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Wicked――私をミュージカル沼にはめた作品

そういえば、いつかやりたいと思っていたことの一つに「Wickedの魅力を広める」があった。2022年の年末、今、やるしかないでしょう!!!

ミュージカルは興味あるけど観たことなかった人、いや全く興味ないって人、そもそも劇中に歌い始めるのが理解しがたい人、ぜひ一回読んで、来る2023年のバケットリストに「Wickedを観る」を入れよう!と思ってくれればめっちゃめちゃ嬉しい。

Wickedとは…?

2003年に初演を迎えたミュージカル作品。児童向け文学作品の『オズの魔法使い』を別の視点と時間軸で切り取っている。現在も初演と変わらずニューヨーク・ブロードウェイのガーシュイン劇場でブロードウェイの看板作品として老若男女問わず多くの観客に親しまれている。

(ブロードウェイHP)

これ見ただけで鳥肌立つんだな~

「何故、西の悪い魔女は『悪い魔女』になったの?」

日本では2006年より、物語を短縮した35分版のミュージカルをユニバーサル・スタジオ・ジャパン内「ランド・オブ・オズ」のシアターで上演していたという(現在はランド・オブ・オズというエリアもない)。当時は歌は英語、セリフは日本語で物語が進んだ。

その約1年後、劇団四季が完全日本語版のミュージカルを上演開始。当時東京近郊に住んでいた人は、緑の魔女にささやく白い魔女のポスターを見かけたことがあるかもしれない。

(劇団四季HP)

Wickedの意味

形容詞
1.〔人や行為などが〕ひどく悪い、不道徳な
2. いたずら好きな、悪ふざけの
3.〈俗〉とても良い、素晴らしい、優れた、最高の、すごい◆【同】excellent ; wonder ; great
4. 意地が悪い、(人)にひどいことを言う
5. 危険な、物騒な
6.〈話〉〔状況などが〕苦しめられる、耐えられない、厳しい
7.〔味や匂いなどが〕不快な、吐きそうな、気持ちが悪くなる
副詞
8.〈俗〉とても、非常に、すごく、途方もなく◆【同】very

参考:英辞朗 on the WEB

…いい意味ではないけど、このタイトルにおいては1.(=悪、邪悪)が最も近い意味になると、私はとらえている。ちなみに、こうした悪い意味の単語は「やばい」「すげえ」的なニュアンスでスラングとして使われることもある。

一番有名な(だと個人的には思ってる)"Wicked!"は、ハリーポッターと秘密の部屋で、ハリーとロンが初めて出会うシーン。有名人・ハリーの額にある傷を見て、ロンが一言。(余談すぎた。割愛可能!!!)


登場人物

・エルファバ(Elphaba)
 緑色の肌で生まれた主人公。自分が「善い」と信じたことに対してまっすぐ。外見のせいで周囲から嫌厭されるが、実は優れた魔術を持つ。のちの『オズと魔法使い』に出てくる西の悪い魔女

・グリンダ(Galinda)
 美人で負けん気強く、人気者なもう一人の主人公。自分の外見と名声で高い地位を得ることを望み、魔法に憧れているが才能はない。エルファバとはシズ大学の同窓生で、出会った当初は他の学生達とともにエルファバを仲間外れにしていた。のちの『オズと魔法使い』に出てくる南の良い魔女

フィエロ(Fiyero)
 
オズ西部「ウィンキー王国」のイケメン王子。自由に遊んで暮らす人生を求める。シズ大学でエルファバとグリンダと出会い、2人の間で三角関係に。のちにオズの魔法使いの宮殿の衛兵隊長となる。

・ネッサローズ(Nessarose)
 エルファバの妹。生まれつき脚が悪い。ボックが優しく接してくれたため、ボックを好きになる。のちに父の跡をつぎマンチキン国の総督を務める。

・ボック(Boq)
 マンチキン人の男性。シズ大学でグリンダに一目ぼれする。グリンダの要望でネッサローズに優しく接し、以降ネッサローズの付き人になる。

他にも個性豊かなキャラクターが出てくるけど、ここを押さえれば大方の相関図を把握できるはず。

自作の相関図、分かりにくくてごめんね!

登場人物のうち誰かには共感できること間違いなし。キャラの個性が強すぎて、自分と合わないキャラにはとことん不満を覚えるかも(笑)それだけキャラクターの作り込みが素晴らしい。

Wickedの魅力

・音楽が美しい
 言わずもがな。ミュージカル・ナンバーどれも魅力しかないのだ。細かい話は後半に。オリジナル・ブロードウェイ公演はトニー賞3部門、ドラマ・デスク・アワード6部門、ミュージカルのキャスト・アルバムはグラミー賞を受賞する実力派。

・ストーリーの多層性
 
差別を中心とした社会問題、友情・愛情の本質、自己と社会とのはざまで生きることの葛藤、善と悪との線引き、「幸せ」とはなにか――噛めば噛むほど味が出てくるし、ストーリーの解釈も変わってくる。ここがディズニー系のミュージカル作品とは圧倒的に異なる部分。

この作品は、アメリカとイランが湾岸戦争をしたことがきっかけで草案が思いついた、とも言われている。何が善で正義かは、立場によって全然変わることを突きつけられる1作。

・劇場のセットが豪華!
 
