「煙と蜜」第一集〜第三集感想

 こんにちは、雪乃です。「煙と蜜」の感想、日記だけでは書き足りなかったので書きたいと思います。

 「煙と蜜」の舞台は大正時代の名古屋。十二歳の花塚姫子と、三十歳の陸軍少佐・土屋文治。二人は十八歳も歳の差がありますが許嫁。そんな二人の関係性を描いています。

 まずね、ヒロインの姫子ちゃんが本当に可愛い。普段は年相応の十二歳なのですが、こちらがドキッとするくらい大人っぽい表情を見せるシーンがあってもうたまりません。愛くるしい大きな瞳に、年齢を超越したような不思議な煌めきが宿る瞬間があって。医師から母親の薬についての話を聞いているときの表情にはあどけなさがなく、一本通った筋を感じられるところも好きですね。このシーンの姫子ちゃんを見て、文治さんも驚いたような顔をしているのが印象深いです。
 大きなリボンにおかっぱ、華やかな着物に洋風のエプロンという出立ちもめちゃくちゃ好き。

 そしてもう一人の主人公と言えるのが、姫子ちゃんの許嫁である土屋文治さん。表紙を見た時点で本当に顔が好きで、「私絶対にこのキャラにハマるな」と確信していました。
 文治さん、本当に色気がある。このダウナーな色気がぶっ刺さりました。一つ一つの所作が丁寧に描かれていて、すごく品があります。タバコの煙にすら色気を感じます。
 文治さんは目にハイライトが入っておらず、また目の下には常に隈があるのですが、目がすごく優しく感じるんですよね。でもその一方で、姫子ちゃんを貶めるようなことを言った軍曹を見下ろすときの冷たい目も好きです。

 この二人以外にも魅力的な登場人物が登場します。花塚家で働く女中さんたちも個性豊かで可愛い。とくに龍子さんは作中随一の姫子お嬢様強火担なのですが、女中とお嬢さまという関係性すら超えた感情を抱いているところが最高にゾクゾクしました。深淵のような色香にも圧倒されました。

 姫子ちゃんの学校の同級生である鬼頭リンちゃん。睫毛バシバシのツンデレお嬢様。姫子ちゃんの許嫁がえらい歳が離れていることを知って、思わず「だっておじさんじゃない⁉︎」って言っちゃうところも正直で好き。

 陸軍サイドの推しは寿中尉です。顔が本当に良いです。「怖いお人や」という台詞がありましたが、もしかして関西方面出身なのでしょうか。今後もコンスタントに出続けてほしいです。

 煙と蜜、セリフのないシーンがすごく美しいです。三ページにわたって一切セリフがない文治さんの食事シーンが六話にあるのですが、食べ方がとても綺麗。まるで至近距離で文治さんを本当に見ているかのようなドキドキ感を味わうことができます。途中軍服の上着を脱いでシャツの首元のボタンを外すシーンで致死量の色気を感じました。

 もう一つ好きなセリフのないシーンがあるのが七話。ベルトをして上着を着て軍刀を装備して手袋をして軍帽を被る。その一連の動作が美しくて。同時に、姫子ちゃんですら知らない文治さんのカッコいい瞬間を私が知ってしまっていいのかとも思ってしまいました。

 セリフがないシーンも好きなのですが、セリフの言葉選びもすごく綺麗で。姫子ちゃんが文治さんの声を「深い水の中を揺蕩う柳」に例えるところなんてすごく日本語が美しくて、姫子ちゃんの言語センス本当に十二歳ですか?

 そしてもう一つ好きなセリフが、十四話で文治さんが姫子ちゃんに煙草の話をするシーン。

私が好きなのは冬の晴れた日
それが吐いた息なのか煙なのか分からないくらい
きんと冷えた空気の中
何者にも邪魔されず
上へ上へと昇っていく煙を見上げる時
ああいう時の煙草は格別にうまいですね

 煙草に関する表現としては、この文治さんのセリフが一番好きかもしれません。見開きで空をバックに煙草を吸う文治さんの後ろ姿と「上へ上へと昇っていく煙」が一体となった絵がすごく綺麗でした。

 柔らかさと色気が絶妙に同居する「煙と蜜」、完全にハマりました。次の単行本も楽しみです。

 本日もお付き合いいただきありがとうございました。