手作り手土産に添えられた南天のメッセージ
GoToイートが本格的にスタートし、外食する機会が増えてきた人もいるだろう。しかし、在宅勤務続行中の私は、行きたくても会社帰りに一杯なんていうお楽しみもなく、かといって自分からほいほい誘っていいものだろうかと躊躇している。
というのも、年老いた父母や子どもと暮らしていて、まだ不安と思っている人もいるだろうし、そういう人を見誤って気軽に誘ってしまい
「なんて不謹慎!常識ないわね!」
なんて思われたら切ないし・・・などとグチグチ考えるとなかなか誘えない。ということで、誘われるのを待ちつつ、ラインの着信音が鳴るたびに
「お誘いきた!」
と喜ぶも無料ラインスタンプ欲しさに登録した会社からのメッセージというむなしさ。
それでも、
「久しぶりに会いたいね~」
なんて言ってくれる友達もいるわけで、でもまだちょっとね~なんて他愛もない会話をしつつ、お互い探りをいれていると
「うちカフェやる?」
という流れになることが多くなった。
密を避けられるし、テイクアウトも充実してきたし、これがなかなか楽しい!
自分のおうちに招いての本物のうちカフェも数回開催してみた。
準備が面倒と思っていたものの、2人くらいのご飯を作るのはさほど苦労もなく、しかもいつも人様にご飯を提供し続けている女子たちは、
「人が作ったご飯を食べられるだけで幸せ」
と感じる人が多く、単なる照り焼きチキンでさえ
「うまい!うますぎる!」と大絶賛。
褒められるとどんどん調子に乗る子なので、最近ではジャムや豆花を作って瓶詰めにして手土産まで渡すようになった。
友達家にお邪魔するときも手土産は手作り。
以前は、百貨店でたいそうなお菓子セットなんぞを購入して持参していたのだが手作りにはまったのと、手作りの温かみや以外な味わいにはまり、自分の料理がうまいかどうかはさておき、あれやこれやと作っては押し付けてくるようになった。幸いなことに、おいしい!と言われているので迷惑にはなっていない模様。
そんなうちカフェ仲間の一人の実家が奈良にあり、「たまには奈良にこない?」と誘ってくれたので、いってみることにした。実家でピアノの先生をしている友人の生演奏を聞きたかったのと、一番のお楽しみは、演奏会のときに着ていた数々のドレスの無料コスプレ体験!
代々受け継がれる押し寿司の型
「ランチ準備するよ!」
といううれしいお言葉をいただき、おいしくいただくために腹を空かせてお邪魔した。早速、お母さまにご挨拶と台所にお邪魔すると、一生懸命何やら作成中。
ご飯を何かに詰めている。
よく見ると、桜やイチョウ型でかわいい。
酢飯を型の中にギュッと押し込め、さらににマグロの缶詰を醤油、酒、みりんで煮込んだものをたっぷりとのせ、桜やイチョウ型の押し棒に体重を一気にかける。あっという間に押し寿司完成!
レトロな木型をマジマジとみていると
「この型はね、おばあちゃんが若いころからの物だからもう100年は使い込んでいるのよ。だから、ところどころヒビが入っちゃってね」とお母さま。
確かにヒビが入っているものの、長く大切に使われたきたからか、年月を経たからこその色味、滑らかな肌さわりなど、見た目も触り心地も素晴らしく、まだまだ現役。
使っていた人が亡くなった後もこうして使い続けているとその人の思いまで受け継がれるような気さえしてくる。
とまあ、かっこつけたことを思いながら見ていたのだが、酢飯の香りとマグロを煮詰めた醤油のあま~い匂いに誘われおなかがギュルンギュルン。
「あら、食べていいのよ」
とお皿と箸を持ってきてくれ、初めていったおうちなのに、遠慮せずにパクパクと次から次へと平らげた。
作りたては美味しいし、何よりおいしいと子どものように食べている私を温かく見つめてくれる友達のお母さんのまなざしが優しい。
実家でお母さんに甘えているような気分になってしまった。
南天の葉っぱに込められた思い
あまりにバクバク食べたからか
「お土産に持っていく?」
とお皿にたんまりと押し寿司。
こりゃ、夕飯も押し寿司堪能できるぞ!とホックホック。
と気になったのが添えられていた大きな葉っぱ。
「これ、なんですか?」
「南天の葉っぱよ。お祝いのお赤飯なんかに飾られている縁起物で、消毒作用もあるし、見た目にも華やかでしょ」とお母さま。
そういえば、赤飯に緑の葉っぱのってたっけ。
すると横に座っていた友達のお父さまが
「南天のど飴って聞いたことない?南天の葉っぱは赤い実がつくんだけど、その実を使ったのが南天のど飴。」
ほお!知らなかった。と興味深く聞いていると、
南天は、「難を転じて福となす」「成る天(万事が成就する)に通じることから縁起物の木として昔から床の間に枝を飾ったり、家を新築したときに鬼門の方角に植えたとのことで、友達の家にも南天の木があるとのこと。
葉っぱだけみていると、かわいらしいのを想像したのだが実際はうっそうと生い茂っていた。南天の木と言われないと雑草が巨木化したとしか思えない。あ、失礼。
はげちょびんにしてもどんどこ育つのだとか。
南天がさらに気になってグーグル先生で調べたところによると
南天は、漢方の元祖、中国が原産で平安時代に日本に渡り、室町時代には公家や武家に親しまれ、江戸時代にはどこの家にも南天の木があり、縁起物というだけでなく、「火災よけ」「悪魔よけ」として植えられたそうな。
南天の枝の置き場所
江戸時代にはどこの家にも南天の木があったようだが、秋田の実家に南天の木はなかった。近所にも南天の木を植えている家はなかったんじゃなかろうか。赤い実をつけている木を見かけたことがない。
関西にきてから庭に赤い実をつける木を植えているお宅をみかけるようになった気がする。ということで、近所にできたニュータウンを不審者のごとく徘徊してみたところ、1軒だけインターフォンの横に赤ちゃん南天を発見!
方角的に鬼門(北東)の方角ではなかったから、ひとまず悪魔よけに、もしくは不動産やのプレゼントとみた。家主に聞いてないけど。
南天の話が面白くて、フムフム聞いていたらそんなに気に入ったの?といただくことに。葉っぱだけかと思いきや、枝ごとちょん切っていただいた。
はげちょびんに仕上げても、すぐに成長するとのことだから縁起をおすそ分けしても痛くもかゆくもない。
せっかくなので、うちの鬼門に置こうかなと思ったものの北東は狭いベットルーム。わっさーと置くと邪魔なだけなので、かわいくコップにいれて飾ることに。
もらってきた枝はというと、あまりにわさわさして枝葉を広げ、置くところがないので庭に。一応裏鬼門(南東)だから、置く意味はあるだろう。
火災よけ、さらには悪魔よけとしての効果を発揮する南天の木。
今現在、個人的な悪魔は、鳩とイタチなので、鳩・イタチ対策となってくれたらこれ以上うれしいことはない。
手土産に添えられた南天の葉っぱは、消毒作用と言っていたものの、添えることで華やかにし、さらには、縁起=あなたといい縁ができました、よいこと(縁)があるように祝い祈るという思いも込めて添えてくれたんじゃないかなと勝手に思い、ほっこりしながら押し寿司を最後までいただいた。
お母さま、おいしい押し寿司と縁起いいものをありがとう!また来てねと言われたので遠慮なくお邪魔します!
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