劇中のセットの細かさ、キャストの衣装は1点1点違うんだって。日本版のも確かミュージカル版のをめちゃめちゃ再現して作りこんでいた気がする。あのセットは2016年に終演してから、どこに行ったんだろう。オープニングからエンディングまで、とにかく劇場全体を使って表現するから、目も忙しい。

・オズの魔法使いの伏線回収
前述の通り、ストーリーが児童向け文学作品の『オズの魔法使い』の所謂スピンオフ作品という位置づけになっている。(伏線回収が上手いか下手かは置いといて)オズの魔法使いとのつながりを意識しながら作品を鑑賞するとより楽しむことができるはず。

私とWickedとの出会い

私は高校3年生の時に学校の「芸術鑑賞」という一日行事でたまたま劇団四季のWickedを鑑賞した。大学受験を控える高校3年生に、何を見せるのか、と「オズの魔法使い」のあらすじを含む予習なしに劇場に観に行った。

実は、高校1年生の時も同じ行事で「オペラ座の怪人」を鑑賞した。当時の理解力の乏しさと、どのキャラクターにも感情移入できない自分自身の人生経験の少なさで、鑑賞自体があまり面白かったとは言えなかったため、作品への期待値は低かった。

ただ、幕が開くと一気に世界観に引きずり込まれ、各キャストの歌唱力・表現力に感動し、エルファバのまっすぐな想いに共感し、グリンダにいら立ちを覚えた。とにかく、幕が閉じるまで心が忙しかった。これまでにこんなに心が忙しくなったことはなかったと思う。

帰りの電車の中でも、作品の中で突き付けられたメッセージが頭の中を駆け巡り、キャストたちの歌声が耳から離れず、未確定の将来に対する不安と合わせてただただため息が漏れたことだけを覚えている(一緒に観賞した同級生が感じたこととは、多かれ少なかれ個人差がありそうだったけど)。

帰宅した後にWickedの作品の背景やオズの魔法使いとの関係性を調べつくし、知らずに観てしまったことを後悔したほどだ。

…ということで、一旦オズの魔法使いについて紹介するね。
(興味ない人は飛ばしてOK!)

The Wizard of Oz

アメリカ合衆国カンザス州の農場で暮らす少女・ドロシーが竜巻に家ごと巻き込まれて、飼い犬・トト と「オズの国(Land of Oz)」の中にある「マンチキン」の国へと飛ばされてしまう。

落ちた家は、マンチキンたちを独裁していた東の悪い魔女を圧死させる。北の良い魔女がやってきて東の悪い魔女が履いていた不思議な力を持つ銀の靴をドロシーに授ける。北の良い魔女はドロシーに家に帰れる唯一の方法は、エメラルドの都へ行き、壮大な魔力を持つオズの魔法使いに頼むことだと語る。ドロシーは旅に出ることを決め、北の良い魔女はドロシーを大事故から守るため、おでこにキスをして魔法をかける。

旅の途中、ドロシーは棒に引っ掛かったカカシを助け、ブリキの木こりに油をさし、臆病なライオンと出会う。カカシは脳を、ブリキの木こりは心を、ライオンは勇気を手に入れる願いを魔法で叶えてもらうため、ドロシーと共にエメラルドの都に向かう。エメラルドの都の門で門番に会うと、街の輝きで目が眩まないように緑の眼鏡をかけるように言われる。ドロシー一行は一人ずつ呼ばれ、それぞれが別々の魔法使いに会う。魔法使いは、もしオズ王国の中にある「ウィンキー」の国を独裁する西の悪い魔女を殺せば全員の願いを叶えると語る。

西の悪い魔女は一行が近づくのを見つける。(中略)そして魔女はドロシーの銀の靴を手に入れることを企て、ドロシーを自分の奴隷にしようとする。悪い魔女はドロシーを騙して銀の靴の片方を脱がせることに成功するが、怒ったドロシーが魔女にバケツの水を思い切りかけると、西の魔女は溶けて消えてしまった。

一行がオズの魔法使いに再会した時、トトが王座の隅のスクリーンを倒してしまうと、本物の魔法使いが現れる。彼は老人の詐欺師で、ネブラスカ州オマハから気球でオズにやってきたと語る。魔法使いはカカシに新しい脳(糠と針を詰めた頭)を、ブリキの木こりには絹の心(おがくずを詰めたハート型の絹の袋)を、臆病なライオンには勇気が出る薬(四角の緑の瓶から出した液体)を与える。彼らは魔法使いの力を信じているため、これらをもらって喜ぶ。魔法使いはドロシーとトトをエメラルドの都から家に気球で連れていくと語る。離陸時、トトが子猫を追い掛け、ドロシーがそれを追うと気球は魔法使いのみを乗せて飛び立つ。

