権現

お社に向かうトレースは無く、ただ静かに雪解けを待っているよう。
山頂は南峰から北に500mほど行った先にある。
高低差はほとんど無いが前日の積雪でフカフカの道は嬉しくも大変です。
北峰は立派な山標が建ち360度の大展望が広がる。

飯縄山北峰
歩いてきた道を振り返り南峰を臨む


山頂からの眺めは人の心を震わせる。
純白の雪。
その先に広がる宇宙まで見透せる群青の空。
時を忘れこの景色を楽しむ。この色を、身体を吹き抜ける風を、冷たく澄み切った空気を、神秘の音を、この場の私を受け入れる自然を楽しむ。
この時を、自分自身を愉しむ。

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