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くずきりを1本1本噛みしめて食べる値段になった

仕事で京都に行った。

7月の京都は祇園祭で大混雑なのと、体にまとわりつく湿気を含んだ熱波がこたえるのでできれば行きたくない。

それでも仕事を受けてしまったのだからと、渋々電車にのり、地上に出ると案の定、ぶわ~っと熱波が体を包み込む。この時点で足が電車のホームに戻りそうになる。暑い暑いとフーフー鼻息荒く歩いていると、右も左も前も後ろも外国人だらけだということに気づく。日本人はいずこに?

抹茶ソフトクリームやパフェが食べられるちょっとしたカフェをのぞくと、行列の外国人相手にせっせと笑顔を振りまいている日本人スタッフ。
ああ、日本に来ている外国人にせっせと奉仕して、忙しいのか、日本人。これが日本人の現状かと寂しさがつのる。

いや、きっと日本人が集うところがある。自分自身が夏の京都で食べたいものといったらと考えてみると思い浮かんだのは、鱧とくずきり。

灼熱地獄の京都の暑さを和らげてくれる食べ物といえば、くずきり。
くずきりといえば鍵善。
食べたいと思うと、猛烈にたべたくなるくずきりを食べるために鍵善ののれんをくぐる。

コロナ前もなかなか来る機会がなく、実に5年ぶりだろうか。
干菓子や生菓子が並ぶショーケースをチラ見しつつ、奥に入ると変わらないたたずまいのカフェスペース。
明るすぎず暗すぎず、店の奥の坪庭の緑が美しい落ち着いた店内。

華美すぎず、大人の甘味処といった雰囲気が落ち着く。外国人よりも日本人観光客が多いし、地元の人と思われるおばさんも一人で食べている。食べるものは決まっているくせにメニューをちらりと見て、変わったものがあることに気づく。

くずきり(黒蜜・白蜜) 1400円

え?!1400円??
確か1000円だったような気がするのは気のせいか。

初めてきたときは900円くらいだったような記憶だが、当時でも器が大きいのに、くずきり自体は2,3口で食べられそうな量で、高っ!と思いながらも、黒蜜の上品な甘さとくずのつるりとしたのど越し、なにより氷でキンキンに冷えたくずがのどを通るときの清涼感。一度食べたら忘れられない夏の京都の味になり、一人でも食べに行くようになった。

食いしん坊のわたしは腹持ち第一で食べるものを決めていたのに、鍵善だけは完全に別。
涼を楽しむ、京都の風情を体感するために食べる。

とはいえ、1400円は驚いた。
最後の記憶は1000円だった気がするからコロナ禍をへて、400円もアップしたということになる。

氷の間に身をくねらせて泳いでいるくずきりたちは相変わらず、透き通るような白さで見ているだけで涼しさが伝わる。
久しぶりのせいか、心なしか量も少なくなった気もしないでもない。

のどをつるりととおる、あの冷たさを体感するためには2,3本一気につるんといくのがベストなのだが、ケチなわたしは1400円分を存分に堪能するために1本1本丁寧に黒蜜にくぐらせて食べた。

蜜の甘さが胃に染み込む。変わらぬ甘さがうれしい。けれど、やはりけちって1本ずつたべたくずきりの清涼感はいつもより半減。

こういうところでは貧乏性を出してはいけないのだ。つるんつるんといくべきだった。次は2,3本豪快にいこう!と決意するも、さらに値段があがって2000円とかになったら、今度は半分にカットして食べてしまうかもと思ってしまった。

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