ドロシーは飛ぶ猿を集めてトトと共に家に飛ぼうとするが、彼らはオズ王国を囲む砂漠を飛び越えることはできないと言う。緑の髭の兵士がドロシーに南の良い魔女グリンダが家に帰らせてくれるかもしれないと助言し、一行はオズのカードリングの国に住むグリンダに会う旅を始める。ドロシーは再び飛ぶ猿を集め、山を越えてグリンダの国へ行く。グリンダは一行に挨拶し、ドロシーが履いている銀の靴こそが望む場所へ連れていってくれると明かす。ドロシーは一行たちと抱き合い、一行たちはそれぞれが新しい国へ行くことになる。ドロシーはトトを腕に抱き、かかとを3回合わせ家へ帰ることを唱えた。ドロシーは旋回して空中に浮かび、カンザスの平原の芝に転がり、自宅にたどり着く。

影響を受けた作品/影響を与えた作品

私自身、作品の研究者や評論家ではないので、簡単に。世の中に沢山の影響を与えてきたことが分かれば幸いだよ。

影響を受けたのは「不思議の国のアリス」という一説がある

・ジブリ作品「ハウルの動く城」の原作である「魔法使いハウルと火の悪魔」が影響を受けていたという。「ハウルの動く城」カカシのカブの設定も原作とは違うみたいだけど、ついついオズの魔法使いの影響を連想してしまう。

・アメリカの学園ドラマ「Glee」でもミュージカル初演キャストのイディナ・メンゼル(エルファバ役)クリスティン・チェノウェス(グリンダ役)がゲスト出演した。本気で今後誰も超えられない黄金コンビだと思う。

・エルファバを務めたイディナ・メンゼルは、2004年のトニー賞でミュージカル主演女優賞を受賞(当時、クリスティン・チェノウェスとダブルノミネート)。その後、ディズニー作品「アナと雪の女王」でエルサ役として"Let It Go"を歌い上げる。アナと雪の女王とは、2人の女性主人公というストーリーの類似性とイディナが配役されたという共通点からよく比較される。

これだけは聞いておこう!

ここまでつらつらと書いたけど、やっぱ歌を聞いた方が早い。私の好きな歌を、独断と偏見で構成したランキング形式でご紹介。

3位:グッドニュース "No One Mourns the Wicked"

 オープ二ングで一気に世界に引き込まれる。下には2021年9月14日にブロードウェイ公演がコロナ後に初めて戻ってきたときの録画を持ってきたよ。初演グリンダ役クリスティン・チェノウェスのメッセージのあと、印象的なイントロからスタート(3:12あたり)。曲は入らず、歓声とスタンディングオベーションで動画が終わっちゃうので、別途貼っとくね。でも、この待ちわびてた観客の熱気をぜひ感じてほしい。

2位:あなたを忘れない ”For Good”

 フィナーレ前の曲。2人の友情を確かめ、自分たちが社会でいるべき場所へと向かう前の曲。もっと良い友情の在り方、自分自身の生き方があるんじゃないの?とも思う子どもな私だけど、2人の決意が強いことがよく分かる1曲。日本語版(劇団四季)と英語版(Glee版)で。

このGlee版もなかなかいいんだよね。本物のセット使ってて、ストーリーともぴったりで。

1位:ポピュラー "Popular"

 グリンダの魅力が全開する1曲。グリンダ嫌な奴~と思っていたけど、この曲を聴くと憎めないんだよな~。2022年3月に初めてグリンダ役に黒人として抜擢され、現在も舞台に立っているブリトニー・ジョンソン(Brittney Johnson)のPopularとオリジナルキャスト版を。

絶対的特別賞:自由を求めて ”Defying Gravity”

 すいません、3位以内に収められなかった。私が泣いた1曲。ミュージカルは2部構成なんだけど、これで前半の第1幕が終わるのよね。この歌を歌いながら、エルファバは大きな敵に1人で立ち向かう決意を固めていく。

この構成はアナ雪とも同じで、アナ雪を見て泣けるのはこの影響もあるのかも。やっぱりトニー賞受賞時のやつかな~。Glee版も好きだから載せとく~

最後に

長い長い私の好きなものプレゼンにお付き合いいただきありがとうございました!!!

どうしてこんなにアツいのかというと、2023年10月19日、劇団四季にWickedが7年ぶりに帰ってくるから。そして、2024年と2025年にアメリカで前編後編に分けて映画化するというから!!!映画版では、アリアナ・グランデがグリンダ役を、シンシア・エリボがエルファバ役を担うそう。

だから、今から予習しておけば余裕で間に合うのだ。

これを機に、ぜひバケットリストに「Wickedを観る」を追加してくれたら。

(あとがき)
いや~Youtubeあさりまくったね。
他に鳥肌が立った動画として、以前にもインスタグラムのストーリーにアップしたんだけど、ブロードウェイ版アナ雪の初演キャストによる”For the First Time in Forever”を。朝の情報番組で配信された動画なんだけど、朝からこれ聞けるの最高すぎない???

ついでに劇団四季版も(1:40から)。

日本でももっとミュージカルが日常に溶け込んだらいいのにな。

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